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「それは大変だったわね。お代わりいる?」
「ああ」
クロッチェさんって言って狩人をしていた人なんだけど旅の途中に見知らやにおじいさんに頼み込まれて森に入ったはいいものの魔獣に襲われてここにきたのにらしい。
その際に足を折ってしまったらしく今は痛み止めの薬草と軽く食べられそうな物を作って出した。
かなりお腹が空いてたらしくクロッチェさんはもう二回もお代わりをしている。
「そっちも魔獣のせいでここに来たんだったな」
「ええ、荷物があったから何とかなったけどなかったら最悪だったわ」
クロッチェさんが出てきた洞穴には目印をしている。クロッチェさんの足がよくなればそのまま異能を使ってここから出るのもいいかもしれない。
大型の魔獣がいるって話だったからすぐに出るのは危ないからね。
「荷物は何がある?」
「食糧と着替えぐらいよ」
それがどうかしたの? と問う。
「この足だからね。何か使えるものがあればって思ったんだ」
なるほど。荷物を盗まれて殺されるって可能性は低いのかな? でも、まだ油断は出来ない。
「お嬢さんがここに落ちてからどれくらい経った?」
「気絶していたから分かんないけど数日?」
「その間会ったのは俺だけか……」
「ええ、あっちこっち骸骨だらけだったわ。この上の森が迷いの森って言われてるのはここのせいね」
こんな地下空間があるだなんて誰も思わないでしょうし。
「いや、それ以外にもある」
「え?」
クロッチェさん曰く目印をつけていたのにその目印もいつの間にかなくなっていたそう。
「そういえばあたしたちも真っ直ぐに歩いていたのに同じ場所を歩いていたわ」
「あたしたち? 連れがいたのか?」
「ええ……」
トールはいいんだけどもう一人がね。それに街には勇者の仲間もいたからね。
多分今頃アマンダとカナリアがまたあたしのせいだって言っていそうだけど、もうあたしには関係ないからいいか。
クロッチェさんが出てきた洞穴から外に出て何とかして迷いの森を抜けて適当な場所に行こう。
「そいつらは?」
「ここには落ちてきてないみたいね」
「それはよかったのか?」
「いいんじゃない?」
トールは体弱いそうだし、勇者がここにいたらすっごいムカついてただろうし、あいつに助けを求めるのは癪だもん。居なくてよかったわよ。
「じゃあ、助けが来るかもしんねえのか」
「多分?」
「多分ってなんだよ。そういやお嬢さんの名前聞いてなかったな」
「そうだっけ? リュリュよ」
「は?!」
「えっ何?」
ぎょっとして目を見開いてこっちを見るクロッチェさんに何か変なことを言った? いや、普通に名乗っただけだし。何もおかしなところはなかったはず。
「……あの、もしかしてクロッチェさんってゆが付くあの方の仲間何ですか?」
「……ゆって何だよ。もしかしなくても勇者の仲間だよ。こんなとこにいたのか極悪聖女。こんなところに落ちたなんてざまあねえな」
「あんたも落ちてるけどね。勇者の仲間だなんて知ってたら優しくするんじゃなかった!」
そのまましばらくはお互いににらみ合っていたが、どちらからともなく視線を反らした。
「お前豊穣の異能あるんだろ?」
「あるけど何? まだ食べるっての?」
「ちげえよ! それってどれくらいだ?」
「正確に測ったことないから知らないけどあんたが落ちたところからなら逃げられると思うわ」
「! なら」
「魔獣がいるんでしょ? 危なくないの?」
「……」
黙っちゃった。
「だが、俺はいつまでもお前とこんなところに閉じ込められるのはまっぴらだからな」
「当たり前じゃない。あたしだっていつまでもこんな辛気臭いところに居たくないわよ」
あんたが来るまで出口が分からなかったからここに居ただけだから分かった時点で出て行ってもよかったけど、怪我人を放っておくのもどうかと思ったからだもの。それに魔獣がいるって言ってたから。
「……お前変わってんな」
「どこが?」
意味分かんない。あたしは平穏に暮らしたいだけなのに。




