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「どうぞ」
「どうも」
「……」
タクランさんが淹れてくれたお茶のいい匂いにリラックスしたくなるが、目の前の面子に全然リラックス出来ない。
あたしの目の前にはこの世で一番会いたくなかった勇者。その右隣にはアマンダ。アマンダの反対側には神官だと名乗った背の高くほっそりとした男性にその後ろにカナリアさんと強そうな男性。
あたし? あたしは一人で座ってますよ。タクランさんもお茶を出したら出て行ってしまったし。ここにあたしの味方はいないのかしら?
「あれ?」
勇者一行のキラキラしい姿にばかり目を奪われていたけど、部屋の隅に見慣れた人たち。もう一度勇者一行を見る。
「トール?! それにクミンさんも、シルシュさんも!」
「おい、俺は忘れてるのか?」
「……ノヴァのことももちろん覚えてるわよ」
「なんだよその間は。ていうか、髪さらに短くなってんじゃないか」
「いいじゃない。似合う?」
ただ、ノヴァは何て言うかトールについてこなさそうだっていうか。
ノヴァは何て言うか自由人だからお屋敷を辞めて冒険者になっててもおかしくないような気がしていたんだもの。
「それにしても、なんでみんなここにいるの?」
「リュリュ様そろそろよろしいでしょうか」
どういうことだとみんなに近付くといつの間にか勇者が隣にいて悲鳴を上げそうになったが、どうにか我慢出来たあたしを褒めてあげたい。
「そうね。トール一緒に座ってくれるわよね?」
「そうだね」
にこりとトールに向かって微笑みかければトールも同じように笑って勇者の横を通り過ぎる。
これぐらいの意趣返しいいわよね。
あんたたちよりあたしはトールたちの方を信用してるんだから。
二人仲良く座ると勇者の眉が少しはねたような気もするが、気のせいでしょ。
「……リュリュ様言われた通りに仲間たちを集めました。これからは我々と、行動を共にしていただきます」
「待って、トールたちもこの人たちの仲間なの?」
この場に居るってことはそうなのよね。
「正確に言うと僕だけだね。シルシュたちは僕に付き合ってくれてるだけ」
隣にいたトールに聞くとすぐに答えてくれたけど感情が追い付かない。
あたしは危ないことに首を突っ込みたくない。けど、トールは体が弱いのに今も烏梅様たちのところでゆっくりしていた方がいいんじゃないの?
「僕は大丈夫だから。それよりもリュリュ怪我してる。今治してあげる」
「え?」
治すってどうやってと思ったらトールの手が伸びて来てあたしの手首を触るとぽわっとあったかい光がしたと思ったら痛くなくなっていた。
試しに固定した腕を動かしてみても全然痛くないので包帯を外すと内出血も消えていた。
「すごい……」
魔法? それとも異能? どっちだろ? と考えていると顔にも手が伸びてきたのでこっちも治してくれるのかと顔を寄せると向かい側から咳払いが聞こえてきた。
そういえば勇者たち居たんだっけ? えっと、何の話してたっけ?
「顔はまた後で治してあげるよ」
「よろしく。あ、そうだ。カナリアさんに謝らないといけないことがあったんだった」
「あたしにですか?」
「うん」
また忘れるところだった。
「ほら、前にカナリアさんのところで色々売った時に光る宝玉みたいなの紛れ込んでたんだけど」
「! それはまだ持っていらっしゃるのよね?!」
「盗賊に襲われて盗られちゃった」
何でこの人が反応してるの? というか、勇者たちの顔が強張っているからもしかしてあれが危ない奴って知ってた?
本当はあたしが渡したんだけど、念のために盗まれたって言ってよかったかも。
「それはどこでいつだ?」
「えっと、ここに来る前に……多分一月か二月ぐらい前?」
日記とかつけている訳じゃないから正確な日付までは分からないけど、ここに来てからは一月は経ってるはずだし、勇者の仲間の強そうな男の人に聞かれるがままに答えた。
「そいつらの特徴は覚えてるか?」
「覚えてない」
さっさと逃げたかったし、もう関わることもないだろうからとすぐに忘れてしまった。
「あれはとても重要な物だったんですわよ! あなたさっさと思い出しなさいよ!」
「そんなこと言われても……」
「アマンダそれよりも聖女様がどの辺りで襲撃に遇ったか調べて兵を派遣する方が先です」
「モンスパル、ですが……」
自分から話を反らしたんだけど、話が長くなりそうな雰囲気にいつ終わるのかとうんざりしてきた。
こいつらが来たせいで今日作る分の野菜も育て終わってないし、薬草だって作らないといけないのに。
わーわー騒いでる勇者の仲間たちは放っておいてトールに声を掛ける。
「トールはどうしてこの人たちと一緒なの?」
「リュリュに会えるかなって思って」
「そうなの? こっちに戻ってくる時に挨拶していけばよかったわね」
玲鈴様に捕まったら長くなりそうだと避けたんだけど顔ぐらいは見せておけばよかった。
「うん。二人共寂しがってたからまた顔を見せてあげると喜ぶよ」
「そうだね」
「リュリュ様」
「うるさい今トールと喋ってるの」
「あなた、勇者様に向かって!」
「アマンダやめなさい!」
ガタンと立ち上がったアマンダに神官の人が肩を押し留めている。
「あたしは行きたくないの」
「まだそんなことを言いますの?! もう我慢なりませんわ! モンスパルおどきなさい! この女の足か腕折ってしまえば大人しくなるはずですわ!」
「うわっ……」
なんて野蛮なの。めちゃくちゃ怖いんですけど。
「リュリュ様には指一本触れさせません」
「信じられないわ」
「おい、聖女様よ。いい加減にしてくれないか? さっきから黙って聞いてりゃあれも嫌これも嫌ってあんたいくつだ? まるでガキのワガママじゃねえか」
強そうな人がじろりと睨んできた。な、何よ怖くないんだからね!
「少なくともあなたより若いわ」
去年成人したとはいえ、前世からしたら全然子どもな年齢だもの。
「ねえ、リュリュ」
ぐいっと服を引っ張らないれてトールに何だ? と視線を向ける。
「リュリュが怖いのは分かるよ。僕だって怖いし。でも、僕はまたリュリュに会えて嬉しかったんだ。リュリュは?」
「そりゃあたしだって嬉しいけど」
こんな状況じゃなかったらね。
「なら僕たちもリュリュを守るために頑張るから一緒に行ってくれる?」
「それは……」
トールに言われたら断りづらい。
どうしようか。




