閑話 勘弁してくれー!!
(^U^)イイセリフダ。カンドウテキダナ。ダガムイミダ
「きゃー!! かっわいいー!! 何これ何これ~!! マスターの眷属み~んなかわいい娘ばっかじゃ~ん!! マジ天国なんですけど~!! ヤバくな~い!?」
我が家に到着し眷属の娘らと顔合わせした瞬間、開口一番に発した言葉がこれである。ブォンッ! と姿がブレるほどの速さでペドメイドさん集団に駆け寄ると、これでもかと皆のことを犬を撫で回すようにワシワシワシワシし始めた。
皆が抵抗しないのが不思議だったが、どうやら撫でテクが凄まじいらしい。皆セーラに撫でられた瞬間ふやけたような表情をしている。
「んん~!! さいこーっ!!! でも~、やっぱこうなってくるともう一声欲しくなっちゃうよねぇ~」
そう言って、俺の方を妖しい笑みでチラッと見つめるセーラ。
「……なんだよ」
「いやさぁ~? このダンジョン、こんなにかわいい空間じゃん? もはや聖域な訳よ! かわいいに満ちてなきゃいけないの! そこに男がいちゃねぇ?」
「はぁ? なんだお前。俺に出てけってか? 俺がここの主なんだが」
何が言いたいのか分からず若干イラついていると、
「あぁ、違う違う! マスターに出てけなんて言う訳ないじゃん! 私が言いたいのはねぇ、女装してみようよってことよ!! マスター筋肉質だけど顔はわりと中性的で肌も綺麗だし行けるって!!」
セーラはついに爆弾発言をぶちかました。
「は、はぁっ!? い、いや訳分からんだろ!! なんで俺が!!」
「あ、ちなみに言っとくけど……クロ、だっけ? あんたもだからね。折角かわいい顔してるんだからさぁ~、そんな服じゃなくてもっとフリフリしたの着ようよ!」
「はっ? う、うちもなんか!? なんでやねん!! うちはフリフリしたのが苦手なんや!!」
「さぁ今すぐ着替えよー!! レッツゴーゴー!!」
「「人の話を聞けアホ女!!!/人の話を聞かんかアホンダラ!!!」」
俺とクロがシンクロして抵抗するが、掴まれた腕を引き抜くことが出来ない。
なんだこいつ。力強すぎんか!?? クロが抵抗出来ないってどゆこと?
「クロ!! 妖術でこいつの五感奪っちまえよ!」
「もうやっとるわ!! なんでか効かへんねん!!」
「はぁ!? い、いやどゆことよ……」
妖術はあらゆる耐性を無視するヤバい能力の筈。何故効かない? そんなことがあり得るのか? 2人して本気で戸惑っていると、
「あぁそれ? 私たちセイレーンが水神様のご加護を受けてるからだよ。水は清浄なるもの。だから、状態異常系はぜ~んぶ弾いちゃうんだ! それは妖術だろうと関係ない! クロっちが鬼人じゃなくて鬼神になれば話は別だけど、今の状態じゃ神のご加護は破れないんだ~。ごめんね~? あはははは!」
答えはあっさりと返ってきた。
絶望的な新情報と共に。
「「……なん……だと……?/……なん……やと……?」」
「あ、リーリエちも手伝ってよ! 良いでしょ?」
「……クロ姉はともかく、創哉様には男性らしいカッコいい服の方がお似合いだと思いますので、嫌です」
「え~? いやいや、よく考えてみ……?」
俺とクロを水の球体に閉じ込めてから、セーラはリーリエに駆け寄りごにょごにょと耳打ちした。
だが、俺は聞こえていた。新たなユニークスキル『吟遊詩人』の能力、地獄耳のおかげで!!
「マスターってば確かに今のカッコいい系の服も似合ってるけどさ、あの顔の中性的なキレイさ……活かしてみたいと思わね? お姉さん化粧道具とか結構持ってるんだ~。リーリエちがとびきりかわいい服仕立ててくれれば、お姉さんがあの2人を完璧に仕上げてあげるっ! ねっ、どーよ!」
「うぐっ……た、確かに……見て、みたい、ような……」
「でっしょ~!? クロっちも今は姐御感あるけどさ、顔はわりと童顔じゃん? あの髪の毛イイ感じにまとめてさ」
「た、確かにっ……! それ、良いっ……!」
終わった……。リーリエが墜ちた。陥落してしまった。
はっ! い、いや俺にはまだ奏が居る!!
