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49話『聖戦②』

 策は通じなかった。それは事実だ。


 だが、【外出血・多量】の性質は何となく見切れた。あの高火力と空気の流れと実際の見た目、一応名前からも推測するに、放出する血液を多くして範囲と火力をあげた【外出血】こそがこの技の本質だろう。


 無制限に擦れる技ではないという事も想像に難くない。擦れるなら初手からバンバン出しているはずだ。


 ならそのリスクとは?

 血液を大量に放出しているという事から考察すればおのずと答えは出てくる。


「血液が元の量に戻るまでの時間は《《魔王の一族から人間に近づき、体の性能が著しく下がる》》と読んでいるんですが、いかがでしょう」

 金庫坐さんの顔が、一瞬歪んだ。


「・・・・・・自分で確かめてみればいいんじゃないかな! 【内出血】!」

「五人!」


 どの方向からどんな攻撃が飛んできても返り討ちにできるように陣形を組む。どんな攻撃方法でも、最低一発は入れられる。

 金庫坐さんは身体を前傾姿勢にして、手W地面に付ける、クラウチングスタートのような体勢を取った。

 足が一歩、踏み込まれる。力が落ちてもなお、地面がひび割れる程重い踏み込み。


「来るなら――」

「じゃあね!」

 金庫坐さんの二歩目は、私とは完全な別方向に舵を向けた。


「え?」

 関節への負担が高すぎるカーブだが、それはどうでもいい。

 問題は、カーブをしたという事だけだ。


「逃げたっ・・・・・・!?」

 嵌められた。完全に虚を突かれた。挑発的かつ好戦的な今までの態度から、逃げの手だけは無いと踏んでいた。

 敵が逃げないことを前提に組んだカウンター特化の陣形では、追いかけるためにはどうしても一拍遅れてしまう。私が動揺した隙に、もうずいぶん離れた場所に行ってしまった


「そういうことするんですね、金庫坐さん。もう戻れないとわかっていても――貴女はやっぱ悪党ですよ」

 私が金庫坐さんを殺さなければいけないように、金庫坐さんも私を殺さなければいけない。

 だから逃げると言う手は、この戦いにおいて有効な戦術の一つである。なぜなら《《相手の行動を一つ確定させることができるから》》。


 戦闘には無限の分岐がある。まして私達二人の能力は汎用性に富んでおり、近接格闘や地形の利用などを考えると、その全ての手に完璧に対応して自分の策を通すことは、真正面から戦う限り不可能だ。


 だが金庫坐さんが逃げている間、私は追いかけなければならなくなる。

 相手が自分に向かってきていると言う確定した事実があればそこから策を組み立てられる。戦況を大幅に有利にすることができる策を。


 そしてその策に逆らうこともできない。

 金庫坐さんをここで追わなければ滝夜ちゃんを緋衣と二人で殺すかもしれない。

 もう出会う機会が無くなり、凪音さんの願った復讐を叶えられないかもしれないし、出会えたとしてもその時の状況は私にとって最悪の状況かもしれない。

 見破ったとしても乗るしかない、私の行動を縛る一手。


(それでもまだ、有利なのは私のはず)

 金庫坐さんは血を消耗して再生能力も身体能力も下がっている。【内出血】でバフを掛けているとはいえ、それも血が薄まって弱った力だ。脚力に限定するなら私とそう変わらないだろう。十分追いつけはするはずだ。

 

「待っていてくださいね凪音さん。今、金庫坐さんを送りますから――」



「やっぱ逃げるつもりじゃなかったんですね」

「・・・・・・どうしてそう思うの?」

「そりゃ逃げ場のない地下なんかに逃げましたし――分身ローラーで探し当てられたってのに、そのあと私が来るまで待っていてくれたじゃないですか」


 流石に説明不足でアンフェアだと思うのでぶっちゃけると、一回見失った。

 全然私より脚力有った。


 分身を出してあっちこっちバラバラに調査させて、やっと見つけることができたが逃げに徹されていたら私は負けていたと判断せざる負えない。


「んで、どんな罠がこの空間に仕掛けられているんですか? 私にはてんで想像がつきませんね」

「罠なんて仕掛けていないよ。最も――」

 金庫坐さんの手から血が溢れる。溢れるが、零れ落ちはしない。


「絶対負けない場所を選ばせてもらったけれど」

 毬のように整形された液体は、金庫坐さんの掌にくっついているように見える。


「【輸血】」

 金庫坐さんから生み出された血の塊が、私に向かって猛然と進んでくる。

「四人」

 仕切りなおして、第二ラウンド。


「【血潮】」

 スタート。


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