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63話 王位選定武闘会-本選3


 武舞台にクレーターが出来てしまったことで暫く待機時間が出来た訳だが、特別何か起こったりはせずあっという間に時は過ぎた。

 未だ野次馬シンシアは戻らない。というかあいつ、なんかクロと合流してるな。最初ナディの方行ってたのに、何があったんだ? ……まぁいいか。


「こうして2人っきりで過ごすのは、なんだか久々だな」

「えっ!? あ、う、うん。そ、そうだね。へへ」


 なんじゃ? 何気ない雑談のつもりだったんだが、やたら動揺している。あはははは~と笑って赤くなった顔を手で仰ぐ姿は可愛いの一言に尽きるが、そこまで照れることか? 


「どしたん? やたら照れるじゃん。可愛いけど」

「えっ!? い、いや別に何でもないよ? そういえばそうかもなぁ~、なんて意識したら、ちょっと思う所があったってだけで……別にそんな特別なにかアレな訳じゃ……」


 捲し立てるように、目を泳がせながら言う奏。


《さぁ武舞台も直りやって参りました王位選定武闘会本選、第3試合!! 両選手、ご入場くださぁぁぁい!!!》


「ん? 始まるか。ま、ともかく久しぶりの2人だ。すぐあいつらも帰ってくるだろうし、俺もそろそろ行かなくちゃだけど、もうちょっと時間あるからさ。2人でクロ応援しようぜ」

「う、うんっ! ……へへ」


 ……可愛いかよ。

 やっぱこういうとこ、紗耶香に似てるなぁ。会いてぇなぁ、紗耶香……っと! いかんいかん。今は久しぶりに奏と2人きりなんだ。例え嫁が出来ても変わらぬ愛を捧げ続ける我が癒しの大天使だとしても、今は、今だけは良くない。

 後でにしよう。うん。


《東方、クロ選手! 第1試合のナディ選手と同じく、サタン一派の鬼人です!! 予選では素晴らしい剣術を披露してくれました! また、何かしらの炎を操る能力も持っているようです!! 間違いなく、実力者!! 今回もクロ選手の剣技と炎が火を噴くのでしょうか~!?》


 ふむ、実況はアレが妖術の炎とは気付いていないみたいだな。

 まぁ見た目じゃ魔法と変わんねぇからな。


《続いて西方!! ブーゴ選手! サタン一派同様、珍しい来客であります。その実力はほとんど未知数ですが、普通のゴブリンとは明らかに違う威圧感と知性を感じさせられます!! 特に目立った印象はなかったのですが、一体どんな活躍を見せてくれるのかああ~!?》


 実況の説明に、少し驚く。


「へぇ、あのマッチョゴブリン外部からなんだ」


 え? ってことは、野良であんなのがそこら辺に居たってこと? やば。

 だってあいつ、明らかにゴブリンじゃないもんね。全身縁肌だから皆ゴブリンって仮に呼んでるけど、確実に上位種だろうな。

 セーラがセイレーンって呼ばれても面倒だから訂正しないのと同様に、いちいち説明するのが面倒だから言っていないのだろう。


《さて! それでは特殊ルールのくじを引かせていただきます。……出ました!! 第3試合の特殊ルールは~? 『殴る蹴るなど、直接攻撃の禁止』です!! ……は? ちょっ、誰だこんなの入れたの。炎が使えるクロ選手はともかく、多分ゴブリンのブーゴ選手が何も……。これ試合になんないぞ……》


 宣言した後、凄い小声で呟いているが、俺は『地獄耳』なので聞こえている。どうやらくじ引きスタイルの欠点が出たようだ。

 ってか、なに? 都合悪いくじは予め弾いておくとかしてない訳? 


「問題ない!!! 殴る蹴るばかりが脳と、見くびらないでもらいたいものだな。それと……俺はゴブリン種ではあるが、ただのゴブリンではない!! 俺はゴブリンジェネラル!! ゴブリン族の王、キングの側近だ。覚えておけ! キングは御誕生なされた。近々この国にも攻め入るつもりだ。しかし、俺がこのままグラン王とやらに勝てば、それで済む話。おぉっと、俺は選手だ。ルールを破った訳じゃないんだから、強制排除しようとするなよ?」


 お、おぉ……なんか予想以上の展開だなコレ。

 ゴブリンジェネラル、ねぇ。キングの側近か。


「ほ~ん……。随分と口が軽いこって」


 あいつ、自分が負けた後のこと考えてモノ言ってんのかな。勝ち続けてるうちは良いけど……負けた瞬間選手じゃなくなるから、ただの敵対勢力からのスパイになるんだよな。即殺されたって文句は言えない。

 それにあの感じ、あいつの独断っぽい気がするんだよなァ……。大方キングとやらからは、威力偵察してこいって言われたんだろう。それを血気盛んで野心家なジェネラルさんは拡大解釈して……って、感じな気がする。なんとなくだけど。

