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第32話『スタート・ミッション』

 現在夕方六時。T都S区。


 沈む夕日の見える高いビルの屋上に、私は腰を掛けていた。

 この日はきっと、特に何でもない日だった。

 きっと多くのサラリーマンが現在仕事にいそしんでいることだろう。学生だったら塾に行っていたかもしれないし街で遊んでいるかもしれないし、もしかしたら私のお父さんやお母さんの知り合いも――もし見つけたら謝っておこう。


 そんなとても普通な人間の坩堝だったこの地だが――。

 現在、この区には戦火が溢れている。


 巨大なダニような見た目の怪物が何体も現れ道路で暴れていた。

 電波塔ほどの大きさがある巨大な怪物が街を蹂躙していた。

 立ち並ぶ高層ビルには不自然な爆発跡が大量に残っている。

 市民が市民を殺していた。もう動かなくなっているおじさんを執拗にカッターで刺しているちょうど私と同じぐらいの歳の女の子は嘔吐をしながら泣いていた。


 きっとみんな、なんでもない愛すべき日常を過ごしてきた人たちだったのだろう。

 地獄があったらこんな光景なんだろうなと、ぼんやりと思う。


「あれが小殻深志さんの『小さな軍隊ミクロマンサー』。あの人が肉山津害さんの『虚体維持ノットプラスボディ』。さすがに滅茶苦茶デカいなあ。あれは射破ミサさんの『爆発感染ハザード』の影響かな? あの子は可哀想だなあ・・・・・・よりにもよって鳥憑不生さんの『自由縊死ダンシングデッド』喰らってる。あれじゃ仮に助かっても精神的に再起不能かな――」


 ヒマを持て余し、ぼーっと暴れている一陣の人たちを眺めることぐらいしかない。今日は日本で世界的な流星群があるらしいがまだ降る時間じゃないし、時間になっても雲がかかっている。


 幸い私が割り当てられたS区は有名どころが多く招集されており、入って歴の浅い私でも一般知識として知っているような人しかいなかった。知っている人の情報を復唱するという暇つぶしは、今の私にとってはまだマシな娯楽なのだ。

 私は二十一戦闘部隊では唯一、時間による使用制限があるため、第二陣に配属されている。よって英雄省が出張ってくるまでは待機をしなければいけない。


「ねー銅ヶ岡さん」

 隣にはなぜか私と同じ第二十一戦闘部隊所属の赤鬼さんが座っていた。この人は確か一陣だったはずなのだが、サボっている。


「ガー・・・・・・ウー」

「やっぱ急に流暢にしゃべりかけてきたりはしませんか。知能は何となくある気がするんですけどね。襲ってきませんし」

「アーグー。ウガァ」

「あなたの能力ってどんなものだったんですか? まあどうせ答えられないし、もう使えないので大して考える必要もないですけど」

「ウーガア。ゴガァ」

「ふうん。わからないけれどふうんと言ってみました。じゃあ――」

 次の話題を出そうとしたとき、持っていた端末が鳴った。


「おっと。さすがに四十分あれば来ますか。仕事の時間ですね」

 私の仕事は英雄省の英雄を倒すこと。民間人虐殺をやっている友達のみんなに大きな貢献が可能な仕事だ。さすがにサボれない。


「じゃあ先に行ってきますね――銅ヶ岡さんも後から来てくださいね」


 そう言い残すと私は体を倒し、ビルから自由落下する。

 地獄へと落ちる。

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