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食糧と薬はクロッチェのところに置いてきた。
クロッチェの落ちた穴を見失わないようにと蔦を生やし成長させながら勇者とトールの姿を探すがどこに居るか全く分からない。
「何で居ないのよ。……トール!!!!!!!!!! お願い居たら返事してー!」
魔獣に見つかるかもしれないとかは頭になかった。
クロッチェの傷を何とかしないと危ない。トールを見つけて戻ることしかなくて叫んだ。
「トール!!!!!!!!!!!! 出て来てよ!! ……この際勇者の仲間でもいいから誰か居ないの?!」
声の限りに叫ぶが返事はない。誰の姿も見えて来ない。
適当に走って来たけど、本当にこっちでよかったの? 真逆の方に誰か居たんじゃないの? 走り疲れて休憩したいかも。
今から戻る? 汗を拭いながらどうしようか迷い始めた。
戻るにしては進み過ぎた。今から戻るのは時間がもったいないような気もする。
どこかに誰かが居てくれたらいいのに。誰の姿も見つからない。
「! あれは……」
靴だ。誰か居る? それともだいぶ昔に誰かがここに捨てた?
慌てて片足だけの靴のところに走って行ってそれを拾い上げる。
使いこまれた靴はくたびれてはいるものの、丁寧に手入れされていたものだと分かる。そしてトールたちや勇者一行の誰かの靴じゃないのだけが分かった。
近くにもう片足の靴があるかと見回してみるけどない。どっか遠くに飛んで行ったとか? 探す? いや、そんな暇ない。
「……みんなが見つからなくても誰かは居るみたいね」
少しだけ希望が持てたような気もするけど、だったら何故片足だけしかないんだとかは考えない方がいいような気がする。だってこの森魔獣居るんですもの。
キョロキョロと辺りを見回す。さっきまで大声で叫んでたから大丈夫か心配になったから。
とりあえず何の気配もないから大丈夫? いや、人一人ぐらいは居て欲しいんだけど。それがトールならなお良し。
とりあえず拾った靴は適当に捨てようかとも思わなくもなかったけど、ポイ捨てはダメだ。環境によくない。嫌だけど鞄の中にしまってこれからどの方向に行こうか迷う。
「というか、迷いの森って何なのよ。あたしの異能も使えない森だなんて……」
どうやって出るとか攻略法はないの。
「まてよ……」
あたしは生まれ変わりだ。もしかしたら何か。物語やゲームに入ってしまったとかはないか?
というか、普段あんまり使わない前世の知識を今ここで活用出来ないかと色々思い出そうとするけど、アイスおいしかったとかコスメは絶対にここじゃないと嫌ってお店があったとか過ぎない食べ物はあげタコが好きだったとかどうでもよさそうなことしか思い出さない。
前世のあたし何してたの? 呑気にテレビ見て笑ってんじゃないわよ! 何かいい案ないの?!
全然思いつかなかった。
あれこれと考えている間休憩も出来たみたいで汗もすっかり引いて少し肌寒くなってしまった。
森の中は元々涼しかったけど、休憩すると寒い。
クロッチェを助けるためにもあたしは再び走り出した。
しばらく走っていると川に出た。川を下るといつかは人の暮らしているところに出るんだっけ? とうろ覚えの知識を思い出す。
勇者の仲間誰一人として見つからないのなら確率の高そうな川を下って行った方が早いかもしれない。
しばらく迷ったけど、あたしは川を下ることに決めた。
だって誰も見つからないんだもの仕方ないわよね。
それに、異能を使い続けていたツルはかなり成長して今はまるで細い木のようになってしまった。その内これを持って移動するのは大変になる。だからそれより前に人を探して戻った方がいい。
そうやって川を降り始めてどれくらい経ったのか分からないが、ノヴァがいた。というか、落ちてた。
「は?! ちょ、あんたこんなところに居るのよ! トールは?!」
川の中から上半身だけ出してこれは気絶している?
このまま川の中に居るのもよくない。引きずるようにして川の中から陸に上げる。
お、重い。いくらあたしが農作業で鍛えてたと言っても成人男性、それも水に濡れてさらに重くなっているのを引き上げるのはかなり骨の折れる仕事だ。
やっぱり勇者に見つかってから録な目に遭ってない。
「ノヴァ! ノヴァ起きて! みんなはどうしたの?!」
「うぅっ……」
唸り声は上げるもののダメだ。起きる気配がない。
どれくらい水に浸かっていたのか分からないけど、体が冷えてるせいかも。
その辺の枯れ木を集めて焚き火にする。
服は脱がせるべきなのだろうけど、もう疲れ果てて何もしたくない。とりあえずびしょ濡れの体だけでもと拭いて毛布だけ掛けてあげただけでもいいとしよう。




