俺よりずっと強いぞ
「お、終わったか」
カードゲームをしていたコーヤが振り返る。こっそりカードを入れ替えようとした少女の手をはたき落とした。
「結果は?」
「合格だって。これって、私が異常者じゃないってことだよね………?」
異端者でも受け入れる。むしろ異常者の方が多いといいだけだった受付の言葉を思い出し恐る恐る尋ねる。
「異端者の自覚と隠せるかを試すらしいし、自分を異端者と思ってないのに合格出来たなら許容範囲の異端者か異端者じゃないかだ」
異端者じゃないことを祈ろう。逆にコーヤは異端者らしいが。こうして話す分には、そんな感じはしない。
「あ………」
と、コーヤとカードゲームをしている相手の一人と目が合う。先程こちらを見つめていた人形のような少女だ。
「? ああ、此奴等は『混成狩人』……見た目そのままのパーティ名をした食人パーティだ」
「よろしくね」
と、笑顔で挨拶してくる見た目普通の人間の青年。普通、というのは種族的な意味で、容姿的な意味では普通じゃないかっこよさ。
「僕はレグム。一応、リーダーをしているよ」
「俺よりずっと強いぞ」
「コーヤもギルドの中では上位だろ? 果の国で強くても、自慢にもならないさ」
「そりゃもう嫌味だぞ」
果の国? これも知らない単語だ。
「それで? この子は異世界人のよしみで保護してあげたの?」
「いや、佳乃子が何処から来ようと、困ってるんだからほっとけないだろ」
「…………お人好し」
と、人形のように可愛らしい少女が毒づく。毒づいているのか…………?
「? ありがとう」
「こいつ………!」
皮肉が通じず顔を歪める少女。お人好しは騙されやすいという意味の他に、全利用という意味ではあるが。
「………はじめまして。私はアイラ。人形族よ」
差し出された手は、球体関節人形のそれだった。義手なのだろうか?
「人形族は人形に魂が宿った種族だ。怨念だったり長い間大事にされてたり土地神に魂貰ったり……後は子供が生まれてくるとかあるな」
「…………………」
子供と聞き、アイラが顔をそらしながらもチラチラとコーヤを見つめだした。解りやす、と佳乃子は思ったが、コーヤの様子からして全く気付いてないらしい。
「人形なのに、子供?」
「そこも神の御業だ。凄いよな、神。後は『到達者』とか……」
「到達者………」
さっきも聞いた。盤象快楽もその一人だとか。竜神とかいう奴と同等らしいが………。
「私は翼人族のツァール・ロロと言います」
「あっ! えっと、佐藤佳乃子です」
『私はMP-369。気軽にマッピー・ミロクとお呼びください』
「あ、はい………」
どうみてもロボットな存在がとても丁寧な態度で挨拶してきた。ファンタジーな世界で、とても浮いてるように見えるが周りは気にしてない。ていうかマッピーって………。
「マッピーは機械族っていう種族だ。ちゃんと魂もあるんだぞ」
『人工ですがね』
人工の魂………なんか、この世界本当に色々すごいな、と、改めて思った。
「じゃ、俺達は図書館に向かうんで、またな」
「あ、えっと………じゃ、じゃあ………」
ペコリと頭を下げそのばを後にする。
人工の魂とか土地神とか、色々知りたいと思うのはゲーマーの性だろうか?