85勇者視点3
「いたか?」
「それっぽいのは居ないねぇ」
トールの答えに苛立ちが募る。
「そういう勇者は見つけたの?」
「そんな小さな魔獣は見ていない」
「きっぱり言うのはいいけど自分でも探してくんない?」
その言葉に押し黙る。
リュリュ様が居なくなってから2日が過ぎた。
その間に仲間と合流することすら出来ずにいる。
あいつらは何をしているんだ? この一大事に。この森は同じところをぐるぐると回ってるだけだから入ったら合流するはずだろ。
ため息を吐いてからトールの言う小さな魔獣の姿を探して見るがそんなもの見当たらない。たまに襲ってくる魔獣もリュリュ様のところに連れて行ってくれるんじゃないかと期待するが攻撃をしてくるのみで仕方ないので仕留めるしかない。
食糧も持って来なかったから倒した魔獣を食べるしかないが、食が細いのかトールはあまり食べようとしない。
リュリュ様も食べる物に困ってなければいいのだが。
そんなことを考えながらトールが言っていた魔獣の姿を探しているとトールの様子がおかしい気がする。
「トール」
「何?」
こちらを振り返るトールの顔はいつもと同じようだがいつもより息が荒い気がする。
「体調が悪いのか?」
「そんなことないよ。それに僕よりリュリュの心配をしなきゃ。今頃一人で寂しい思いをしているはずだから」
「それならいいが」
トールが体調を崩すのは一度や二度ではないが、その時はあの三人の内の誰かが伝えに来ていたし、自分たちもそんなものかと大して気にもとめなかった。
だから、今回も大して気にもとめる必要はないのかもしれないが、外套を外しトールに被せる。
「わぷっ……何?!」
「羽織っておけ。お前が風邪でも引いたらリュリュ様も心配するだろうから」
「……そう、ありがと。あ!」
「どうした?」
トールの視線の先には木ぐらいしかないはずだが? そう思いながらトールの傍に行く。
「何だ?」
木のウロというには大きくて誰かが穴を開けたが、この木は枯れることなく成長したのか穴は古いのか真新しい感じではない。
じっと覗いていると別の世界にでも繋がっていそうだ。
珍しいと言えば珍しいが、まじまじと見つめるような物なのか?
「ここ、揺らぎが見える」
「揺らぎ?」
そう言われてもう一度木を眺めたがそれは分からない。トールの母は魔王の力を鎮めていた一族だと言うから俺たちには見えない何かが見えている可能性がある。
トールがその木に手を伸ばすとトールの姿は吸い込まれるかのように消えた。
「は?!」
まずい! リュリュ様だけでなくトールまで消えたなんて笑えない。
リュリュ様と違って魔獣に連れ去られた訳ではない。この木のせいかと覚悟を決めてウロに手を伸ばせば視界が反転し何か強い力に押されるような感覚に声を上げる間もなく飲み込まれていった。