 もしかしたら違うかもしれないけど、立場のクセにこんな所にノコノコ出てきて、しかもそれを言いふらしてしまう神経から、な~んかノータリンな風味を感じてしまう。まぁ、相当な自信があるみたいだし……どうなるか見守るか。

 別に俺としては、あいつが死のうが生きようが関係ないしな。もし、あいつがクロに勝ったら俺が代わりにぶちのめす。それだけだ。まぁ俺も、狼獣人との対戦が控えている身だから、絶対そう出来るとは言わないけど……。

 少なくとも、そのつもりで行く。

 

《え~、何やら不穏な宣言がされましたが、確かに選手である内は排除できません。よって試合続行です。本人が問題ないって言ってるので特殊ルールはこのまま採用。相手を殴ったり蹴ったり、そういうこと以外は何でもありで時間制限もなしです。降参宣言をするか、10カウントまで立ち上がることが出来なければ試合終了となります。それでは始め》


 テンション激低な実況の合図と共に、ゴング係がカン!! と大きく一度ゴングを鳴らす。ゴング係はいつも通りのテンションなんだな。


 観客の皆も、凄いボルテージ低めだ。

 全然盛り上がってない。まぁそりゃ出場選手が、俺スパイですよ! なんて言えば普通にワイワイなんてしてらんないか。


「ん~、身内びいき抜きで応援してやる気にはならんな」

  



◇◇◇




「あんた、えらい立場やったんやなぁ。ゴブリンキングちゅうたら、1000年に一度生まれるかどうかちゅう突然変異種や。ジェネラルのあんたも、キングが誕生したからこそ生まれた訳やろ?」

「ふっ、流石は同じ鬼。我らゴブリン種の事情も知っているか。あぁ、その通りだ。なかなか良い女だな。俺の嫁にどうだ? クク」

「……」


(ガッカリや。強い奴と本気で戦えると思うて出場したんに、こんな阿呆と当たってしまうとはのぅ。例え条件があろうと、強い奴と思いっきり()れるなら、それで満足やった。それだけやったのにのぅ)


 内心で、クロは強い落胆を感じていた。

 この対戦相手のブーゴが如何なる立場であろうと、関係はなかった。けれど、こいつと戦っても何も面白くないと分かってしまった為に、クロは完全に萎えていた。

 

「はぁ~~、アホくさ。怒る気にもならんわ。あんた如きが創哉はんに敵う訳ないやろが。言っとくで? うちは人妻や」

「ほぅ、そうなのか。ククク……だとしたら余計に興奮するっ……!! 俺の女になれクロとやら!! 嫌だと言っても、無理矢理奪うがな……クックック」

「……面倒なやっちゃのぅ。はぁ。なら、ごたごた言うとらんと、さっさとかかってきぃや。うちは逃げも隠れもせぇへんで。ま、もしあんたがうちに勝てたら考えたるわ。うちは強い男が大好きやからのぅ」

「なら……もう俺に惚れたも同然だなッ!!!」


 クロに迫る魔力の球体。

 紫色のソレを、クロは冷めた目で見つめた。

 そして、その魔力球がクロに着弾する寸前。顔色一つ変えることなく、クロはそれを蹴り上げた(・・・・・)


「はっ、しょーもな。くだらん技やのぅ……」

「な、なにぃっ!? お、俺の魔丸(まがん)を、蹴り上げやがったっ!?」

「そんなんじゃうちには勝てへんで。生まれ変わってから出直してきぃや。人妻趣味のアホンダラ」


 そして実につまらなそうにそう言い捨てると、徐に人差し指を立てた状態で手を天に掲げる。そして、ゆったりと振り下ろす。

 その瞬間!!!


ピシャアアアン!!!

 

 裁きの雷がブーゴに落ちる。

 それをまともに食らったブーゴは、黒焦げになって倒れ伏していた。

 

――うぉおおおおお!! 

――いいぞ~!!

――いい気味だ!! ざまぁみろ!!


《クロ選手、やってくれました!!! それではカウントをいたします!! 1!!! 2!!!》


 そして、10カウントを超えてもブーゴはピクリとも動かなかった。

 こうして第3試合は、クロの勝利で幕を閉じたのであった。




◇◇◇




「シェパード」

「はっ!!」

「ブーゴとやらの首を落とし、生首にした状態で包装した箱に入れてゴブリンキングに返してこい。プレゼントとしてな。それから、『部下の教育はしっかりやっておくことだ。今回は見逃してやるが、我が国と本気で潰し合うつもりなら、受けて立ってやる』という手紙を添えておけ。我が国の一大興行につまらん茶々を入れてくれた礼も忘れるなよ」

「ふふ、王のお怒りを買ったようですね。承知しました。ただちに」

「うむ」


 シェパードが立ち去るのを、グラン王は頷きながら見送った。


「……ゴブリンキングの再誕か。異常な迷宮主(ダンジョンマスター)の誕生に、勇者の召喚。何か世界に大きな変革が起きようとしているのかもしれんな……」


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