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「っ!」
「大丈夫?」
「平気だ」
クロッチェが明かりを持って行くのは危険だと言うので泣く泣く置いて来た。
鞄の中だったらまだ隙間があると言ってもダメだった。
それなのに手探りで歩いてるからあちこちぶつけまくって痛いし、クロッチェは重いしで大変だったけどあの龍と戦うことを考えたらまだこっちの方がマシ。
後ろは攻撃された時用にと木を生やして生やして歩いてるからゆっくり目になっちゃっているけど怪我人がいるんだからそれは仕方ないと諦める。
「なあ」
「何よ」
あたしは作業中よ。
「後ろの木が倒されたらお前分かんの?」
「え?」
後ろの木ってあたしが生やした奴よね?
「考えたこともなかったわ」
「じゃあ、考えてみろ」
「えー」
「えーじゃねえよ」
「だってそれしたらあの魔獣がどれだけ攻撃してきてるのか分かるってことでしょ? 精神衛生上お断りするわ」
「そうか」
何でわざわざそんなことを聞いたのよ。
「ところでまだ?」
「そろそろのはずだ」
良かった。これで危ない場所から逃げら──
「え」
「あ」
目の前に何か落ちて来た?
何だろう。暗くて見えないけど大きい? もしかしてクロッチェみたいに落ちて来た人?
「まずい!」
「え?」
クロッチェに突飛ばされた。何すんのよと文句を言うより先に濃厚な獣の匂いと血の匂いにこれはまずいやつだと本能的に異能を使い何かを串刺しにする。
断末魔に身を強ばらせたけどしばらくしても襲ってくる様子もない。
「やった?」
立ち上がろうとすると突き飛ばされた時にあちこちぶつかったから痛い。
「クロッチェ生きてる?」
「……重い。こいつをどけてくれ」
「どこに居るのよ」
明かりを持って来なかったからどこに居るのか分かんないじゃないの!
「……ああ、もう! 仕方ない。ちょっと待ってろ!」
何かやってる? よく分からないけどもう平気なんだよね?
「うわっ! 何だこれ!」
クロッチェの辺りが明るい。何だあいつ明かり持ってたんなら最初から出しといてよ。と明かりの方に気を取られていたが、あたしが倒した魔獣らしき生き物は大型で大振りのナイフが刺さっている。
これって──
「クロッチェが戦ったって言ってた魔獣?」
まあ、いいやと浄化すると血まみれになったクロッチェが出てきた。
「え?! 大丈夫?!」
あたしうっかりやっちゃった?!
「……いや、ほとんどがさっきの魔獣の血だな。後は」
クロッチェの言葉に傷がないか確認しようとして気付く。
クロッチェの手の中に握られているあの光る球は
「あの、その球って……もしかして」
「お前も見たことあんのか? 勇者たちから聞いたのか?」
「ま、魔王のあれよね」
「あれだな」
せっかく盗賊に押し付けたのにどうしてそれがここにあんのよ!
口に出して叫びたい。たいけど我慢しないと。
そんなこと言ったらまた怒られるに決まってるもの。そんなのごめんよ。
「えっと、怪我はないのね」
「いや、ある」
「え、どこ?」
包帯と消毒薬を取り出して見せろとクロッチェに詰め寄る。
魔獣の血で分かりにくいけどあっちこっち怪我しているわね。
「上だけでいいから服脱いで」
「は?!」
「治療のためよ。誰もあんたの裸になんて興味ないから!」
「ああ……いっ!」
あからさまにホッとする姿にムカついて消毒薬が染み込んだ布を強く押し付けてやったら痛みに顔をしかめてた。いい気味だ。
「ってあんた背中……」
ざっくり切ってる。これじゃあトール居ないと無理じゃないの。
さっきの大きな魔獣の爪よね? 縦に何本もざっくりとやられて血も出てる。何でこれで平然としていられるのよ!
「お前一人で外に行け」
「は?! 何言ってんのよ!」
勇者の仲間だから最初は置いて行こうかと思ったけど、こんな酷い怪我しているのなら話は別よ。
「外の魔獣、今の俺じゃ倒せねえ」
「あんたが倒せないんだったらあたしだって倒せないわよ!」
「嘘吐け! こんなに簡単に魔獣殺せる奴が戦えないとか言うな!」
「なっ、たまたまよ。たまたま」
この会話アマンダともしたわね。
「俺が外に出たら魔獣の餌にしかなんねえ。上に勇者が居るんだろ? 探してここに連れてこい」
「……」
「さっさと行け」
「分かった。それまで死ぬんじゃないわよ」




