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第40話 すんごいエルフ、エピローグ その2

 ダリルがポケットから白い棒をだして咥える。そっと両手で包んだと思ったら棒に火がついていて、ダリルが深く息を吸い込むと、導火線のように燃えていき、口に吸い込まれ消えていった。


 ダリルの全身の筋肉が漲る。滾る闘志。


 その腕と脚にはそれぞれ手甲と脚甲がいつのまにか装着されている。コートを脱ぎ捨て前屈みに大きく吐き出している白い煙はまるで物語のドラゴンの炎のように立ち昇る。


 魔獣が迫る。


 ダリルの眼光が鋭くその動きを捉える。


 フィナが生唾を飲み込む。


 熊は3mほどか。デカい。それが全身で覆い被さるように襲い掛かる。


 ダリルの身に付けた武具が熱くなる。


 刹那、ダリルの右脚が熊の側頭部をとらえていた。至近距離のハイキック。


 振り抜いた右脚を地につけると、右脚を軸に半回転して左脚の裏が真下から熊の顎を撃ち上げる。


 軽く1mほど浮いた熊は既に白眼を向いているが、向き直ったダリルは腰を落とし捻りを加えた右のストレートを熊の腹めがけて放った。


 立ち上がり震えるフィナは寒がっているわけではない。目にした圧倒的なそれに、全身が痺れるような感覚を覚え、同時にやはりその男に対する感情は憧れであり、それ以上であると思い、腕を振り抜いた姿勢でその結末を確かめるように息を吐く姿をじっと見つめていた。




 よその街との交流をあまり持たないスウォードという街は自給自足の色が強く、冒険者ギルドに所属してウサギや鳥を狩ることを専門にしている者たちがいる。


 決して派手な戦果や栄誉を得られはしないだろうが、彼らは街の人々の食卓を豊かにするために働く事を誉れとしている。


 そんな街に近頃すんごいエルフがいると、うわさが絶えない。


 ──いわく、前を向いて放った矢が隣のおやじの足下に刺さる。

 ──いわく、いつもニコニコで怒りも泣きもしないことから頭がアレだとか

 ──いわく、狙った獲物は外さないとか

 ──いわく、武器屋で大号泣して衆目に晒されたとか

 ──いわく、単独で30本の矢で30頭の熊を仕留めたとか


 矛盾した内容に場合によってはその矢には31本目があり凶悪な魔獣をも爆散させたなどというものまで付いてきて、噂の真偽は定かではない。ただ、その頃に街中に熊肉が大量に出回った事は事実である。


 そんな彼女は今もただの狩人をしており、噂についてパートナーが聞いたところによると珍しく真顔で「あんなのは自分から望んでやることじゃない、わたしはウサギの狩人が性に合っているんだ」と言ったとか。




 いま1本の矢がかすめてウサギは茂みに隠れてしまった。


 まだ上手く狩れない新人の男の子が矢を拾いに探している。矢は消耗品なので金のない新人は出来ることなら回収したい。


 下を見て探している男の子は目の前の立派なツノの雄鹿に気づかない。


 鹿の興奮した荒い鼻息に顔をあげた男の子はそこではじめて鹿に気づく。既に射程に入った自分に。


 男の子が恐れ、思わず後ずさった所でその鹿の額に一本の矢が刺さる。


 ちょうど眉間の位置に当たる所だ。その矢は一撃で鹿を絶命させ、男の子は命を拾ったのだ。


 そして矢を放った狩人がご機嫌な鼻歌を口ずさみながら、仕留めた獲物を持ち帰るために現れる。


 男の子は助けてもらった礼と、その見事なうでを褒めちぎるが、大きな鳥の羽根のついた緑のきこりみたいな帽子をかぶった狩人の女の子は人差し指を口に当ててウインクするのみだった。




「ダリルぅっ、褒めてーっ!」


 ダリルと呼ばれた男は少しだけ、その口角を上げて見せた。



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