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「あれ?」
「どうかした?」
「どうかしましたか?」
「トールここさっきも来なかった?」
「え?」
あたしが植えた木が枯れてる。あれから多分一時間は経ってないような?
「……ていうか、どうして同じ場所に出たの?」
「そうだよね。僕たち真っ直ぐに歩いてたはずなのに。まさか迷子?」
「違う。ここは迷いの森だ。きっと惑わされたのだろう」
「じゃあ、動いても無駄ってことか」
だったら休憩しててもいいよね。
この森魔獣はいた。魔獣は魔族とは違って知能は獣並みで魔族よりも野生動物に近い。だけど普通の野生動物とは違って魔法を使ってくるからかなり厄介なんだって。
あたしが一人旅をしている時にはそんなの見たことがなくてますますファンタジーっぽいじゃんって思った。
何であたしがそんなのを見たことも聞いたこともなかったのはあたしが生まれた辺りは危険な生き物は野生のクマぐらいだったそう。あたしが小さい頃に離れたくないと言ってそれが押し通せたのもそれの影響もあったらしい。
あと、移動中に遭遇しなかったのはたまたまだったそう。
「今後お一人で行動しないようにお願いします」
「気をつけます」
それをぽろっとうっかり話しちゃったらトールから散々心配されたし、勇者からは小言を沢山言われた。勇者からのは聞き流してたけど二人共どうしてそこまで言うのかしら。無事だったんだからいいじゃないの。
「最初に会った時に色々聞いて来た時は何も言わなかったのに……」
「それはリュリュが商隊いたって言ってたからで」
「時々って言ってたわよ!」
「それに旅って基本馬車とかでしょ」
「そんなお金もったいないわよ」
お坊っちゃま発言しないでちょうだいよ。馬車なんてたまにの贅沢よ。
「でも、異能使えばもっと贅沢出来たでしょ」
「そしたら見つかるし、面倒に巻き込まれるだけよ」
もう見つかっちゃったから仕方ないけど、あの時はそうだと思ってたし、勇者たちと移動するようになってから異能をバンバン使ってるけど、どこもかしこもあたしが豊穣の異能を使ったとたんに歓迎ムードに変わり、こっそりあたしだけに残らないかと聞いて来る人もいたけど、酷いと誘拐とか仲間を殺されたりする場合もあるとか聞いたことがある。
だから本当は王都で暮らして欲しいんだと言っていたのはどれくらい前の役人だったか。
「そっか。豊穣って大変なんだね」
「治癒も大変なんじゃないの?」
そんな異能聞いたことないし、前にアマンダに魔法で治せるのか聞いたらびっくりしてたから多分この世界の魔法じゃ多分出来ないのだろう。
だとしたら治癒もかなり珍しいはずの異能だと思う。
「僕にはシルシュたちがいるから」
あの三人かなり強いらしい。あたしはまだ戦ってるところは見たことないけどどんな風に戦うんだろ。
三人の戦う場面を想像していたら勇者が剣を抜いた。
「トール隠れましょ」
「うん」
あたしとトールは非戦闘員だから勇者が剣を抜いたら危なくなったらいつでも逃げれるように下がる。
魔獣にも浄化の力が通用するのかと思ったら一応通用するっぽいのでいざとなればあたしも戦えるっぽいけど勇者が戦ってくれるって言ってくれてるので今のところお任せしている。やれる人がいるならやってくれたらいい。
今出てきた魔獣は豹のような魔獣だけど、尻尾と額からは炎が燃えていて数が多いんだけど、大丈夫よね? とりあえず登れそうな木の上にトールを押し上げてあたしも登る。
「リュリュ大丈夫?」
「あたしは平気」
あの炎で森が燃えたりしないの? 大丈夫なのって気になったらじりじりと豹が勇者に詰め寄ってきてる。ちゃんと数えてないけど十やそこらじゃなさそう。
「あれって大丈夫なの?」
「怪我したら治すから平気だよ」
そうじゃない。
そうじゃないんだけど、何て言えばいいのか分からない。勇者が強いのは魔族たちやっつけたの知ってるから知ってるけど、今は多勢に無勢って奴でしょ? しかも、よく分かんない場所で後ろにはあたしたちがいて足手まといでしかないはずだし。
「そろそろリュリュ様によいところを見せるために死んでもらうぞ!」
勇者が何か言ってたけど、それよりも豹額やしっぽから炎が燃えているのに豹が口を開いて息を吐き出したら氷の塊が出来上がっていく。
炎系の魔獣じゃないの?! 氷系の魔獣なの?! どういうことよと豹の魔獣の生態系が気になってきたわよ!
生け捕りは怖いし、学者でもなんでもないから分からないかもしれない。ああ、もう、誰かあたしに教えてくれる人とか居ないかな?
勇者は強かった。あっという間に倒したと思ったら他にも魔獣がいたのかコウモリのような魔獣までもが襲ってきたけど、それもあっという間に倒して怪我1つ負ってなかった。
「リュリュ様大丈夫でしたか?」
「トール先に降りて」
「え? あ、うん」
スカートなんだから降りれるかっての! それに気付いてくれたトールが降りてくれたばかりか勇者を連れて離れてくれた。
トールナイス!
『チュチュ』
「ん?」
鳥? にしてはわりと近くから聞こえたような?
不思議に思って辺りを見回してみるとリス? 何これこの子も魔獣なの?
「ねえ、」
『ヂュ!』
下にいる二人に聞こうとした時だった。
リスらしき魔獣がいきなり大声で短く鳴いた。
「え?」
「リュリュ?!」
「リュリュ様?!」
二人の声が聞こえたけどそれどころじゃない。リスらしき魔獣がいきなり強く光り出し逃げようとしたけど、それより先に魔獣からの閃光にやられていつの間にか気絶してしまった。
「リュリュ!」




