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番外 SIDE???


「あらあら〜、壊れちゃったみたいね~。すっごい強引なやり方。どっちかしら」


 豊満な胸を持つ妙齢の女性は、たおやかに笑う。

 

「ねぇ、貴方は何か知ってるかしら? 2ヶ月くらい前と、わりと最近に起きた魔力反応のこと。貴方も向こうから来たのでしょう?」


 そう言って、妙齢の女性はにこやかに笑いながら、その手に持つ黄金の剣を眼前に倒れ伏す異形の首元に突きつける。


「か、片方は知ってるが関係ない……! 俺は関係ない!! そ、それから2ヶ月くらい前の方は、知らない! ほ、本当だ! お前の方こそ、本当は気付いてるんじゃないのか!? こっちでそんな剣を持ってるなんて……そうとしか考えられん!!」


 剣を突きつけられた異形は、冷や汗をかき顔色を悪くしながらも懸命に言葉を紡いだ。


「あら〜、分かっちゃった? えぇ、ご察しの通り私は元――よ。でも、そっか。もう次の世代が生まれちゃったのね。だから召喚されたって訳か。……本当に2ヶ月くらい前の魔力反応は知らないのね?」

「あぁ本当だっ! だ、だから……良いだろ!? もう話すことは話した!!」

「えぇ、協力ありがとう。お望み通り開放してあげるわ」


 そう言うと妙齢の女性は異形に突きつけていた黄金の剣を下ろし、背を向けて歩き出した。その瞬間!!


「ケケケッ!!! ヴアァーカ!! 命乞いに素直に応える奴が居るかよ〜!! 死ねクソアマ!!」


 異形は妙齢の女性をケタケタと嘲笑い、その背に自身の鋭い爪を突き刺そうと肉薄する。

 しかし。


「あ……れ……?」


 異形の身体はズズズ……とズレていき別々の方向へ倒れると、やがて爪の先から塵となって消滅し始める。


「馬鹿は貴方よ。こっちに異形なんて存在してはいけないの。精々、こっちに迷い込んでしまった自分の運命を恨みなさい」


 にこやかな笑みを崩し、閉じられていた目をわずかに開けた妙齢の女性は、真剣な声色で消滅していく異形にそう告げると、手に持っていた黄金の剣を切っ先を天に向けて胸の前に掲げる。

 すると黄金の剣は淡く光る無数の球となり、妙齢の女性の胸に吸い込まれた。


「おーい、こっちは終わったぞ〜! そっちはどうだ〜?」


 路地裏の更に奥からやってきて、妙齢の女性に声をかけたのは、1人の男。

 体格は良いが、女性よりもかなり老けている。40歳手前といった所か。


「あらあら〜、終わったの? えぇ。こっちも今終わった所よ。それよりあなた、やっぱり間違いなさそうだわ」

「む……そうか。どうするんだ?」

「可愛い子には旅をさせろって言うし、ホントは帰ってくるまで待っててあげるつもりだったんだけど……どっちかの封印が壊されちゃったみたいなのよねぇ〜。しかも内側から強引に」

 

 ふぅ、と悩ましげに胸の前で腕を組んで右頬に手を当てる妙齢の女性。


「そんなことが可能なのか? 相当な力を籠めた封印だったんだろう?」

「まぁねぇ〜。でも、あの子達が本気で追い詰められてどうしても力が必要になったなら、自動的に封印は解けるようにしてたのよ? でも、そうじゃない。やっぱり、あなたの子ね〜。早漏さんだわ〜」

「はっ? お、おいおい! それは今関係ないだろう!!」

「あらあら、うふふ! 図星つかれて慌てちゃう所、昔から変わってないわねぇ。可愛くて好きよ」

「……お、おぉ」

「あらあら照れちゃって。年甲斐もない」


 ふふっ、と楽しげに笑いながら妙齢の女性はそう言った。

 そう。かなり年が離れているように見える2人だが、実は夫婦だったのだ。

 しかもどうやら子供がいるらしい。


「そんなことより、さっきの早漏云々は言い方こそふざけたけど、関係あるのよ?」

「む、そうなのか?」

「ええ。だってそうでしょ? 強引に封印を壊しちゃうんだもの。どうせ、怒りのあまり我を忘れて、痛みも何もかも無視して……って光景が目に見えるようだわ。そのせいで封印が中途半端に残っちゃってるし。もしかしたら何か副作用も出てるかもしれないわねぇ〜。ホント、困ったちゃんだわ」

「そうか……。待ってるつもりだったってことは、行くんだな?」

「ええ。次世代が生まれたせいであの子達が召喚されたのなら、放ってはおけないわ。途中で仕事を放棄して帰っちゃった私にも責任の一端はある訳だし。でも……どうしてかしら。女の子しか呼ばれないハズなんだけど……」

「何かよっぽどの事が起きてるのかもしれんな。……俺は部下にこの事を伝えてくる。俺達があっちに行っても、迷い子の処理は変わらず必要だからな」

「えぇ、そうね。お願い」


 妙齢の女性がそう言うと、男は足早に再び路地裏の奥の方へと消えていった。


「……。――と――は、どれくらい強くなったかしら。ふふっ、年甲斐もないのは私も一緒みたいね……」


 そう言って妙齢の女性は楽しげに笑いながら、遠くを見据えるように空を見上げるのだった。




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