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第101話 花園の裏表 その1

 結局、ダメなんだ。


 あんなに笑顔を貼り付けて、聞きたくもない、退屈でどうでも良い話を延々と相槌をうちながら聞いても。


 伸びる芝生はやがて蛇のようにうねり巻きつく。


 女王はその美貌を醜悪なものに変え、それはもはや人の見た目を捨てている。このフィールドと下半身の繋がったナニカだ。


 周りの小さな妖精たちも、今は怖気のするナニカ。羽のついた短いヤツメウナギのような姿。




 こうやってこいつらはここに迷い込んだ生き物を戯れに恐怖に陥れて最後には自分たちの栄養に変えてしまう。


「久しぶりですもの、たぁっぷりと楽しみましょうね」


 思い切り絡みつく芝生だったものを引きちぎって後方に跳びさがる。


 その俺に妖精だったナニカが粘液を吐きかけてくる。巻き起こす風で跳ね除けたところに、女王だったナニカが槍を放ってきた。いや、槍のように見えるヤツの身体の一部だ。


 蹴りを入れて弾き飛ばす。妖精ナニカたちが口から次々に槍を放つ。


 純粋な魔力の槍だ。耐性のない者が受ければ、浸透したところに痺れと強い熱傷を感じることだろう。だが俺には通らない。


 魔力を広範囲に展開させて、妖精ナニカごと遠ざける。足元から突き出る槍。躱したところで全体に棘を生やしてイバラと化したそれはうねりながら俺を囲んでいく。


「ソルン・ジェイル──どうかしら? 一気に決めましてよ?」


 イバラは太くなり数をふやし、急速にその密度を増していく。それは徐々に圧迫し、動き続けるイバラはこの身を削り去るだろう。


 この世界で、女王の支配するこの世界で捕まればさすがの俺も無事では済まない。寄り添い這いずり絡み合うミミズの塊のようにうねりながら迫り来るイバラの壁は外からの光も遮って間近にまで来ている。


 全てを取り戻せたわけじゃない。それでも、この状況を抜け出す武器はこの手の中にある。俺は手に発現させた双剣を振るいその囲みを抜け出した。


「天使と悪魔。白と黒の二刀は女王は初見だな。喜べ、すぐに終わるんだからな」


 縦、横、斜め、下から、上から、女王だったナニカの足元を含めて俺の周囲を薙ぎ払い続ける。全てを細切れに切り裂く連撃。加速する。もはや女王にも俺の振るう剣は嵐のようにしか映ってはいまい。


「おぉ、お、お、おああああっ!」


 女王の叫びが響くなか、俺はそのナニカごと周囲全ての景色を塵にした。




「やはりダリルは最高よの。いや、至高。ダリルセラピー」


 艶々に輝く肌をもつそれは、先ほどの醜悪な生き物ではなく、最初の女王を1/3に縮めて愛らしくして生まれ変わったかのような妖精たちの女王。


 やけにツヤツヤとしていて、今はただ可愛いお姫様のようだ。この姿になると話し方から変わってしまい一気に親近感の湧く存在となる。


 その周りには同様にリフレッシュされた妖精たちがこちらもつぶらな瞳の羽根の生えた小人だ。見た目の変化とともにあざとさも増して、こいつらに関しては少しイラッとしてしまう。


「ここで迷い人の世話をする時にの、自衛のためとは言えその者たちに根源的な恐怖を与えて、その時表面化された感情ごとここの記憶を抜き取っておる。しかしそれはどうしてもこの花園に蓄積されて澱みを作ってしまうよの」


 俺にとっては前にも説明された内容だが、女王側のケジメというよりは言い訳であるそれも聞いてやれば彼女らも救われるだろう。


 俺も今現在この女王の世話になりっぱなしでもある。たまにこうしてサッパリとさせてやるのも俺の務めだろう。


「毎度のこととは言え、ダリルにばかり苦労をかけてしまって申し訳ないよの。見事にそのワザで天に還してくれた。やはりお主ここで共に生きないかの?」

「それは前にも言った通りだ。いま俺にはあそこに居る理由がある。すまないな」


 おそらく、傍目には退屈そうなこの花園での暮らしは、住んでみればまさしく楽園なのだろう。何もない事を退屈とは思えども、それが苦痛になりもしない、ありのまま受け入れて生きていける、そんな別の理が働きかけているような世界。


 ここで安穏と暮らすのもいいのかも知れない。俺に何もないのならば、だが。


「そうか。まあ、断られる事など分かってて言っておるのだから恨み言もない。残念なのはたしかではあるがの。そうとなれば、早速その魂珠を昇華してくれよう」


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