84ノヴァ視点2
「なあ、これ一回戻った方がいいんじゃないか?」
「どうやって? もう来た道なんて分からないぞ」
「……」
その言葉に思わず黙り込むしかなかった。
アマンダたちの言い方にカチンと来た俺たち三人は森に入ったはいいものの、ものの見事に迷った。
こんなの普通じゃないと騒ぐクミンを宥めすかしてトール様とリュリュを探してさ迷い歩くが一向に見つからねえ。
「クミンどうだ?」
「この魔獣食べられるんですかねぇ?」
「食うなよ」
今しがた倒したばかりの大型の魔獣を見ながらぽつりと呟くクミンに恐ろしさを感じながら止める。
「でも、食糧を持って来ませんでしたから調達しなければいけませんのに、録に何もありませんもの」
「だからって毒とかあったらどうするんだ」
まだ死にたくはないぞと伝える。
「平気ですよ。まさか私の異能を忘れたりした訳ではありませんよね?」
「そりゃな」
クミンの異能は毒。普段は悟らせないが異能を使って暗殺をすることもあるぐらいだ。
色んな毒を生成したり時には無毒化してくれたりして助かるっちゃ助かる。トール様の薬を作る時にも少しだけ使っていたりするからトール様もクミンの異能については知っている。
シルシェはパッと見分かんねえけどあれで戦闘系の異能あってめちゃくちゃ強い。俺も戦闘系の異能があるけど、今までシルシェに勝てた試しがない。
だから食べられるはずだと言うクミンに目の前で捌くのかよとげんなりする。
「シルシェ、クミンどうにかしてくれよ」
「ああ、うん。それよりトール様の方が心配だ。薬も飲んでないし、食糧もなかったから今頃倒れられている可能性もある」
あ、こりゃクミンのこと止めてくれない奴だわ。俺だってトール様のこと気になるっちゃなるけどここまででもねえし。
「それにしても変ですね」
「何が?」
「2日も経っているのに誰にも会わないのが」
「そりゃ迷いの森だからじゃ?」
「私たちのすぐ後に入ったあの方たちですら会わないのはさすがにおかしいですよ。私たちは何度も休憩したり焚き火だってしてますから匂いだってするはずでしょう」
「それはそうだけど、俺たちが思っている以上に森が深いってことじゃねえのか?」
考え過ぎじゃねえのか? と言ってもクミンは何かあるはずだと言って考え込むし、シルシェはシルシェであっちこっちに思考が飛んで行き端から見ていると危なっかしい。
トール様じゃなくてもいいから誰かこいつらどうにかしてくれ!
「ん? 何だあれ?」
「キノコか何かありましたか?」
「いや、そうじゃねえ」
何か光ったような気がする。
あっちに何かあるのか?
「なあ、クミン!」
「どうかしました?」
「あっちに何かあるっぽい! 何か光った!」
「トール様か?!」
「は?! えっ、ちょっ……」
いきなりシルシェが俺を押し退けて来たからよろけてたたらを踏んだら段差になっていたのか転びそうになってやべえから掴もうと思った木が避けた。
避けたってなんだよ。
そんなことを考えながらそのまま地面に激突すると思ったのに中々その感覚がやってこない。おかしいと思って下を見れば崖だった。
「は?!」
「ノヴァ!」
「うわあああああ!」
嘘だろ? 俺こんなところで死んじまうのか?!




