6話
高校の前には大きな坂がある。行きはらくらく帰りは地獄。運動部の恐怖の坂道ダッシュとしていつも部員たちから恐れられている。先輩よりも坂の方が怖いという生徒もいるようだ。この恐怖坂は学生たちから好かれていない。そして学校側も好んでいない。恐れられているとは言ったものの今は通行禁止である為、言い伝えというか伝承みたいな。一種の怪談の扱いである。それは学校側が通行禁止を決めたからだろう。噂によれば、普通に自転車で坂を下るだけで、ブレーキは擦り切れてきかなくなり、タイヤはパンクする。ほぼ通るものがケガをするという呪われてるんじゃないかと言われる坂。故に、近道であろうと誰も通ろうとしない。普段は僕も通らないが銭湯からはこの道しかないため、通らないという選択肢はなかった。こうなるとわかっていたなあ、絶対迂回していた。ちなみに冬はもっと恐ろしく、凍ってしまう。当時の噂のそのまた噂で間違って命知らずがそこを通ってしまうのを見てしまった時は病室の予約しといた方がいいと言われる。そんな坂を今まさに下ってやろうと考えているのが僕だ。
ミノムシの格好で落下する少女はいよいよ坂に入ってしまったので、僕もそのあとを追い、坂を下る。
これなら追いつけるかもなんて思ったのもつかの間、足がついて行かなくなった。気を抜いたらカクンといってそのまま転がり落ちて入院コースだ。
ふと、そういや今日は晴天って言ってなかったかと思う。朝、100%って言ってたような気がした。いや間違いなく言っていた。嘘じゃん。大雨じゃん。雷もなってんじゃん。その時だった、
「あっ」
気が抜けたせいかもしれない。足が滑り、体勢を崩した。さっきの電柱はこの状態で倒れまいと根性をみせたが、それは本当に偉大な事だったと思う。きっとオリンピックに出れば、金メダルは間違いないし、押し相撲だって誰にも負けないだろう。何言ってんだろう。
体勢を崩したまま、なんとか倒れまいとしている時、後ろから物凄い勢いで何かが迫ってきた。噂の電柱だった。そう、金メダリストで押し相撲世界チャンピオンの今話題の選手だ。
姉さんが言っていた事を思い出す。晴れと言っていたのに急に雨が降ってきてびしょぬれになって帰ってきた僕は文句を言った。すると姉さんは、
「天気予報というのはあくまで予想なんだから、外れても問い詰めるのはよそう」
とただそれだけ。なぜ今これを思い出したのか分からない。ダジャレじゃん。