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「リュリュ! 聞いてくれ!」
「わっ! ど、どうかしましたかタクランさん」
温室で水やりをしていたら鎧姿のままのタクランさんが走りながらやってきた。
びっくりし過ぎて水が服に掛かっちゃった。後で着替えないと。
ガシャガシャ凄い音してるけど、気にならないの?
頭の鎧の部分は外してあるけど暑いのかタクランさんの頬が薔薇色になってセクシーだ。
「ああ、あったとも! 今しがた勇者の仲間がこの街に来てくれたんだ!」
「えっ?!」
今なんて?
なんか不穏なこと言ってなかった?
「凄く強くてこういう戦い方もあるのかとかなり参考になった! 晩餐に招待したら応じてくれた! しばらくはこの館に滞在して魔族を退治してくれるそうだ! リュリュももちろん会うよな? 晩餐にはリュリュの席を用意しておくから楽しみにしておけ!」
「あ、ちょっと!」
もっと詳しいこと聞きたかったのに行っちゃった。
言いたいことだけ言ってさっさと行ってしまう姿はまるで嵐のよう。
その姿だけ見たらいいんだけど、タクランさんが言ってた言葉は聞き捨てられない。
勇者じゃないけど、勇者の仲間がきた。
絶対に会いたくないんだけど、タクランさんは晩餐に出席するように言ってた。
マナーを理由に断れないかな? まだ片手使えないから見苦しいところがあるとか言ってお願いしてみようかな。
というか、今さらだけど変装した方がいい? あ、名前!! どうしようきっとタクランさんが善意で紹介してくれて名前呼ばれちゃう……。
どうしてあたしは偽名を考えておかなかったんだ……。
カツラ被る? そしたらタクランさんにツッコまれちゃうわよね。
こんなことになるなんて思ってもみなかったからどうしたもんか。
ていうか、あたしのことは秘密にしておいてって頼んでたのに! どうして。勇者の仲間の出現の前にはあたしのお願いごとは簡単に忘れられるような物だったのかと悲しくなる。
あれこれと手を尽くしてみたけどダメだった。
あたしの食事だけ食べやすい大きさに切ってあるとか、英雄の前は緊張すると言っても大丈夫だからとあっという間に着替えさせられて食堂に連れて来られた。
ダメ元で体調がと言っても無視されてしまって気が付けば用意された席に座って勇者の仲間が来るのを待っている。
何でこうなったんだっけ?
タクランさんがあたしの意見を聞かなかったから? それともこの街に来た時点で間違っていたとかかな。
「ああ……」
「アマンダ様とカナリア様のご到着です」
神様どうかあたしが聖女だとバレませんように。




