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88話 賽の河原の石積み


 無事靴を手に入れた日から、はや2週間。

 復興……終わっちゃいました。数か月先にはそれなりに見れるようになってんじゃね? とか言ってた自分を殴ってやりたい。

 ぶっちゃけ、屋敷妖精(ハウスゴブリナ)&アンデッド軍団+プライドキングダムの住民たちというチームの力を侮っていた。この国の人達も最初の一週間はアンデッド軍団と同じく屋敷妖精(ハウスゴブリナ)達の雑用に徹していたのだが、なんと、たったそれだけの期間で現代建築法を理解してしまったらしい。

 特に知能指数高い勢(ガルーダ)が。前半1週間は当然ながら現場を回せるリーダーは屋敷妖精(ハウスゴブリナ)達だけだった。しかし現代建築法を見て、手伝って学び盗んだガルーダたちが新たなリーダーとなり、後半の一週間プライドキングダムの大人たち(孤児院メンバーを除く)総出で建築しまくった結果、この短期間で半壊した国の復興を終えてしまったのだ。

 もう、すっかり元通り……いや、現代建築技術を交えた魔改造を施して更に強化された姿となって蘇ったのだ。しかし、国の景観は俺達が来た時と同じ。ここは日本ですか? って言いたくなるような風情のない仕上がりではなく、きっちり元通りに戻してくれたのだ。構造だけを強化して。

 なんとも気の利く奴らよ。いや、マジで。しかも木造建築の家に関しては、釘を使用しないスタイルに変更している。その方が家の強度が上がる為だが、なんつーかホント……屋敷妖精(ハウスゴブリナ)さん、爪痕残しすぎである。

 『現代建築士、中世時代に逆行したので建築業界を改革します!』みたいな小説の主人公ですか? って感じに、プライドキングダムの文明(特に建築)をかなり進めてしまった気がする。いやまぁ、良いんだけど……。

 友好条約を結んだ相手だし、俺の領地に入ったんだし……。うん。良いことだよ。良いこと。うん。……この国だけ文明レベルが異質すぎて、この世界の創造神的な奴に目を付けられそうで怖いっちゃ怖いけど……まぁ、そこに関しては別に嫌な予感しないし、きっと大丈夫……な筈!!


「遠い目をしてどうしたのだ? ソーヤよ」

「ん? あ、あぁ。いや、俺の想定を大幅に超えて復興が早く終わったから、ちょっとな……」

「あぁ、ふっ。なるほどな」


 武闘会の時に使っていた金で縁取られた赤い玉座に、グランは座っている。俺もまた、グランのそれとほぼ同じ椅子に座っている。

 同じ王として、我らは同格であるという意思表明だろう。

 

「ともかく復興支援、感謝するぞソーヤ。約束通り、ギムリとレギンの二人はお前の好きにすると良い。それから有事の際には駆けつけると約束しよう。しかし、それだけでは受けた恩には見合わぬか……。ふむ……そうだな。よし、ソーヤよ。そなたの迷宮と余の国で、人材の交換をせぬか? 勿論すぐとは言わぬ。あぁ、あとは合同開催の祭りなども楽しそうだ。どうだ? なかなか面白いと思うのだが」

「人材交換に、合同開催の祭りか……」


 人材交換に関しては、要は交換留学的なアレってことだろう。

 互いに学ぶことは多い筈だ。俺達は主にこの世界の歴史や、技術。特にリーリエなんか、この話を聞かせてやったらドワーフやディナのもとへ修行に行きたいと真っ先に言い出す姿が容易にイメージできる。あいつ、ファッションに繋がる技術なら何でも習得したいだろうしな。それに、他のメイド隊の娘達をキングス・ロック戦士養成校に行かせてみるってのも良さそうだ。ランシーヌの薬草学とか、学びたいって思う娘それなりに多そうだしな。過去が過去だし。


