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ノヴァはすっかり夜が更けてから目を覚ました。
話を聞くと崖から落ちてこうなったらしい。上流に崖があってそこにシルシェさんとクミンさんが居るらしいけど、もしかしたら移動したかもしれないとのこと。
「俺はいいよ俺は。それよりお前は何をしてたんだよ。こんなところで」
「あたしは……そうよ! ねえノヴァって傷の手当て出来る?!」
「一応……怪我したのか?」
「あたしじゃない」
怪我してないのかと覗き込んで来たので否定して勇者の仲間に出くわしたことと地下空間のこと、そこでなんだかんだあって勇者の仲間が怪我して動けないことを伝えた。
「一応応急措置だけはしたんだけど医者かトールに治してもらいたくて……」
「なるほどな。でも、どうやって行くんだ? ここが迷いの森って呼ばれてるのは知ってるか?」
「ええ、勇者から聞いたわ。でも、一応こうして蔦を伸ばして……」
枯れてる。いつの間に?
あたしこれにずっと異能使ってたと思うんだけど……どっかで千切れちゃったとか? いや、木ぐらいの太さになってたから早々千切れないと思うんだけど……。
でも、枯れて触ったら簡単に砕けてしまう。これじゃあ移動しても風が吹いたら簡単に塵となって飛んで行きそう。
とりあえずこれを辿って行くとしても不安が残る。ノヴァもそれでいいかと聞けば頷いたのでとりあえずはこの蔦で何とか戻れるはず。
でも、何か他にもいい案があればいいんだけど……。
「あ、魔獣!」
「何?! どこだ!?」
「違う。そうじゃなくて」
勇者とトールと一緒に居た時に、魔獣のせいではぐれちゃったのすっかり忘れていたけどあの魔獣に案内してもらう方が早い気がしてきた。
そのことをノヴァに話すとそれならと頷いてくれた。
「そっちの方が確実ならな。でも、今度から危ない魔獣かもしれないから近付くなよ」
「分かってるわよ」
クロッチェのところには龍みたいな魔獣も居る。ここじゃあたしの力なんて殆ど通用しないのならあの通路を塞いだ木だってとっくに枯れてるはずだ。
あの龍の気が変わってどっか遠くに行ってくれていたらいいけど、そうじゃない可能性だってある。
この蔦を辿りつつ魔獣を探しながら戻る。
「小さい魔獣だったの。ふわふわしていて可愛かった」
「可愛い魔獣ねぇ」
「そいつが光って地下空間に居たのよ」
「それはさっき聞いた……てか、寒い」
「濡れてたから仕方わよ」
「何か着替えとかねえか?」
「あるにはあるけどあたしのよ」
「やっぱりいい」
確かにノヴァが女物の服を着てるのは面白いかもしれないけど、あんまり見ていたくはないかも。男装していた時の服はとってあるけど、あたしのサイズだからノヴァには入らないだろう。
しばらく毛布を羽織ってるしかないわね。
風邪を引いてしまうのは困るので冬に使ったショールと帽子を渡しておく。これぐらいならサイズが違っても使えるでしょ。
「というか、その鞄どうなってんだ? 毛布に冬の小物に」
「女の鞄には秘密が多いのよ」
そういえば前世でも鞄から何でも出してきて周りを驚かせる人とか居たわね。今世ではあたしがそれをやっているのか。
ノヴァは納得してなさそうだったけど、それ以上は答えない。今は言うつもりもないし、どうせ勇者の仲間たちは知ってるはずだから誰かから聞いてもいいはずだ。
あたしじゃクロッチェを連れて移動出来ないって思われていたからノヴァを連れて戻ればクロッチェも移動させられる。そしたらいつどこで誰かに会えたら何とかなるかもしれない。




