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「うっゲホッ」

「風邪ね。今日はもう休みなさい」

「うへぇ」


 ヘレンの診断に思わずうめき声が出た。


 ここのところずっと忙しくてお風呂も入る抱け入ったら体も録に拭かずに眠ってしまったのが悪かったのか、慣れない生活に体が音を上げてしまったかその両方か。


 とにかく体調を崩してしまった。


「じゃあ、後で何か食べられそうな物持って来るね」

「ありがと」


 ヘレンを呼びに行ってくれて診断が下りるまでずっとそばに居てくれたミランダにお礼を言って2人の背中を見送った。


 他の街に行った伝令役の兵士たちが減って少しは楽になれるかと思ったのに。


「……休みになるんだったら元気な時がよかった」


 せっかくの休みなのに風邪引いてるとなんだか負けた気分になる。


 何かしたいけど悪化したら嫌だしさっさと寝ちゃお。




◇◇◇◇◇◇




「~~!」

「……!」 


 何か騒がしい。


 むくりと起き上がるとベッド脇のチェストにいつの間にかフルーツの盛り合わせと薬が置いてあった。


 ミランダが持って来てくれたけどあたしが寝てたから起こさなかったんだ。


 寝る前より多少はマシになってる気がする。


「けど、それより騒がしいのは何で?」


 寝てた方がいいのは分かってるんだけど、こうも騒がしくされちゃ気にならないって方がどうかしている。


 キィ


 蝶番が軋む音にそろそろ油をさす時期なんじゃ? と外に出る。


 声がするのは別の階だ。


 急患? それとも喧嘩か?


 いや、気分だったとしてもここは使用人たちの部屋の方だからここまで聞こえてこないはず。なら喧嘩?


 喧嘩だったら巻き込まれたら嫌だから戻った方がいいかな? いや、でも、一回気になったんだもんちょっと様子だけ見て問題なさそうなら帰って寝よう。問題ありそうだったら誰か呼んでから戻ればいい。


 そう思いながらゆっくりと歩いていたらドカンだかバコンだかよく分からない爆発音と共に目の前の壁がなくなった。


「は?」


 前もこんなことあったようなと壁がなくなった方に目をやるとバサリと嫌な音が聞こえばっとその場から飛びすさったらあたしが今までいた場所に黒く丸太のような腕がにゅっと飛び出してきて空を切った。


「えっ魔族?!」


 ガーゴイルを大きくして黒く染め上げたかのような魔族は空を切った自身の手を不思議そうに見つめている。


 騒がしかったのはこいつのせいだったのか。


 最近はわりと大人しかったのにどうしてこんなところにまで来てる……というか、騒がしかったのはこいつのせいでここに居たら危ないじゃん。


 くるりと魔族に背を向けて走り出す。


 このままここにいたらまずい。やられる前にどこか安全な場所まで逃げなくちゃ。


 部屋は駄目。同じ階だし、部屋に逃げ込むところを見られて追いかけられたら逃げ場もない。


 幸い進んでいた方向以外にも階段はある。そこから逃げたらいい。


「げっ」


 動いた。急げ。


 チラリと後ろを見ると魔族の目が赤く光り、あたしのことをしっかりと見つめている。


 その視線にぞくりとしてスピードを上げる。


 熱のせいかふらふらするけどこれくらいなら平気でしょ。


 兵士がいるところはと砦の中の最短距離を思い出そうとしているとあたしのすぐ横を何かが物凄い勢いで通り過ぎ再び爆発音と瓦礫が飛び散っていくつかの破片が飛んできて痛い。


 何? あの魔族の攻撃?


 怖い。後ろなんか見てられられるか!


 後ろも見ずに一目散に逃げ出した。


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