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66話 王位選定武闘会-決勝1


《いよいよ!! いよいよやってまいりました!! 王位選定武闘会、決勝です!!! 両選手、ご入場くださぁぁぁい!!!》


 決勝らしくテンションMAX状態の実況の言葉に従い、入場する。

 観客たちも凄まじい盛り上がりだ。まだ戦いが始まってすらいないというのに。

 

《東方!! 魔王仮面選手~~! っん? おや? 今回は素顔を晒しての入場のようです! 変装はもうやめたのですか?》

「あぁ、ちょっと理由があってな。もうサタンで良いぞ」

《ふむ……何の目的があってかは知りませんが、そうですか。承知しました。では改めてご紹介させていただきます!!! 魔王仮面選手の正体、当代憤怒の魔王(サタン)ことカンズェアキソーヤ選手で~す!! その実力は皆さんご存知の通り!! 今回の戦いでは一体どんな動きを見せてくれるのか~~!? また、飛び入り参加の来客の身分で、いきなり優勝してしまうのか!? しかし!! それもまた実力主義であるこの国らしい王位継承! 私は大歓迎です!!》


 なんか王位継承を期待してくれてるっぽいけど、ごめんな。興味ないわ。


《続いて西方!! セセリー選手!! ガルーダ警備隊が誇るエースが、ついに優勝をかっさらい王位につくのか~~!? ガルーダ警備隊の他の皆さんはその名の通り警備をしていて見に来れていませんが、是非とも頑張って欲しい所です!!》


 飄々とした顔でスタスタと入場してきたセセリー。


「やっと、戦えるな」

「体調不良で休んでくれと言った筈だけどねぇ」

「そういう訳にもいかない、っつったろ?」

「ふん……」


 表情は飄々としたままだが、やはり決勝。気負い方が違うな。昨日見たこいつとは格段に放っている闘気のレベルが違う。

 まるで、静かに鋭く燃え上がる青い炎のようだ。


 すかし野郎なんて言ってきたが、それは表面だけ。心の内側では誰よりも燃えているのが、こいつなのだろう。熱量が違う。


《さて!! それでは決勝ですが、事前に各者へお配りしたルール用紙にも書いてあった通りこれより先の戦いに特殊ルールはなしです!! 何でもありの真剣勝負!! 降参宣言をするか、10カウントまで立ち上がることが出来なければ試合終了となります! それぞれ磨いた力と技を、存分にぶつけあってください!! それでは……始めええぇぇ!!!!》


カン!!


 ゴングが鳴る。


「……どうした? 来ないのか」

「……全力で戦え。体調不良で休んで欲しいとは言ったが、どうせ戦うなら全力のあんたを倒したい。そうでなきゃ、僕は勝った気になれない」

「くく、そうかい。ならちょっと待っててくれ。文字通り、全力(・・)で戦ってやるからよ。お前も何か準備があるならしてていいぞ」

「ふん。僕はもう、全部整えてから来ている」


 セセリーの言葉にそうかと返して、俺は観客席の一角……奏たちの方へ視線を向ける。


「ちびっこ共~~~!!! 見てるか~~~!!?」


――おお~~!!!

――かってええ~~!! さたんのにいちゃあああん!!

――頑張るのよ~~!!

――応援してますよ~~!!


 俺の呼びかけに応えて、孤児院『ワンダフル』の連中が、子供たちだけでなく院長やシスターさん達も含めて声援をくれる。


「お~~~しっ!!! 見てろよちびっこ共~~!! これから俺の、さいっこーにかっけえ所を見せてやるからよ~!!」


《サタン選手! 観客の子供たちに堂々宣言!! さいっこーにかっけえ所を無事に見せられるのか~~!?》


 実況が何やら言っているが無視して、す……と鋭く息を吸う。

 右手に持った剣を覆うように左手を右腰の横で溜めた後、顔の前で水平になるように勢いよく突き出す。左手は刀身を覆うように添える。

 そして鞘から引き抜くように勢いよく両手を広げ、角度を計算しつつ右手で剣を上空に投げそれを顔の前で切っ先を天に向けるようにしてキャッチ。


「変 身 ッ ! ! !」 


 瞬時に剣が流動し、鎧が展開する。

 

「さぁ、ショータイムだッ!!!」


 ぶん! と右手を払うように右に伸ばす。

 すると、シャキン!! という音と共に鎧の籠手部分から剣が飛び出す。


――わあああ!! さたんのにいちゃんかっけええ!!!

――すっごおおおい!!!


《武舞台に、子供たちの声援が響いております!! しかし、それも納得だあああ!! サタン選手、ド派手な変身を見せつけてくれました!! しかし、この行いに一体何の意味があったのでしょうか? 私にはいまいち分かりませんが、サタン選手が何の意味もなく行動をするとは思えない!! 我々はただ、期待しましょう!!》


 武舞台にひと際大きく響く、ちびっこ共の声援。

 その瞬間!!!


――個体名『神崎創哉』に向けられる子供からの憧れが一定量を大幅に超過したことを確認しました

――称号スキル『子供の憧れ(ヒーロー)』を獲得しました

――条件を達成。複数のスキルを統合し、オーバーリミットスキル『愛に生きる英雄』を獲得しました


 天啓が響く。


「来た……!」


 これを見せれば多分『王の器』の時と同じように、何かしらのスキルを手に入れられるだろうと考えてはいたが、なんか想定以上に凄そうなのを手に入れてしまったな。けど、ありがたい。何でもあり(・・・・・)だからな。戦闘中に成長しても良いのだ。まぁそれは向こうにも言えることで、俺と戦っている内にあいつも何か獲得する可能性もなくはないんだが。


 にしても…… はぁ~~~~、良かった~~~。

 練習通り出来た……。ギムリ達から鎧を貰った時からずっっっと考えてた変身ポーズと口上。ド深夜に皆が寝静まったことを確認してから宿を抜け出し、騒音やら何やらで迷惑がかからないよう海を越えて一番近くの無人島まで移動してから、毎晩毎晩練習していたのだ。

 それもこれもイメージアップ作戦ともう一つの狙いのため。そして何より、ちびっこ共にかっけぇって思われるため!! 紗耶香や親戚のちび共が好きだったから多分ウケんだろと思ってやってきたが、やはりウケたな。ふふふ……。

 これでもしドスベりしてたらどうしてたんだ? それはな、考えてはイケないのだ。精神衛生的に。ま、その時はその時だな。普通に戦っていただけのことよ。


 何事も、結 果 オ ー ラ イ ! ! なのだ。


「これで、俺の準備は完了だ。待たせたな」

「……随分と、派手な振る舞いが好みのようだ。ヒーローが僕に呆気なく負けてしまう格好の悪いショーにならなければいいな?」

「へっ、家族とちびっこ共が見てんだ。親父でありヒーローである俺が、負ける訳ねぇだろ?」

「守る者のため、か。それなら僕は、この国の威信とガルーダの誇りを守るために、あんたを倒す!!!」

「やってみやがれええ!!! セセリー!!」


 早速飛んできた不可視の矢を剣で斬り裂く。

 こうして、決勝の幕は切って落とされるのだった。


解説

オーバーリミットスキル『愛に生きる英雄』


ユニークスキル『武芸者』と称号スキル『超シスコン』、そして今話で獲得した『子供の憧れ(ヒーロー)』が融合した新スキルです。

能力はまぁ、なんとなく察しはつくと思います。詳しくは続きをお楽しみに!!


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