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ハイパーグッドラッキー  作者: 淀川宮古
2章 ラブラブベッドをへし折れ
13/21

5話 深夜の道 学校に潜入

 次に向かったのは、学校の正門前。電柱があったらしいという場所。あったらしいというのも僕は気を失っていたから分からないのだが、弓子せんせに伝えた時に

「それじゃあ、そこにあるんじゃないの。電柱なんて自販機よりも誰か一人で移動させるなんて無理だし。学校に突っ込まなくて良かったよねぇ」

 結論から言うと無かった。綺麗に整えられている道路だと思うぐらい。電柱も道路にそれらしい傷もなかった。変だ。自販機も電柱もそれらしい傷はあっても良かったのに何もない。夜で見えにくいというのは少しぐらいはあるだろうが、ここまで恐ろしいぐらいに何も変わっていない。最初から何も起きてなかったように。

 僕は今、学校の前にいる。時刻は午後2時。草は木も眠る丑三つ時だ。正面から入るのは流石に不味いので駐車場を通って裏口から忍び込むことにした。深夜に忍び込むこと自体がマズいから今更ではあるものの、気が引けた。

 保健室がある場所を目指す。深夜の学校とはどうしてこうも冷たいのか。静かすぎて耳鳴りがした。町とはまた違った静けさが漂っている。時間も時間であるから、それを意識してしまっている自分がいるのも確かだろう。寧ろ、ここまでそれっぽいから、何かが起きてほしいと願い、どこか楽しみにしているのだろうか。それとも、よっぽど現実の方が怖く、摩訶不思議であると体感したからだろうか。だが、恐怖よりも好奇心が勝っている事には違いがなかった。

 保健室の前には意外にもあっさり着いた。拍子抜けしたのかそれとも安堵しているのか落ち着いてドアを開ける事ができそうだった。ドアに指を掛け、開けようとする。

「開かない」

 深夜なのでカギが閉まっているのは当たり前である。ここまでこれたのも、弓子せんせが事前に手を打ってくれていたおかげであり、帰り際に一部開けておいておくと言っていた。そうは言っても戸締りはしっかりと確認されているはずだから、開いてはないなんだろうなと内心思っていた。裏口はちゃんと開いていた。セキュリティ面が心配になってくる。

 保健室の扉は開いていないので偶然受け取ったという体で貸してもらっている鍵をはめて回す。ガリッという音がする。

「あれっ」

 回らないというか鍵穴に差さってもいない。というか鍵穴に対して鍵が大きく、サイズが違う。もう一つの方かと思い、もう一度試してみたが今度は小さすぎる。

「噓だろ」

 ここでまさかの壁があった。これはあの人の事だし最初に確認しておくべきだったかもしれないと少し後悔する。こうなっても諦めるわけにはいかない。

「あとは、窓か」

 無理だ。窓を割れば音が響く。校内に残っている人間はいないだろうけど、最悪の場合近隣住民からの通報。僕は不法侵入、器物破損からの退学コース。弓子せんせは生徒軟禁で警察へお縄に着くことになだろう。彼女はこの学校の生徒じゃないけども。

 それでも、一か八かやるしかないという結論にいたり、扉の前から動こうとした時だ。背後に気配を感じ、振り返る前に肩に手が触れた。

「動くな、動いたら命はないと思え」

「あなたは、一体だれで」誰ですかと言おうとしたが低く恐ろしい声で遮られる。

「喋るな、次はない」背中に何か固いものが当てられてる。見なくても分かる。それはたぶん、日本では禁止されている道具だ。

 まさかと。うっかりというか失念していた。彼女だけを必要に狙っている、あれだけの事があったのに証拠が何一つ残ってない。それらから考えられることは大きな組織が動いているという考えだった。

「目を瞑れ。そのまま、ゆっくりこちらを向け、ゆっくりだ。下手な動きを見せてみろ、その下手な部が上手になるまで調教してやる」

 僕は暗闇の中にいた。今はただ言われたと通りにするしかない。でないと命はないのだから。

 目を瞑りながら、ゆっくりと相手の方を向く。不意打ちをかましてやるという選択肢があったが、大人しくしているのが賢明だと思う。もし最初から消すつもりなら声を掛ける前に始末していただろう。

「目を開けていいぞ」

 開けた瞬間、撃たれるのか。それともスタンガンを当てられ気づけば拷問室なんてこともあり得る。いや、また変な化け物だって可能性も十分ある。

 目を恐る恐る開けた。そこにはなんと、なんと、見知った顔があった。

「びっくりしたでしょ。今の凄くマフィアっぽくなっかった?」

 声の正体は片手にペットボトルを持っている。保健室の主、弓子せんせだった。マフィアっていうより殺し屋だよ。


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