6話 学校に潜入2
どうやら、裏口から行こうとした時に駐車場を通り抜けた駐車場にいたらしい。それで僕の後を追ってきたのだったという。
「たまたま、この時間まで残っていて、たまたま、車の中にいて、そしたらたまたま通っている僕を見つけてしまったという事なんですね」
「そう、ほんとに、たまたま」
「じゃあ、その手に持ってるカメラは何だっていうんですか。しかも一眼レフだし。取る気満々だっただろ」
「これは、その写真部の活動の一環で、心霊写真を撮っちゃおうみたいな。来年の新入生に向けて必要みたいな」
「嫌ですよ、そんな体験。そもそもうちに、写真部なんてないじゃないですか。それに幽霊がいるなんて知ったら逆に来なくなっちゃいますよ。」
「確かに」それはそうだと納得していた。いやでも少し通ってみたいかもその学校と言っている。ほんとに何しに来たんだこの人。
「なにって二人の夜の激闘を撮影してあげようと思って。」
カメラを構えて見せる。
「これでも高校時代はこのカメラで数々の瞬間を納めてきたプロなのです。尚、人の恋路に限る」
そんな人カメラと一緒に馬に蹴られてしまえばいい。
「大体、撮ったて面白くも何ともないですよ。ただのお見舞いなんですから」
「またまた、口ではそう言っていてもみたいな。アタシにはわかる。分かってしまうんだ、人の心が主に恋関係だけど。まあ、その激闘をカメラに収め、天丼を毎日パシッてもらおうと思っていただけ」
もし断られそうになっても断り切れない条件を出すと言う。やっぱりマフィアだったかもしれない。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえという慣用句があるが、その馬が人の恋路を邪魔するのが大好きだった場合、誰が蹴るんだ?
「やっぱり、邪な考えがあったんですね」恋の話が大好物であった保健室の先生は、証拠写真を撮って人をパシリにしようとしていた。
弓子せんせは少し首を傾けてから云った。
「心配していたのは事実。からかってたのも事実。でもあんなことが本当に起きていたら、心配にもなるわよ。もし、化け物の話は嘘でただの言い訳で作り話だったとしてもそれはそれでよし。逆にもし何かあれば、大人としての活躍が期待されるかなって思うわけ」
ふざけていても、心配はしてくれている。これはせんせなり優しさの一つなのだろう。そんな優しさがあるから、生徒にも受け入れられている気がする。教師というのは難しい職業で、誰かにものを教える事、導いてくれる事求められることだってある。なにより教師と生徒の距離感は脆い。だからと言って、近づきすぎてもいけないし、離れてしまってもいけないのだ。しかし、弓子せんせはその距離感を適度にし、上手く保たせている教師の一人なんだと思う。その証拠に自然と周りに人が沢山集まっている。
「そういえば、なんで入らないの。カギ渡したじゃない」もしかして失くしたのかと疑いの目を向けている。
「鍵がはまらないんですよ。これなんか違う鍵じゃないんですか」
カギを顔の前に持っていき、見せつけた。ライトを当てながら、目を細めてじっと見ている。
「あー、これ、違うわ。うちの鍵だ」ウチというのは家の事だろう。
ごめんね、とポケットを漁り、今度はちゃんしたやつだからと改めて鍵を渡された。今度こそ開くのだろう。それに彼女は無事だろうか、気が付いただろうか。心配になってくる。意識が戻らなければ、とまだ聞きたいことがあった。どこから来たとか下の名前も聞いていなかった。それに僕も名の乗っていない。
あとは。これはそれほど重要ではないけれどキタさんの事とか。




