93トール視点3
「ねえ、本当によかったの?」
「……」
勇者からの返事はなし。別に期待してた訳ではないからそれでもいいんだけど、相槌くらいはしてもいいんじゃないかと思う。
僕が勝手して妖精の棲みかに入ってしまったから余計な仕事を増やしてしまったから怒って居るのだろうとは理解している。だから余計に気まずくて仕方がない。
ここに別の誰かが居てくれたらまだマシだったのだろうけど、生憎と誰も居ないし寄って来るのは相変わらず魔獣だけ。
妖精族の話を聞いた勇者は妖精族から話を聞くと二つ返事で了承するとすぐさま迷いの森へと引き返した。
僕は妖精族と待っているようにと言われたけど、怪我したらどうするつもりなんだと半ば無理やりに着いて来た。
妖精族の人たちの中からは二人。ミックーとスヒィって名前の子たちが着いて来てくれた。
ミックーは眼鏡の女の子でスヒィは少し太り気味の男の子。
仲間が生きていたら連れ戻せるようにと志願してくれた。
彼らの羽根は飾りじゃなくて空も飛べるのでさっきから僕と勇者の間を飛びかっている。
妖精は可愛いんだけど、行ったり来たりされるのはちょっと邪魔かな。
「スヒィ肩に乗る?」
「まだ疲れてないー」
「あたしには聞かないのぉ?」
「ミックーは勇者のところに居たから」
聞こえてたのか。
ごめんねと頭を撫でてあげるとすぐにご機嫌になるところは小犬みたいで可愛らしい。リュリュが二人のことを見たら絶対に気に入ると思う。
リュリュ以外にも森に入ったはずの仲間たちも探さなければいけないのにこの勇者は淡々としていて少々不気味ですらある。
勇者になる前は何をしていたのだろうか? これぐらいは聞いてもいいかな?
「勇者になる前は何をしていたの?」
「……それは答えないといけないことなのか?」
「答えたくないのなら答えなくていいけど、旅の仲間なんだしお互いのことを知っておくのもいいんじゃない?」
無理ならいいや。勇者は感情に乏しい人形みたいな奴って思おう。
「……小さい頃から女に追いかけ回されるわ嫌な目に遭うわで女嫌いになったから将来は騎士とかの女に無縁の生活が出来そうな場所に志願したくて訓練をしていたら神託が下り今に至る」
「へぇ」
その割にはリュリュに興味あるみたいだけど本当に女嫌いなのかな? つついてみたい気持ちもあるけどそれはやめておこう。
余計なことしてリュリュとの関係を変えられてしまうのも嫌だし。
適当に相槌を打ちつつ勇者の話を聞く。そういえばさっきからミックーは勇者の方ばかりに居る気がする。勇者の言う通り本当にモテるのだろう。その顔は妖精にも通用するのかと感心する。
「そろそろ休憩するか?」
「まだ平気だけど一応休憩するよ。ありがとう」
確かに多少疲れてきていたが、まだ許容範囲内だったのに気付くとは。気配りまで出来て顔もよく、しかも勇者。
これでリュリュが堕ちないのが不思議な程だがリュリュの性格を考えると一度嫌いになったものは無理なのかもしれないが、そういうのはひっくり返った時は考えたくはないな。
「ミックー、スヒィも休憩しよう」
「わーい」
「やったぁ!」




