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64話 王位選定武闘会-本選4


《さて!! 気を取り直していよいよ始まります!! 王位選定武闘会本選、第4試合!! 両選手、ご入場くださぁぁぁい!!!》


 結局最後までクロとスパイさんの戦いを見ちゃったせいで慌てる羽目になったが、なんとかギリギリ間に合って良かった。

 相手選手の狼獣人、結構イケメンだったよなぁ。雄だから獣成分多めなんだけど、それでも分かるカッコよさ。

 というかむしろ、獣成分多めだからこそカッコいいとすら言えるかもしれない。それにすっげーモフモフだったから、また奏がお持ち帰りしたい!! とか言い出すかもなぁ……。なんて。


 そんなことを考えながらも、カチャカチャ音を鳴らしながら入場する。


 う~む、やっぱカッケェな……。俺、狼好きなんだよなぁ。奏に言われるまでもなく俺自身がお持ち帰りしたいかもしれない。

 なんか、上手いことお近づき出来ねぇかな。雄だから既婚者云々を気にしなくていいのも高評価である。存分にモフりたい。  

 

《東方、魔王仮面選手! 鎧に身を包んだ謎の戦士!! ぶっちゃけ正体は知ってますが、あえて言いません!! 予選では七色スライム軍団を相手にかなり苦戦しながらも、無事勝利を収めました!! スライム単体でも厄介なのに、ジャイアント・マーブルスライムにまでなられてしまった上で勝利した超実力者!! 再び謎の魔法らしき力が炸裂するのかぁ!? 期待が高まります!!!》


 正体知ってたんかい。いやまぁ、全く隠す気がない名前で登録してるんだからバレても何ら不思議はないんだけども。


《続いて西方!! ヘルハウンド選手! 変化の力で人の姿になっていますが、亜人ではなく魔物のため名前はないようです!! こちらも来客だ~! 是非頑張って欲しいですね!!》


 ヘルハウンド? え、名前的に黒いイメージがあるんだけど。そうなんだ。亜人じゃなくて魔物か……なるほど。それじゃあ、獣形態がむしろ本来の姿か。

 これは……来たか? もはや連れ帰るしかなくね? これは勝ちたいぞ。そして是非とも仲良くなりたい。


「宜しくな」

「……あぁ」


 うわ、ギザギザ歯だ!! それに口を開いた瞬間火の粉が散ってた!! かっけええええ!! めっちゃ好き!! ヘルハウンドさん、めっちゃ好き!!

 俺の少年心と中二心が、同時にめちゃめちゃ刺激されているっっっ!!!


 やばいやばいやばい!! ……顔が、顔がッ! フルフェイスで良かった~~!! ヘルハウンドさんにヤベー奴だと思われたら一巻のおしまいだからな。餌付けするなり名付けするなりして、逃げられない状態になるまではモフモフは我慢だ。我慢ッ!! 気合で漏れそうになる心の声を抑えながら、試合開始の合図を待つ。


《さて! それでは特殊ルールのくじを引かせていただきます。……出ました!! 第4試合の特殊ルールは~? 『発動系のあらゆるスキル魔法全部禁止!! 殴る蹴るのみ』です!! あ、ヘルハウンド選手が本来の姿に戻るのはアリです。既に発動してる魔法を解除するって形なので。んんっ!! えー、それ以外は何でもあり! 時間制限もなし! 降参宣言をするか、10カウントまで立ち上がることが出来なければ試合終了となります! それぞれ磨いた力と技を、存分にぶつけあってください!! それでは……始め!!》


カン!!


 ゴングが鳴る。

 

 なんか……俺が戦う時、キツ過ぎない? いや良いけどさ。要は必殺技的なスキルとか魔法を使わなければ良いだけで、別に鎧は脱がなくて良いから。この大会を通して成し遂げたい目的の一つのために絶対鎧姿での戦闘は必要だからなぁ……。

 ホント、装備品の使用禁止とかのルールが来なくて良かった。


「……どうした。来ないのか? なら、俺から行くぞ」


ズドンッ!! 


 地響き。腹に響く衝撃音。

 

「ってぇ~! やるなお前。ヘルハウンドの名は伊達じゃないってか」


 腹に飛んできた蹴りを受け止め、その衝撃に手を痺れさせながらも、話しかける。この鎧……『上位物理耐性』と『上位衝撃緩和』が付与されてるから相当頑丈なんだが、それでもこの痺れ。……強いな。

 

「お喋りな奴だ」


 言葉少なく続けざまに攻撃を仕掛けてくるヘルハウンド。

 右ハイキック、くるっと回って左バックハイキック、そして最後に540℃キック。俺の顔面を狙う、勝ちに来る攻撃だ。でもだからこそ分かりやすく、受け止めやすい。にしても、やはり本来の姿が狼だからなのか、蹴り技がメインで手はあまり使おうとしないな。


《ヘルハウンド選手、怒涛の連撃だああああ!! 速い、速い、はやああい!! そして力強い!! しかし! 魔王仮面選手、それを受け止めるッ!! 互いのぶつかり合いによる衝撃が、まるで我々の所まで飛んでくるようです!! いや、実際に飛んできています!!! 今風が、鋭い風が私の頬を撫でましたああ! ぶっちゃけちょっと恐いです!! もう少し離れさせていただくことにします!》


