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第19話『私達VS幹部③』

「『凝血』――『輸血』」


 50㎝程の血の塊が木々の隙間から姫と敵のいる方向に撃ち上がる。


 姫――尋問と為に英雄省最高戦力の13人と名高き、蛍日六花に捕まっている状況だった滝夜姫は、その攻撃の正体が金庫坐葉染さんの物だという事を理解している。


 ――その行動に出た意味は全然分からない。


 即死能力と魔法変身を持っている姫が動けないのに、たった二人でこいつに勝てるわけがない。即時撤退するべきだ。


「『血潮』」

 血の塊は膨張して巨大な渦に代わり、姫と蛍火を引きずり込む。


「うざいん、ですけどぉお!!」

 血まみれの蛍火は叫び構えた。

 蛍火は下半身を変形させ、異臭を放つ灼熱のガスをロケットのように噴出させ、ガスが生み出した爆発による推進力で渦から離脱した。


 カメムシか、へっぴりむしか、なんにせよ通常の虫がこれ程の熱や推進力を持つガスを出せるわけがないのに。

 ――姫だってこいつの纏っている鱗粉の毒を吸ったせいで一切動けていないし、解毒もできていない。


 こいつは、昆虫の能力をそのまま反映させているわけではなく、強化、魔改造して使っている。


「いいのかなあ? 人質のこの子が死んじゃっても!?」

 まあ、なんにせよ姫は助からないだろう。

 姫がこの状況なのにこんな姫を巻き込む攻撃を仕掛けるという事は、見捨てているも同義だ。


 死にたくない。いままで散々な人生を歩んできたのに死にたくない。


 悪いのはみんな周囲だった。


 家族も誰も助けてくれなかった。


 姫を助けてくれなかった人が私を殺す権利があるはずもない。


 なのに、姫は死ぬ。

 悪いことをされたまま、その分のお釣りを手に入れられないまま死ぬ。生きるためにやったことを非難されて死ぬ。


 それはとてもとても理不尽だ。

 姫は死にたくない。

 絶対に、絶対に――

「死にたく、ないよぉ・・・・・・」

「なーに言ってんのおぉ? あんたは死ななきゃ――あ?」

 私が涙を流した瞬間、蛍火の背中の翼が止まった。


「ぼくの血液はね、」

 墜ちる。


「固めることもできるんだよ!」

「ちぃ!」

 地面まで後4mほどの距離で蛍火は体を変形させ、またガスを出す準備をする。

 ――しかし。


「11人」

 11人の真っ赤な美翠お姉ちゃんが四方八方から飛び出した。


 飛び出した11人の美翠お姉ちゃんのうち、9人は、蛍火の鎌と腕によってズタズタにされながらも――

 一人は右翼を引きちぎり、もう一人は姫を引きはがして逃げた。

 つまり、姫は助けられた。


「ま、待ちなさ――」

「あなたの相手は私です。11人」

 ある程度距離が離れ、金庫坐さんがいるところまで着た途端、姫を運んでいた美翠お姉ちゃんはポンと音を立てて消えた。


「金庫坐お姉ちゃん! 美翠お姉ちゃんが!」

「あー・・・・・・うん。多分大丈夫だと思うよ?」

「なんでぇ?! だって相手はあの数々の伝説を持つ、蛍火六花なんだよぉ!?」

 金庫坐おねえちゃんは、うーんと言いながら頭を掻く。


「大丈夫だよ。私が血液でコーティングしてるから蜂の針は通らなくなっているし――後、ほら、あの子は――」

 金庫坐さんの顔は何か――恐怖しているように見えた。


「怪物だから」

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