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58話 王位選定武闘会-予選4


《さぁ、第10予選! 始めてくださぁぁぁぁい!!!》 


 クロが出場する第10予選が始まった。

 あいつは肩に刀を担ぐようにしてニヤリと笑っている。

 これはクロの速攻で片が付きそうだ、なんて思っていると――。


――やらせぬ!

――今回こそは我らで仕留めてみせる!

――行くッス!!

――うぉぉぉぉおお!


《お~っとぉ!? サタン一派の選手の先制攻撃より先に仕掛けたぞ~~!!》


 実況の言う通り、予想に反して他の選手たちが速攻を仕掛けた。

 俺ら一行はチームでの協力プレイをするつもりが欠片もないってことに気付いたのだろう。クロに獲物を狩られる前に、自分たちの魅せ場を作るつもりなのだ。

 それにクロも気付いたようで、肩をわずかに竦めさせるとふっと鼻で笑って後方に一人下がった。様子見をするつもりらしい。


 何気に今回の相手の3種族、こいつらが出てくるの初めてだな。対戦相手の魔物は巨牙毛獣(ジャイアントファング)のセット、コッカトリスのセット、しましま馬のセットの3セットからくじ引きによる完全ランダムで選ばれた訳だが、これまでの9戦ではまだ一度も出番がなかったのである。

 どういう戦い方をするのか……この際だから見させてもらうか。


《ハイエナたちが駆け回る! 凄まじいスピードと統率力! 狙われたのは~!? モウ選手!! これは痛いかっ、っとぉ~!? モウ選手これを止めた~~!! 凄まじい筋力だ!!!!》


 飛び出した他の選手4人にまず襲いかかってきたのは、速度にもっとも優れているらしいハイエナだった。ハイエナはその四つ足で武舞台を駆けると、5体揃って一人の選手に襲いかかった。 

 それはオスの牛人(ミノタウロス)。二足歩行の牛である。茶色の単色種で目全体が赤い。


《そして~? 一気に絞め殺したぞ~~!! 流石はミノタウロス!! 力に優れているうう~~!!》


 そんな彼は飛びかかってきたハイエナたちを両手を広げて抱き留めると次の瞬間、グギギと歯を食いしばり力を入れて、そのまま一気に腕同士を近づけていきハイエナたちを絞め殺した。

 実況の言う通り、アレが出来るということは相当な筋力だろう。もしかしたらクロと同じくらいの筋力はあるかもな。

 実況の口ぶりからして、アレは種族柄そうであるらしい。大鬼(オーガ)時代のクロと同じように、怪力の種族スキルでも持っているのかもしれない。


《モウ選手に注目している間に他の選手たちも戦いを始めていた~! エッジホーンの刃になっている角! これは刺さるとまず命はない!! すぐさま治療室に送ります!! どうなるか~っとぉ!? デバン選手! エッジホーンの角を槌でへし折った~!!! おっとぉ!? これは気付いているのか~!?》


 二足歩行のサイがエッジホーンの角を槌でへし折る。しかし、その背後から別のエッジホーンたちが迫ってきていた。

 実況がそれを言わないのは、恐らく選手を助けることになるからだろう。それは実況として良くないという話だ。選手の実力を測れなくなってしまうからな。


《あ~っ。デバン選手、後ろから迫るエッジホーンの別個体に気付けずリタイアとなります。おっとぉ!? なんて話している内にしましま馬に襲われていたナイ選手とヨ選手が全身真っ白になって倒れている!! これは、しましま馬の白化攻撃だ~!! これを受けるとやる気が燃え尽きてしまい戦えませんっっ!!》


 残念ながら気付けずデバンと言う選手が背後から刺されてリタイアになったかと思うと、別の場所で他2人の選手も真っ白になって倒れていた。

 白化攻撃……ねぇ? 要はアレか。『燃え尽きたぜ、真っ白にな……』現象ってことか! 燃え尽き症候群を引き起こす攻撃って、それ結構強くないか? 見ればその名の通りしま模様だったしましま馬のうち2体が、今は黒単色になっている。

 白化攻撃とやらのために白を使った、ということなのかもしれない。となると黒はどういう効果を持ってるんだ? というか白と黒、どっちも使ったら何色になるんだあいつらは? なんて思っていると、クロがようやく動き出した。

 あいつ、ずっと魔物達に狙われてなかったけど……多分魔物の五感を弄って自分の存在に気付かないようにしてたんだろうな。でなきゃ、あんな堂々と棒立ちしてるのに襲いに来ない筈が無いからな。


――華ぁ持たせたるとおもとったんやけどなぁ、しゃーないのぅ。ひっひっひ


 若干落胆したように肩を落としつつも、クロはいつものようにひひひと笑うと刀を構えて武舞台を蹴った。

 ドンッ! という音と共にクロは瞬く間に魔物達に接近する。


――ひとおおおつ!!


 スパンッ! と首が落ちる。


――ふたああああつ!!


 次々と。


――みいいいっつ!!


 流れるように。


――しゃああああ!!


 回転斬りにて、周りに居る魔物達の首を落とす。そして――。


――これで、終いやっ!!


 ニヤリと笑うと指をパチンと鳴らす。

 その瞬間、未だ生き残っていた魔物達の足元から炎の柱が噴き出し、その身体を燃やし尽くした。


《しゅ、終了~~~!! クロ選手の怒涛の猛攻撃で! 瞬く間に蹴散らされてしまった~! 第10予選、終了です! 突破タイムは32秒!》


 俺ら一派の中では最も時間がかかっているが、それはひとえにあいつが戦っていなかったから。やはり、クロは強いな。

 逆にプライドキングダムの選手たち、思ったよりレベルが低いかもしれない。いや、むしろ俺達が強すぎるだけなのか? まぁなんだかんだ言って、魔王の一派だしな。幾らめちゃめちゃ鍛えてきた戦士と言っても、そう簡単に負けてちゃお話にならないか。とはいえ……それは魔物が強いというのもある。特に、しましま馬の能力が未知数で怖い。依然として油断しちゃならないことに変わりはないな。

 次は俺の番だが、なんかヤバそうだし。


「さてっと……行ってきますかねぇ」


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