醜い女と蔑まれた伯爵令嬢、温泉の力で美しい容姿を取り戻す
こちらは、なろうラジオ大賞5応募用作品です。
キーワード「温泉」
「お前のような醜い女と結婚する気はない」
伯爵令嬢のサラは婚約パーティーの席で唐突に婚約破棄を突き付けられた。
今まさに婚約発表が行われようとしている矢先であった。
「その顔を見てるだけで虫唾が走る。この婚約は白紙だ」
なにもこの場で言わなくてもとサラは思ったが、こういうことになるだろうとは薄々感じていた。
彼は初めての顔合わせの時から不機嫌だったからだ。
「お初にお目にかかります。サラ・オドリーです」
ぎこちなくお辞儀をする彼女に彼が最初に発した言葉は「帰れ」だった。
「そんな顔でよくオレと結婚しようと思ったな。恥を知れ」とまで言われた。
その場は彼の親がなだめすかしてなんとか収まったが、それ以降、婚約者はサラに対して冷たく当たった。
「お前の土地の鉱山が目当ての縁談だ。勘違いするなよ」
代々オドリー家の治める土地から採掘できる鉱石は価値が高く、世界中から買い手が集まるほどだった。
そのため彼女に取り入ろうとする者は後を絶たなかった。
しかしサラの容姿を見るや、誰もがこぞって婚約を辞退した。
彼女は二十歳になってもいまだ独り身だった。
そんな中、国王を通じてサラを娶りたいと申し出る者が現れた。
辺境の国の王子である。
彼は鉱山の利権もいらないと言ってきた。
鉱石を買いに来た時に、サラの丁寧な対応に感銘を受けたという。
「君は素晴らしい女性だ」
王子は敬意を持ってサラに接した。
サラもまた彼の人柄に惹かれた。
醜い顔をした自分にも敬意を持って接するその姿は、まさに王に相応しい器だった。
後日、辺境の国に招待されたサラは王子から提案を受けた。
「我が国に古くから伝わる温泉があるんだ。どんな呪いも解くことができると言われてる温泉だ。ぜひ入ってみてくれ」
王子の言葉に従い、サラは王宮の奥深くに湧き出ていたその温泉に浸かった。
するとどうだろう。
彼女の身体は瞬く間に白く輝き、一瞬にして美しい令嬢に姿を変えた。
そう、彼女の醜い顔は家族がかけた呪いによるものだったのだ。
鉱山目当ての婚約者たちから彼女を守るための。
呪いをかけられていたと知ったサラは憤慨したが、結果的に最良のパートナーを得られたことで両親に感謝した。
その後、盛大に行われた結婚式でサラの本当の姿を知った元婚約者たちは彼女の美しさに唖然とした。
「見てごらん。皆、君の美しさに度肝を抜かれているよ」
王子の言葉にサラは答えた。
「うふふ、あなたが一番驚いてたくせに」と。
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