92勇者視点4
暖かい陽気の中花畑の中をリュリュ様と一緒になって走っている。
「あははは」
「お待ちくださいリュリュ様」
「んもうトールってばいつもみたいにリュリュって呼んでよ」
「! はい、いや、うん」
その言葉にえも知れぬ多好感が沸いてきたけれど一瞬浮かんだ疑問が気になってどういうことか聞こうとした。
「じゃあ行こうか」
「そうね」
聞こうとしたところでトールがリュリュ様の隣に立ち二人は俺に背を向けて行ってしまった。俺は二人を追いかけたいのにからだは鉛のように重く動かなかった。
「うぅ……待て! あれ?」
どこだここは? あたたかな日差しに辺り一面には花が咲き乱れてこの一帯にかぐわしい匂いが漂っている。時折吹く風が気持ちよく木の葉が風に揺れる音にもう一度眠ってしまいたい気持ちに駈られる。夢で見た花畑はこれのせいか。
「夢か……」
そういえばと辺りを見回す。気絶する前にトールと一緒に木のうろに吸い込まれた。
「トール! どこだ?!」
気絶してすっかり忘れていたが、トールとリュリュ様を探して居たんだった。がばりと起き上がって辺りを見回すもトールの姿は見えない。どこか別の場所にでも飛ばされてしまったのかもしれない。
「トール! 居たら返事をするんだ!!」
がさりと音がした。
トールか? いや、魔獣の可能性もある。充分に気をつけなければ。
「……出てこい」
「あ、ちょっと待って! 行くから」
トールの声だ。誰か他にも居るのか?
「何をしていた」
「あ、勇者。ちょっと待って」
「?」
木の陰になっていて気付かなかったのか。
トールはどこを見ているんだ? 後ろ? 足元?
「なんだそいつらは!?」
「大丈夫。魔獣じゃない」
トールの視線を辿って行くと膝丈くらいの小人? いや、羽根が生えている。トールの言う通り魔獣や魔族のように悪意はなさそうだ。
「えっと、助けて欲しいんだって」
どういうことだと視線を向けるとトールが気まずげに答えた。
「助けと言われても……それよりそいつらと喋れるのか?」
「それは私から説明しましょう」
そういうのは羽根の生えた小人の中でも一際小柄で年がかなりいってそうな小人だった。
その小人の話によるとこいつらは妖精族で遥か昔こいつらがまだ人族と暮らしていた頃魔王が封印されたがその力の源は残った。
困った人族たちはそれらをいくつかに分けて封印することに成功したが次第に人族はそのことを忘れてしまった。
こいつら妖精族は人族と比べると遥かに長寿なためまだ覚えている者が大半で妖精族は人族が忘れこの地を立ち去った後も封印された力を守っていたが数年前にこの森の結界が破られて何者かに力の欠片を盗まれてしまったそうだ。
それ以降この森は魔獣が跋扈するようになってしまい妖精族は自分たちが暮らす村ぐらいしか守ることが出来ず、森の様子を見に行った者たちも戻って来ない。
行方不明になった奴らを見つけて出来れば魔王の力の欠片を探して欲しいとのこと。
この森が魔王の力を封じていた場所の一つで迷いの森と呼ばれるような場所ならば魔王の力を盗んだ奴はまだこの森に潜んでいる可能性が高いというか、まだ逃げ出せていないはずだと言う。
ならば俺たちが拒否する理由は一切ない。
「その依頼引き受ける」




