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あれから数ヶ月。え、早い？ 仕方ないじゃない。あれから散々迷ったあげく着いたのが国境の街で、大した検査もされずにすんなりと通行料だけ払って隣の国に行けたんだもん。
誰かに会うかと期待と不安混じりに旅してたのに、まさか国境の街まで人に会うこともなく旅を続けられてあたしだってびっくりよ。ひたすら森の中を歩いてただけだった。
あり得なくない？
しかも野生動物にすら出会えなくて、国境の街で食べた久しぶりのお肉が美味しくて美味しくて久しぶりの人の作った物がこんなに美味しいと思ってなかった。お母さん今までありがとうと色々な感情が涌き出てきて涙が止まらなくなってたら屋台のおじさんがお肉のオマケまでしてくれた。
まあ、あたしの見た目がかなり酷い格好になってたから屋台のおじさん同情してくれたんでしょうけど。
あの時のお肉の味は絶対忘れない。今まで食べたお肉の中で一番おいしかったもの。
国境まで迷子になってたし、服は一新して髪もばっさりと切るしかなくなってしまったのは痛かったけどこれはこれでありかもしれないと思った。
だけど、悲しいかな男の格好をしても違和感はあんまりなかった。
なんで男の格好？ って思うでしょ？ 女の一人旅は危険だよって屋台のおじさんが教えてくれたから変装したの。ついでに破れた鞄も新しいのに買い直したり追加で必要そうな物を買ったりしたので思ったより出費が……。
もしかしたら死んでないとバレる可能性もあるからこっちの方が確かによかったし、男の格好の方が動きやすくて楽だし、見た目もだいぶ変わったからこれであたしを見たって誰も気付かないだろうと思うとだいぶ気が楽になった。
思わず屋台のおじさんに惚れてしまいそうになったけど、あたしには行商のおじさんがいるからとお礼だけ言って近くの川辺でさっくりと髪を切った。
それ以降はずっと男の格好でどこかの商隊に荷運びの手伝いで潜り込んだり、図鑑にあった薬草を育てて売っ払ったお金で宿を取ったりしながら旅を続け、気付いたら今にいたる。
女の格好でいた頃よりも多分快適に旅が出来ていると思う。周りに人がいるだけでこんなにも一人旅が快適になるとは……でも、もう森で迷いたくはないわね。
今の季節は秋。のんびりと移り変わる景色を見ながら平和だなと思う。
魔王が復活するとか言ってたのは何だったのかと思うぐらい平和だ。
前に町に寄った時にそんな噂がないか聞いて回ったこともあったが、何言ってんのこいつと痛い子を見るような目をされちゃったので、いつしか魔王や勇者について聞くのを止めてしまった。
あたし騙されたの？ これなら国を出なくてもよかったんじゃないのかと一瞬だけ頭を過ったが、もう出てしまった後だしここまできたら関係ないや。
あそこにいても勧誘がしつこかっただけだし、村の人たちがあんなに薄情だと分かった今では放浪の旅最高!! としかいいようがない。
今あたしがいるのは、今まで暮らしてた国から一つ国を挟んだケロルナーダ国って名前の国に入ったところ。
この国は商売の国らしく活気かあって楽しそう。国境の街にいるからか沢山人がいるし、売ってるものも沢山あって目移りしちゃう。
暮らすならこんな国でも良さげだが、他にも見たい国はあるし、最終的に行きたい国は別大陸だ。ここで足を止めてはいけない。
それにここはまだあの国が近いから駄目だ。こんな近くだったらあっさり見つかってしまう。
旅をしてて時々どこかの商隊に入れてもらうけど、基本は一人旅。でも、そろそろ仲間が欲しくなってきたというより野宿する時熟睡出来ないのがキツくなってきた。
商隊にいた時に危険な野生動物とか盗賊とか出たこともあったけど、なんとか見つからないように隠れて過ごすのにも限界があるのよね。
異能のおかげで珍しい薬草を売ったりしてるから、ある程度の稼ぎだってあるし。
だから、このお金で護衛を雇おうとしたら、子供だから駄目だって言われるた。なんでだよ！ それじゃあ、別のところで探そうとしたらあからさまに怪しい奴にカモにされそうになったのでもうしばらくは一人旅を満喫するしかない。
二次元だと子供を拾ったりとか押し掛け仲間とか出来たりするのになんであたしにはそんなフラグは立たないのよ！ ちょっと寂しいじゃないの!!
ただ、もう少ししたら冬になる。そうなると雪が降って身動きが出来なくなるからその間どこかに拠点を作らないといけない。
この国はあたしが住んでた国より雪深いらしく、秋だというのに寒くてもう冬服を買ってしまった。
これで本格的な冬になったらどうすればいいんだろ？ 野宿はこの辺じゃ無理そうだし、やっぱ移動するしかないか……。
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