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「信じらんない! 三人揃って迷子とか!」
「申し訳……」
「リュリュ落ちついて」
「落ちついてられないわよ!」
あの後勇者もあたしを追いかけていたせいでまわりを見てなかったことが発覚し、三人揃って迷子とか笑えないんですけど。
「ねえ、あんた今からあたしが木を生やしたらそれに乗って景色見れる?」
「それぐらいなら」
「そう」
今は意地を張ってる場合じゃないので勇者にあれこれと尋ねて行動する。別に勇者を木の上に追いやって逃げようとか思ってない。トールもいるしね。
なので、勇者の返事を聞いてちゃっちゃと種を植えて異能を使う。
「あら?」
「どうかしましたか?」
「なんかあんまり伸びないんだけど」
目の前で育つ木はそれなりに育ってはいるんだけど、ある程度成長させると何かに邪魔されているかのように伸びなくなった。
「何でだろ?」
「……あの、リュリュ様。実はこの街の近くに迷いの森があると聞いたことがあります。今回はその森の調査もすることになっていて」
「ここがその森?」
「そうなるかと」
「出られる?」
「今のところ出て来た者は居ないとか」
「……」
「……」
「……」
もう一回異能を使い木を育てる。
「……ねえ、何でもっと早くそれ言わなかったの?」
「すぐに終わるだろうと思っていたのと、言う前にリュリュ様が走って行かれたので言う暇がなく……」
またあたしのせいか!
チクショウあたしが育てた木は上の方から枯れてきた。こんなの初めてだよ。
それならばここに元々生えている木ならばと使ってみたが、こっちにはあたしの異能が通用しなかった。
ちなみに勇者にはここに生えてる木に登ってもらったけど、見渡す限り木しか生えてなく街なんか見えないそうで完全にヤバいやつじゃん。
「他の人たちはここに来る?」
「そのはずですが、リュリュ様がどちらへ行かれたのか分からなかったためにあちこち探しているので時間が掛かる可能性があります」
「……トールは?」
「うーん。こんなことになると思ってなかったから三人には宿で待っててって言っちゃった」
「……ねえ、ここって何か出たりする?」
「何かあれば全力で倒しますので安心してください」
安心できるか!
勇者の返事に何とも言えない気持ちになる。
というか、迷いの森って何さ。何で異能も通用しないのよ。一応気になって浄化の力を使ってみたけど何かあるって訳でもなかったので魔族は関係なさそう。
「とりあえず移動しましょう」
「どこに? 遭難したら動かない方がいいんじゃないの?」
「それはそうかもしれませんが、この森の調査は幾度となく行われているのに戻ってきた者は居ません。なのでどこに居てもそんなに変わらないかと」
つまりあたしたちが三人集まれただけでも僥倖ってこと?
「勇者って魔法使える?」
「身体強化ぐらいなら。それ以外でしたらアマンダやカナリアの方が得意かと」
「じゃあ、さっきアマンダが持ってた移動用の魔法陣は?!」
「……持っていません」
「何でよ! 役立ず!」
「リュリュ落ちついて。とりあえず勇者の言う通りに移動しよう。ここじゃ野宿になったって落ちつけないから」
「……でも」
確かにトールの言う通りなんだけど、日頃の鬱憤を晴らせる機会なんてそうそうないんだもん。
あと、トールも勇者のこと勇者って呼ぶのね。
「そうね。食糧とかは何とかなるし、野宿になったとしてもあたしに任せて」
「どうやって?」
にこりと笑って返事をせずに歩き出した。
カナリアのところで買ったクマのことはカナリアがすでに勇者たちに話しているかもしれないけど、何となく聞かれたくはない。もし、トールに言うことがあってもそれは勇者の居ない時にしたい。
「リュリュ手」
「手?」
「転ぶといけないから」
「そうね」
差し出された手を握ろうとしたら勇者がいきなりあたしたちの間に入ってきた。
「なに?」
「いえ、あの……」
「邪魔。手を繋ぎたいのならトールと繋いで」
というか剣持ってるんだから近くでうろうろしたら危ないでしょうが。
「僕はリュリュだけでいいよ。それより勇者は何かあった時に戦うんだから前お願いするよ。僕もリュリュも戦えないんだし」
「トール戦えないの?」
「僕は回復役だよ」
トールが回復役ならじゃあ、あの神官は何でいるんだろ? 神官も攻撃するの?
よく分からないが、とりあえず勇者を前に歩かせてトールと一緒に後ろを歩き出した。




