48話 俺達の適性武器はなんだ!?-1
日暮れ時となり、俺達はチームAと合流していた。
日が暮れたら集合しようという話だったのだ。
「お~、結構集まったな」
眼前に作られた、鉱石角獣の集まり。
計画通りその全てが溺死によって倒されており、身体に傷がついているものは一体としていない。数は分かりやすく、200体。
横20、縦10で綺麗に並べられている。
「伝えてなかったけど、自分達で配慮してくれたみたいだな。サンキュー」
「かまへん。こんくらい当然や。適当に山にしてもうたら、自分らの重さで身体が傷ついてまうかもしれへんからな」
「おう、ナイス判断! グッジョブ!」
グッ! とサムズアップして、2人に感謝を伝える。
それに対してこちらの成果はというと、
・奏のレベルが10から17へ上昇。
・奏が悲しい歌で戦意を低下させて相手にデバフをかける歌魔法『悲哀の歌』を習得
・シンシアのレベルが12から18へ上昇。
・アンデッド軍団を10体確保。内訳は三叉首キリン7体、マンモスモドキ3体。
こんな感じである。
今回のレベル上げは奏とシンシアのために行ったものなので、俺とナディは基本様子見をしていた。危なくなったらサポートをするだけで、攻撃はしなかったのだ。しかし、基本2人だけでやったにしてはかなりの戦果と言える。
おかげで奏は新しい魔法も習得出来たようだしな。奏が『悲哀の歌』を歌うと、相手の動きがあからさまに鈍くなった。マンモスモドキの方は変わらなかったが、三叉首キリンの方は防御力も下がっていた。身体に魔力を纏わせて防御力を増していたのだ。それが歌の効果で無くなり、素の防御力に戻ったということだ。攻撃は主に、奏の『音圧衝波』で行っていた。2人とも筋力値が低いからな。攻撃力も弱いのだ。
ちなみに、マンモスモドキと三叉首キリン。
この2体を倒した時に天啓で聞いて知ったことだがマンモスモドキの正式名称は巨牙毛獣、三叉首キリンの正式名称は三頭首獣というらしい。
「さてと、んじゃ帰るか。こんだけありゃあ満足してくれんだろ」
◇◇◇
「「う、うおぉぉぉぉおおお!!」」
「す、すげぇ……ぜ、全部傷が全くねぇぞ……」
「どうやったらこんな風になるのかも気になるが。これなら……」
「「アレが鍛てる!!!」」
帰って来て早々鉱石角獣を並べてやると、2人はハイテンションでそんなことを言い出した。
「あれ?」
「おう!! アレってのはまぁ、後でのお楽しみだ! けど、旦那たちが仕入れてくれたんだからな。あんたらの武器を最優先で鍛えてやらぁ!!」
「その通りだぜギムリ! こんだけ良い状態で届けてくれたんだ。失敗作をくれてやるだけじゃ、オレらの気が収まらねぇってもんだ!! ここに居る全員分、タダで鍛ってやらぁ!!」
見るからにやる気に満ち溢れています!! と言った感じの2人。なんだか身体から炎が噴き出しているようにすら見える。
「っつー訳で、旦那たちの戦闘スタイルを教えてくれや。それに合わせて鍛えてやる。折角の良い武器も、合わないんじゃ意味がねぇからな」
レギンの言葉。
親切心から来る言葉だろう。しかし、
「悪いんだが……俺達、武器での戦闘ってあまりしなくてな。クロはこの通り、もう武器を持ってるしな」
そう。俺達は武器戦闘を全然しないのだ。
俺は基本魔力の刃かステゴロだし、奏は歌ってるだけ。シンシアは一応弓を使うがそこまで上手い訳ではない。ナディも『血液操作』で相手の血を全部抜き取って殺すのが基本なのである。
「あぁ? そうなのか。ん~、じゃあ奥に試し斬りが出来る場所があっからよ。そこで一通りの武器を試してみるか?」
「失敗作っつっても、一応武器としては使えるからな。使いやすい武器の種類選びくらいには使えんだろ」
めっちゃ親身にしてくれるやん。
これは結構口説きに成功しているのでは? 俺達の装備作りが終わったら眷属になってくれないか聞いてみるか。
「じゃあ、そうさせてもらうよ。クロの分は……どうしよっか」
「クロの姐さんのソレなら、生体魔鋼と混ぜて鍛ち直すことも出来るぜ? 初めて見る形状だが、問題はねぇ」
「あぁ。オレらドワーフは初めて見るもんだろうが、それが金属である限り実際に見て触れりゃあ、どんなもんだろうが構造を理解出来る。そういうもんなんだ」
「マジか。そいつは凄いな」
しかし、そうか……。鍛ち直すことも出来るのか。
「どうする? クロ」
「……こいつは、創哉はんが名前の次にくれたプレゼントや。うちはずっと使い続けたいと思うとる」
「クロ、お前……そんな風に」
「……うっさいわ。当たり前やろ。いちいち驚くなや。ハズいねん」
頬を赤くして目を逸らすクロ。
「かわいいかよ……」
「だぁもう! ちょぉ黙っとれ! ギムリ、レギン。こいつは不壊効果付きやで? 溶かすなんて無理なんとちゃうんか?」
恥ずかしがるクロも可愛いな……。女として見れないなんて言ってた頃の自分を殴ってやりたい。あいつからの求愛にすぐ応えなかったことを後悔はしていない。
俺は奏一筋でいたかったからな。けど断る口実とするならば、女として見れない。ではなく、俺には奏がいるから無理だ! にするべきだった。
「ハッ、仲睦まじいみてぇで何よりだな。独り身のオレらには、ちぃと羨ましいもんだが。まぁ、そんくらい問題ねぇよ。しかしそうか。そりゃあ大事だよな。けど、一生もんにするには弱い。一般人なら問題ねぇだろうが、クロの姐さんはサタンの旦那の嫁だ。戦場に立つ機会は多い。オレらなら、そいつをもっと強く生まれ変わらせてやることが出来る。どうしても嫌なら仕方ねぇが……どうする?」
ギムリが真面目な顔で問いかける。
「……信用して、ええんやな? こいつは思い出が詰まった、うちの大事な愛刀や。失敗なんか許さへんで。場合によっちゃ……殺す」
漏れ出す殺気。
俺は別に殺気で興奮するような癖は持ち合わせていないが、この殺気は俺としては嬉しいものがあるな。他の皆も、微笑ましそうにクロを見ている。
レギンとセーラは、遠い目をして甘ったるそうにしているが。
「へっ、オレの命を賭けろってか。いいぜ! 任しとけよ。金属弄りにおいてオレらドワーフは失敗なんか、ぜってぇしねぇから」
不敵に笑うギムリ。こいつ、かっけぇな。
「……ひひっ、ごっついのぅギムリ。ええで。なら、うちの愛刀。預けたる。あんじょうしたってくれや」
「おう! 任しとけ」
笑い合う2人。
まぁ、悪い予感はしない。いや、クロムウェルを襲った時からずっと感じてる嫌な予感は、相変わらず強まることも弱まることもなくチラついてるけども。
ホントこの嫌な予感、一体どんだけ先のことを予見してるんだ? なんて思いながらも、俺達は自分の使う武器の種類を決めるため、2人について行くのだった。




