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第15話『私達VS拳法家③』

「このチンピラ爺! 四千年の歴史か何か知らないが女子供相手に、音を使った小技で不意打ち騙し討ちですかぁ!? みっともないですね。あなたの拳法なんて、スラムのチンピラのやり方となんら変わりないですよ!」

「!?」



 姫ちゃんが絶句してしまったが今それはどうでもいい。

 

「小童」

 挑発相手は敵だ。


「よくも愚弄してくれたな。儂の人生を」

 音越はわかりやすすぎるほどに怒りをあらわにして私を睨んだ。


「あ、効いてる効いてる。やっぱ本当のことを言われると怒るものですねえ! シワと筋肉ばかりつけて馬鹿じゃないですかぁ? 知恵と精神力がついていないですね。そんな人が人生を賭ける程度の拳法なんてせいぜい猿踊りですよ。ウッキッキと鳴いてみたらいかがですかぁ?」

「黙れ。そして死ね」

 音越は構えを取り、技を放つ。


「釈砲」

 一撃必殺、絶対の正拳。直撃したら即死は免れない。


「5人」

 分身のクッションを挟むことで即死を回避。


「ぐうっっっ」

 それでも――5人の分身が全て吹っ飛んだ。さっきの攻撃は三人の分身貫通で済んだのに、威力が上がっている。


 さっきは爆風の相殺でダメージカットされていたのか、それとも人生を侮辱されたことへの怒りで威力が上がったのか――

 拳に人生を賭けたという年月の重み。そんなある種の歪さすらも感じるほどの重い拳。


 でも、そんな重みに私達の友情は負けない。

 私は痛みも衝撃も無視し、震える身体を抑え、手を叩く。


「2人。動きを止めて」

 1人は首を絞め、一人は四肢の関節を破壊を狙う。


 私を基準に骨の再生速度と分身による拘束能力を考えると伸ばせたタイムリミットはおおよそ1秒。姫ちゃんがその間に撃てる弾は多分一発が限界。

 当てれば勝利。外せば戦いは続くが隙を作ることもできず、じり貧になり死ぬ可能性が高い。


 普通なら無茶な話だ。0・6秒で相手の皮膚に直接弾丸を届けるなんて出来るわけがない。

 でも、私の愛する友達へ、命がけで託したバトンなら、かならず届くはず――。


「撃って!」

「撃たないで!」

 不協和音による硬直。0・3秒。

 同時に分身によって一瞬で拘束と破壊を始める。


「っ! 禁弧!」

 音越が拘束をしようとしていた分身と攻撃をしていた分身を破壊した。

 右足、左足、右腕までは破壊できた――しかしそれだけだ。予想以上の高い実力。


 姫ちゃんが銃を構え、狙いを定める。0・2秒。

 まずい、このままでは――

 そして発砲。0・1秒。


「禁弧ぉ!!」

「1人」

 分身を身代わりに攻撃を避ける。


 手刀で削られ消滅する分身。

 天国か、地獄か。


 音越は――笑っていた。

 ひきつった顔の姫ちゃん。

「カ、カカカ」

「あ、あああ」

 音越の右腕が爆発寸前のクジラの死体のように膨張した。


「当てられた!」

 腕から順に腹、頭、足、左腕と全身が、空気を入れている風船みたいに膨らんでいく。

「こんな小童に、まさか殺られるとは――耄碌したのう」


 腹からエイリアンが飛び出した。

 人間サイズのエイリアンだった。

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