「……全部受け止めるか」

「ま、俺は魔王仮面だからな。それより、実況さんもあぁ言ってたことだし慣れない姿で戦う必要はないぞ。大分自然に出来てるが、ちっとばかしぎこちなさがある。ほら、まだまだこんなもんじゃないだろ? 見せてくれよ。お前の本気を。すげー厳しい縛り食らっちまったから単純格闘しか出来ねぇけどな」

「……良いだろう。後悔するなよッッ!!」


 俺が受け止めた足を放してやると、ヘルハウンドはすぐさま距離をとった。

 そしてギリッと歯を食いしばり、わなわなと震えると、やがて二足歩行の白銀の狼は、二つの頭を持つ赤い瞳の巨大な狼に変貌した。


「グルル……!」


《ヘルハウンド選手!! 本来の姿に戻りました~~! でかああい!! 巨牙毛獣(ジャイアントファング)と同じくらいの、凄まじい体躯だあああ!!》


 口元で火の粉がチリチリと舞い散る。

 

「かっけぇ~……」


 やっべ! 小声だけど本音が漏れちった! 


「……変わっているな。俺のこの姿を見て、恐れないとは。いや、だからこそ魔王を名乗るのか。……行くぞ」


 あら、意外に高評価? なんて思いながらも、とんでもない速度で突っ込んできたのをギリッギリで躱す。


「っぶね~~」


 セーラと同等くらいの敏捷値はありそうだな……。


「そらそらどうした!? こんなもんか~? 俺はまだ一度も攻撃をまともに食らってないぜ~?」

「抜かせ……!」


ブォン!!


 姿がブレる。

 気が付くと、ヘルハウンドは俺の目と鼻の先に居た。


《お~っとぉ!! 魔王仮面選手、本来の姿に戻ったヘルハウンド選手の超スピード突進をまともに食らってしまった~!! そのまま壁に激突!! これは痛い!! 勝負あったか~~!?》


「ぐぅ!? いってて、分かってたけどいってぇ~」


 実況が何やら言ってるが、まぁ全然耐えられないレベルではない。しかし、ここらで一応CBPを確認しておく。俺の肉体は無事でも、それはダメージを全部相棒が肩代わりしてくれてるからだからな。

 相棒が砕けたら即死の俺は、CBPの確認だけはちょくちょくやっておかないといけないのである。表示されていたCBPは、


1328/3000  

 

 このようになっていた。

 七色スライム軍団との戦いでも、ほとんど覚えてないけどダメージは相当食らったみたいだし……やっぱ、減るよな。


「こりゃ、もうダメージは食らってやれないな。っよし、やるか」


 正直俺は、負ける気がしていなかった。全力でやれば必ず勝てる! それが不思議と戦う前から分かっていた。

 何故なのかは分からない。実際に攻撃を食らうまでは、また油断と慢心が生まれちゃってるかな? とか思ってたんだけど、今確信に変わった。

 俺は、こいつに勝てる。


「よっ! と。んじゃ、次は俺の番だな。わりぃけど、勝たせてもらうぜ」

「ふん。俺の攻撃をまともに視認すら出来ないくせに」


 前足で俺の居る場所を払ってくる。

 しかし、


「なにっ!?」


 俺はその払った前足に乗った。


「残念。俺はこっちだぜ」

「舐めやがってっ……!!」


 ぶんぶんと前足で払い尻尾で払い、そして牙で噛みつき体当たりし、アレコレとヘルハウンドは攻撃を繰り返した。

 しかし、その全てを俺は余裕をもって躱すことが出来た。


 何故か? 全ては『直感』のおかげである。

 スライム戦を終えてからというもの、今までより『直感』の力が増していたのだ。故に俺は、ヘルハウンドの攻撃を視認は出来ても追いつけない敏捷値のままなのに、どこを攻撃されるか? 何を使って攻撃されるか? そう言ったものが全て手に取るように分かるから余裕で躱せてしまうのだ。


《魔王仮面選手!! ヘルハウンド選手の怒涛の猛攻を、まるで最初から分かっているかのようにすいすいと躱していく~~!!! 一体何がどうなっているんだ~!?》


「ぐっ、はぁ……! はぁ……!! な、何なんだお前は!!」

「言ったろ? 魔王仮面さんだ。んじゃ、ちょっと歯ァ食いしばれよ!!」

 

 へばってきたヘルハウンドの顔面に思いっきり拳骨を振り下ろす。

 するとヘルハウンドは目を回してダウン。10カウントを超えても意識を取り戻すことはなく、試合は俺の勝利で幕を閉じた。


 次は普通なら準決勝だが、俺の対戦相手はクロだ。そして眷属であるクロは我が家(ダンジョン)にあるコロシアムの中でしか俺と戦えない。

 だから、あいつは棄権することになる。よって次はいきなり決勝戦だ。セセリ―がナディに勝てば俺はセセリ―と戦うことになるが、ナディが勝てば俺の優勝で終わる。ナディも俺と戦うことは出来ないからだ。

 よって、そうなった場合全てをすっ飛ばして俺とグラン王での戦いになる訳だが、一体どうなることやら。俺としては、ナディが勝ってくれた方が楽は楽なんだが……。でも、セーラの仇もとってやりたいしなぁ。

 なんてうんうんと悩みながら、俺は武舞台を去るのだった。



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