 もしかしたら、この世界における避妊薬(ピル)を生み出す天才が現れるかもしれない。まだ避妊だけは出来ないからな。『状態異常無効』とか、完全治療薬(おんせんのゆ)とか、同じ‟性”に関するものでも病の方は防ぐスキルがあるし、薬もある。けれど避妊が出来るナニカ、はまだ存在しない。それこそ二度と子供産めなくなっていいって言うなら簡単だが、あくまで一時的に避妊したいってなると、無理なのだ。


 うん。交換留学、有りだな。俺の方からは……どうすっかな。やっぱ現代知識が無難だよな。小説とか漫画とか、創作を教えるっての有りか? 有りだな。というか、俺がそろそろ小説とか読みたくなってきたし、とりあえずうちの娘たちに教えよう。うん。眷属だから現代知識もあるし、創作がどういうもんかってのを良く分かってるだろう。文才がある娘もいるかもしれない。映像化技術とか生まれたら、良いな……。マイクは既にあるんだし、映像化技術さえ出来れば、この世界でもアニメが見れるようになるってことだもんな。いや、見てる途中だった作品はもう二度と見れねぇけど……。


 二次創作で良いから、誰かに続き書いて欲しいな……。あぁぁぁ~~、一度考え始めるとすげー欲出てくるな……!! アニメ見てぇ~、小説読みてぇ~!! 誰かにやらせよう。うん、決めた。やらせる。俺? 模写はそれなりに出来るけど、オリジナルが描けないし文才が皆無だから無理。紗耶香を描くことなら誰にも負ける気はしねぇけどな!!! 学生の頃授業で粘土細工をやらされた時も紗耶香フィギュアを作ってドン引きされたっけな。上手すぎて引くわとか皆に言われた。3万で買わせてくれ! とか言われたけど、勿論お断りした。3万とか、安すぎるわ。まずは紗耶香本人の了承を得ないとな。了承さえ得ればタダで譲ってやるが。

 

 祭りの方も面白そうだ。武闘会はやったし……次やるとしたら、なんだろうな。なんかもっと娯楽要素の強い祭りを開きたい所ではある。

 あっ……競馬的な!? それ良いな……。うちのセーラは水陸両用で速いし、プライドキングダムにもガルーダや馬人族(ケンタウロス)など、足の速い奴らは数多くいる。そいつらを競わせて、観客はギャンブルで楽しむ。うん、王道だけど楽しそうだ。それに、そうなってくると俺がダンジョンマスターであることも活きてくる……。感情収益があるから、例え大勝ちされてホストの俺達が赤字になっても全く問題ない。還元率を8割くらいにすれば、治安悪化も防げるだろう。

 腕相撲大会とかも良いかもな……。やっぱ、幾ら治ると言っても怪我したくはねぇし、させたくもないからな。身内なら安全無事に過ごしたいのである。

 

「うん……良いな。良いなそれ! やろう! 具体的に何やるかってのは、また後で改めて詰めるとして、とりあえずどっかのタイミングでやろう! 絶対!」

「ふっふっふ……そなたなら、ノってくると思っておったぞ!」


 ガシィッ!! と強く握手してニヤリと笑い合う。


「「っく」」

「「くはははは!!」」


 握手をして上機嫌に笑い合う俺とグランの姿に、侍従として無言を貫きながらも控えていたクロとシェパードが、互いに俺達の方へ一瞬視線をやった後軽く見つめ合ってクスリと笑う。どうやらあっちはあっちで、気が合ったようだ。

 

 さて、それじゃギムリ達と合流して、皆で我が家(ダンジョン)へ帰るか!!





 なんて、思った瞬間だった。

 長い間ずっと感じ続けて、もはや慣れてきてすらいた嫌な予感が急激に膨らみ弾け、そして魂の一部が欠け落ちていくような感覚がしたのは。


《申し訳……ありません……。お父様……守れ、なかった……シルルの、シルルの、せいでっ……ごめん、ごめんっなさいっ……!》

 

 響き渡る懺悔の声。

 地道に積み上げてきた(しあわせ)が、ガラガラと崩れ落ちていく音がした。

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― 新着の感想 ―
おお……創哉さんたちの方は色々とありながらも大団円でこれからの亜人国家との交流に夢を膨らませている感じでしたが、ダンジョンの方では何か起っちゃたんですかね……
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