49話 俺達の適性武器はなんだ!?-2
ギムリが言っていた、試し斬りが出来る場所。
そこは訓練場のようなものだった。床も壁も石タイルで出来ており、壁には弓の的があったり、木製の騎士人形が置いてあったりした。
「へぇ~、結構本格的なんだな」
「まぁな。オレら自身も使ったりするぜ。オレらの本職は鍛冶師だが、戦士でもあるからな。重装歩兵って奴だ。斧やら槌やら持って戦うのさ」
あ~、確かに似合いそう……。なんで身長小っちゃいのにデッケェ斧とか槌とか重量系の武器持ってる姿が鮮明に想像できるんだろうか。異様に似合う。
「んじゃ、俺らは持ち込んでくれた鉱石角獣を生体魔鋼に加工してくっからよ。旦那たちは自由にやっててくれ。決まったら、作り始めるからよ」
そう言うとギムリとレギンはここへ来る時に通った、俺たちの背後にある扉とはまた別の、左前方にある扉を通って奥へ引っ込んでいった。多分、あそこが鉄火場に直通する扉なのだろう。
「さて、んじゃあ始めるか。クロは待機になっちまうけど悪いな」
「気にせんでええよ。それに創哉はん、使う武器は決まっとっても、別に試し斬りしちゃアカン訳やないで」
「まぁ、それはそうだ」
なんて話しつつ幾つも並べられた大きな樽の、ごちゃごちゃに武器が詰められた中から人数分の剣を取り出す。
「とりあえず、王道の剣から試してみようか」
◇◇◇
「どうだ~? 使いたい武器の種類、決まったか?」
あれから3時間ほどが経過して、2人が様子を見に来た。
どうやら、あっちはひと段落ついたようだ。
「あぁ、全員決まったよ。けどちょっと特殊なのもあるんだが大丈夫そうか?」
「特殊? ここに置いてある失敗作にそんな変わった奴あったか?」
「いや、とりあえず一通り試してみたんだが、それでもしっくりこないって奴がいてな。じゃあ何が使いたい? って聞いてみたら」
「ハープを武器にしたいの。お願い出来ない?」
「私も、ハープじゃなくて良いけど何か楽器を武器にしたいかなって」
そう。セーラと奏の、音楽組だ。
この2人は通常武器のどれもが合わなかったらしい。ちなみに俺は剣系統ならなんでも大丈夫そうだった。次点で槍。シンシアは杖、ナディはレイピアが気に入ったようだ。
「ハープとなんかの楽器ねぇ。おう、イケるぜ。普通の金属じゃ難しかったが生体魔鋼ならそういう特殊武器もイケる。魔力親和率が高いからな。普通の金属で作るより、ずっと多くの魔法を刻み込めるんだ。生体魔鋼の普通の使い方がこっち。旦那たちには、それよりもっと良い加工をしてやる。なんたって手に入った生体魔鋼を全部加工して売ったら、100億ジェセルじゃ済まねぇくらいの利益が出るからな」
「ひゃっ! 100億ジェセル~!? お、おいおい!! 流石に冗談だろ。その辺うろついてる魔物を適当に仕留めてきただけだぞ」
「傷一つない状態で仕留めるなんざ、普通出来ねぇんだよ。あいつら結構高ランクの魔物だからな。大半の状態異常攻撃は効かねぇし、身体が金属だから物理攻撃にもつえぇ、更に魔法もほとんど効かねぇ。超高温の炎で燃やせば倒せっけど、そんなことしたら身体の鉱石も溶けちまうからな。奴らの身体についてる状態の鉱石を溶かしたんじゃ生体魔鋼にはならねぇ。普通、仕留めんのにかなり苦労する魔物なんだよ」
レギンの言葉に、俺は思わず己の耳を疑った。
あいつら、そんな強い魔物だったのか。確かに奏の『眠りへの誘い』は効かなかったけど、鈍かったから何の問題もなかった。いや、溺死っていう方法を選択できたのが大きかったのか。
多分、普通に戦ってたらヤバかったんだろう。
「あれ? でも、そんなんどうやって倒してきたんだ? 今まで」
「あぁ? そりゃあ、なぁ?」
「おう。鉄槌で頭をカチ割って倒す! それ以外方法なんてあんのかとすら思ってたぜ。まぁ10人がかりでチクチク攻撃して、どうにかこうにか倒したって話も聞くが……それじゃ身体がズタボロになっちまってまともな素材になんねぇからな」
「なるほど……そこまでか」
「おう、そこまでだ。んで、旦那と他の子たちは?」
「あぁ、俺は剣なら多分何でもイケる。シンシアは杖、ナディはレイピアが良いってよ」
「ん、了解。それじゃあ……また一週間後にでも来てくれ。それまでには全員分仕上げといてやるよ」
「分かった。それじゃあ、今日は一旦引き上げるよ。またな」
そうして、俺達はギムリとレギンの鍛冶工房を出た。
アレってのが何なのかも気になるし、完成が待ち遠しいな。




