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57 勇者視点2

「何か変だ」

「どうかいたしましたの?」


 仲間のアマンダの声がするがそれよりも森の空気が変わったことの方が気になる。


「みんな武器を」

「え?」 

「もしかしたら戦いになる」


 そう言うと誰かが息を飲む声が聞こえてきたが、すぐに仲間たちがガチャガチャと金属音を立て臨戦態勢になったので息を飲む音は気のせいだったかもしれない。


「どこだ?」

「わからないないがさっきまでと明らかに違う」


 セルジオの声にクロッチェが居てくれたらと思う。


 彼は狩人だから斥候としても優秀なために居てくれたら色々と役に立つが、今は効率よく動けるようにと単独行動をしてもらっているのがこんな時に悔やまれる。


 トールを仲間にしてからリュリュ様の行方をそれとなく探ってみたがすぐに消えてしまう。


 もしかしたら別の国に行ってしまったのかと思いクロッチェだけを置いて泣く泣く戻って来たが今頃見つかっただろうか?


「セルジオ敵なら全て倒せばいいだけですわ」

「おいおい、ここは森だぜ。全部燃やすなよ」

「分かってますわ!」

「モンスパルはカナリアとトールを」

「もちろんです」

「あたしも戦えます!」


 カナリアが元気よく答える横で新しく仲間になったトールに目を向ける。


 トール


 線が細く体が弱いということを考えると今まで録に戦ったことはなさそうなのにこの旅程に文句一つなく涼しげな顔をしている。


 しばらくリュリュ様と一緒に行動してお互いの名前を呼び捨てにするほど仲良くなってあまつさえ同じ屋根の下でしばらくの間生活していた運のいい男。


 思わず歯噛みしてしまいそうになればトールの付き人の三人、クミン、シルシェ、ノヴァがすくさまこちらに殺気を飛ばしてくる。


 この三人はトールが危険な旅に出るのなら絶対について行くと言って聞かなかった。この様子を見るとかなりの手練れとみたがそんなこと口にしないのでこちらからも聞くことはしていない。


 戦力が増えるのはいいことなはずなのにどうしてだかトール含めて気に喰わないのはどうしたものか。


 そういえばこの三人もリュリュ様と一緒に行動していたのだったか。ムカつく。


 こんなことを言えばモンスパルに仲間なのだからと怒られてしまいそうだし、神託もあるからトールを追い出す訳にもいかないから面倒だ。


「このままここでこうしていても埒があきませんのでとりあえず移動しましょう」

「そうだな」


 何が出てくるのか。


 獣ならば今夜のおかずが豪華になるが人だったら面倒臭い。対応はセルジオかモンスパルに任せよう。


 遠見の異能か気配察知出来る者が居てくれたら楽だったのに。


「な……」

「ひ、酷い……」

「トール様見ちゃいけません」


 そう思いながら歩いているとバサバサと鳥が羽ばたく音がする。


 夕飯用にと皆が考えてその場所にまで来たドキュメントそれは視界に入った。


 ひしゃげた馬車にあちこちに散らばる人間の死体。


 烏がそれをつつく姿に思わず目を反らしたくなる。腐臭が漂ってないことだけは幸いだが。


「うっ……」

「何があったんだ?」


 どれくらい前にこの者たちがやられたのか調べなくてはならないが、アマンダとカナリアが口元を押さえ顔色がかなり悪くなっている。彼女たちを先にどこかで休ませなければと思うより先に動く影。


 何だ? と思い視線をそちらに向けるとトールの付き人のシルシェとノヴァの2人。


「まだ新しいな。鳥がつついてるのもまだちょっとだけ」

「身なりからして盗賊か何かだろう。大方馬車を盗んだ後に獣か何かにやられたのか? 見ろ腸がえぐられてる」

「でもよ、こっちのやつは縦に真っ二つに裂いてあるのか? こんなこと出来る獣がいるか? しかも死体を食わずに放置するってどんだけタチ悪いんだ」

「じゃあ、何がしたって言うんだ」

「知るかよ」


 男2人がああだこうだと話し合う姿に呆気に取られそうになってるとアマンダとカナリアは早々に離脱した。


 クミンとか言う女はトールに死体を見せないようにといつの間にか木陰へと連れてっている。


「おい、勇者」

「……なんだ」


 村人のように様を付けろとは言わないが役職名で呼ばれるのもムカつく。しかし、名前をこいつらに呼ばれるよりはマシかと己を納得させる。


「俺たちこっちのこと分かんねえんだけど、この国では盗賊の死体どうすんの?」

「生きてるなら役人に引き渡すが死んでるなら一応報告だけはしておく」 


 ここから一番近い街は徒歩で数日だ。


 その間に獣に喰われて骨になったところで盗賊の末路なんて誰も気にしない。


「じゃあ、弔ってあげてもいいよね?」

「トール様!」

「え?」


 クミンに木陰に連れてかれたはずなのにいつの間にか隣に居た。


「僕たちが弔ってる間誰か役人に報告に行ってくれますか?」


 それは問いかけのような言い方をしていたが命令だ。


 優しく儚げな印象だが、こいつも人を使う人間だ。そのことが無性にイラつかせる。


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