《か、奏!! 助けてくれ!!》
《……えへっ》
コツンと軽く側頭部を殴りながらウィンクして舌を出す奏。
《てへぺろじゃねぇー!! マジなのか奏さん!?》
俺の質問に、奏はイイ笑顔で親指を立てることで返答した。
《グッ! じゃねぇ~! くっそ~!》
水球が弾け、今度は俺とクロを両脇でヘッドロックしながら連れ去るセーラ。リーリエは申し訳なさそうにしつつも、ちょっと楽しそう。
「カダデザンッ!!! オンドゥルラギッタンディスカ!!?(訳:奏さんっ!!! なんで裏切ったんですか!!?)」
首を絞められながら引きずられる俺が出来たのは、ただそれだけだった。
◇◇◇
「きゃー!! かっわいいー!!! やっぱ見立て通りだったわー! ゴスロリめちゃめちゃ似合うじゃん!! もうちょっと身体の線が細ければ言うことなしだったけど……まぁ、そこは良いや」
「クロ姉も、すっごくお似合いです!! いつも着物でしたけど、これからはたまにで良いですからゴスロリも着てみませんか!?」
完成した俺たちの服は、サイズが違うだけで全く同じもの。
黒と白が混ざり合ったゴスロリであった。もはやフリフリしてない所がないくらい、あっちゃこっちゃフリフリしまくっている洋服である。
「うっ、うぅっ……お、オデノカダダハボドボドダーッ!! いっそ殺せ~!」
「っ……な、泣かないでよ~! 私も調子乗って悪かったからさ~」
セーラが気まずげに首をポリポリと掻きながら謝るが、俺の気は当然晴れない。
クロも同じだよな!? と思って見てみると、
「……メイド服は嫌やったが、これなら悪くないのぅ」
「ホントですか!? やった! でも、フリフリが苦手ならこっちの方がメイド服よりよっぽどフリフリしてるのに……。何の違いなんでしょう……?」
「さぁ、知らへんわ。でも、これならたまに着たってもええで」
スタンドミラーを前になんかほのぼのしてた。
「うっそだろオイ! お前もかクロ!! お前も俺を裏切るのか!?」
「あ~、悪いの創哉はん。うちは普通に気に入ってしもたわ。……でも、こうして見るとホンマに似合っとるのぅ。男やってこと、忘れてまいそうになるで。ほれ自分で見てみ?」
そう言ってクロは俺の前にスタンドミラーを持ってきた。
「あ、ホントだすっげぇ可愛い。……ってそうじゃねえええー!!! 誰だコイツは!? ホントに俺なのかよ!!!」
あまりにもな光景に目を疑いたくなって、スタンドミラーの前でシュババとあっかんべーしてみたり手をぐーぱーしてみたりと適当に動く。
だが、鏡の中の女は俺と寸分違わぬ動きをする。
「い、嫌だ……認めたくないっ! 俺は男なんだ~!!」
現実を受け入れたくなくて、俺は脱兎のごとく逃げ出した。
「あ、創哉。って! かっわいいー!!! すごーい!!」
だが、その途中で奏に見つかってしまう。
しかも奏は、セーラがやったように俺をわしわし撫で回し、スリスリと頬ずりまでしてきた。
ここまで喜んでくれたなら、悪い気はしない。メンタルがガラスのように砕け散りそうになったが……その甲斐はあったというものだ。
まぁそれでも、やはり嫌なものは嫌なんだけど。いや、これで全く似合わずネタで終わらせられそうな感じだったら全然良かった。皆の笑い話になるならそれも良かろうと思えた。変に似合ってしまったから、嫌なのだ。
「はぁ……そんなに喜んでくれたなら良かったよ。そろそろ良いだろ? 元の服に着替えさせてくれ」
「えぇ~? 折角そんなにかわいくなったのに。勿体ないよ! もっと別の服も着てみよ!! あ、私の服貸してあげよっか!?」
「はあ!? い、いやちょっま!」
か、勘弁してくれー!!




