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 あれから1ヶ月が過ぎた。


 魔族は襲ってくるものの、最初の勢いはどこに行った? と言いたくなるぐらい襲撃は少ない。


 おちょくってるのか?


 それから援軍なんだけど来てない。援軍を求めて行った兵も戻って来ない。何かあったみたいだけど、情報が入ってこないから全く分からない。


 なので避難所でじっとしてたら精神的にかなりキツかったかもしれない。


 すぐにこっちにきて正解だったかも。


 薬草園も人の出入りが多いからかまだ気付かれてないっぽい。


 こういう時薬草はいくらあっても困らないからね。


 ついでにいつくか見たことのない薬草は種だけちゃっかりといただいた。ちゃんと増やしてるんだし盗んだなんて言われないと思う。


 食糧もまだたっぷりあるから長期戦になっても平気らしい。


 今は街の外に出るのが難しいけど魔族が逃げるかしてくれたら他の街に行けるらしいけどしばらくはこのままだとジルが言っていた。


 あたしたちも余裕が出てきて交代でなら休憩できるようになってきた。忙しのは忙しいけど魔族が最初程の勢いがないおかげだ。


 街の様子は酷いっちゃ酷いけど、まだ使える建物はあるし、兵士の付き添いがあれば夜間に戻る人もいるらしい。


 あたしは忙しく働いてたからジルの受け売りなんだけどね。


 もうちょっと落ち着いてくれたら様子を見に行けるかも。見に行ってもこの街に思い入れとかはないんだけど一応宿とか見ておきたい。お金払ったのに結局一晩も泊まれなかったんだもん。


 でもこの場合は返金してもらえるのかしら? 確か宿の隣の建物吹っ飛んでたし、宿も無事じゃない可能性の方が高いわよね。


 諦めるしかないか。


「リュリュ!」

「はーい。ヘレンどうかしたの?」


 この一週間で完全にヘレンの助手となった。


 他の医師に何か頼みごとされたりするんじゃないか? と思ったこともあったが、そんなことは一切なかった。


 あたしと避難所からやって来た人たちに聞いてみたけど、他の人はちょくちょく声を掛けられたりちゃっかり恋人を作ったりしていた。


 羨まし過ぎてジルにいい人いたら紹介して欲しいとお願いした。断られた。


 ジルには恋人と別れて一生モテなくなる呪いを掛けてやった。


 詳しく話を聞いたらもうすぐ結婚するってさ別れろ!


 何であたしには恋人が居ないのよ! 神様ここに居る間だけでもいいからあたしに強くてかっこよくてお金持ちの恋人を今すぐ用意してください。


 今まで村のためにと頑張ってたのに勇者なんかを寄越しやがった恨みは忘れますので。どうか何とぞ。


「リュリュってば!」

「はいはい」


 今日も今日とてあたしの名前を呼ぶのはヘレンとジルぐらい。


 なんて寂しいんでしょう。

 

 というか、ヘレンってばあたしのこと呼び過ぎでしょ。1日に何回呼べば気が済むのよ。


 今度数えてみようかな? そんな暇あるかな? いつも数えようと思っても忘れちゃうのよね。


「もう、一体何?」

「あ、やっと来た」


 ヘレンの側にはミランダがいた。


 珍しい。ミランダはいつもナルス医師に付きっきりなのに。


 ナルス医師はここの最年長医師で長いひげがどことなくサ●タさんを彷彿とさせる先生だ。


 最初に見た時は忙しいにも関わらず赤い服を着て欲しいとお願いしに行くところだった。


「ああ、うん。それがね、」


 話しによるとミランダに宛がわれた部屋が水漏れしたらしくあたしと同じ部屋を使って欲しいって言われた。


 あたしたちはこの街の砦にある使用人たちが使う一角で1人1部屋使わせてもらってる。


「他に余ってる部屋があったはずですよね? そこは?」

「怪我人を運び入れてしまって空き部屋が段々と減っていてね、空き部屋は取っておきたいんだ」

「なるほど」


 でもベッドは1つしかない。それはどうするんだ? と聞いてみると、ここの使用人たちが既に運び入れているんだとか。


 既に決まっていてあたしの意見なんて必要じゃなかったのなら命令と同じじゃないの。


 もう既に決まってると言われてムカつくけど、ミランダからしたらこんな状況で部屋が使えなくなってここであたしにまで断られたらかなりショックでしょうね。


「……分かった」

「そうか、じゃあ、今日から頼むな」

「ありがとうリュリュ!」

「いいえ」


 あとはミランダが荷物を運び入れたら終わりらしい。


 もっと早くに言ってよ……。


 クマをどこかに隠した方がいいかな? 今はベッド脇に置いてあるんだけどファンシーな存在だから子供っぽいとか思われちゃうかも。


 というか、あれの収納知られたくないからやっぱり隠そう!


 どこがいいかしら?


 隠す場所なんてなかった。諦めてうちの家に続いてる家宝みたいなクマだと言っておいたけど、信じてくれたかどうか。


 でも、今のところクマが触られた形跡もないし、ミランダも興味なさそうっていうか、ミランダもあたしもだけど、今は部屋には寝に帰ってるだけって言うような状態だからそんな暇もないっていうのが正しいのかも。


 せめて援軍が来てくれたらあたしたちも避難所に戻れるんだそうだけど、それもいつになることか。


 今度また他の街に援軍を呼びに行くらしい。


 今度は隊列を組んで複数の街にいくからどこかで何かあってもどれか1つくらいは援軍を呼んでくれるはずだってジルが教えてくれたんだけど、それってあたしに話していい情報なの?


 聞こうかとも思ったけど、あたし忙しかったから聞き逃しちゃったのよね。


 でも、その話も数日も経てば砦中に広がっていたから別に聞かなくてもよかった。


 援軍を呼びに行く伝令役たちが減るから砦の中は忙しくなるらしくて、あたしたちも医師の手伝いだけでなく雑用まで手伝わされることになるらしい。


 ただでさえ忙しいのにこれ以上仕事を増やすのか?! と詰め寄ったら街の人や避難所の人たちに募集を掛けるけど正直人が来るかは不明だそうで何とか報酬の上乗せだけは無理やり取り付けた。


 交渉した砦の人がちょっと泣いてたような気もするけど気のせいでしょ。


 なのであたしは砦の部外者が入っていいの? と戸惑いそうな場所以外をあちこち走り回って色んな人に顔を覚えてもらえたけど、まだ誰にも恋人になりたいっていう立候補者はいない。


 ねえ、どうして? あたしの隣はいつでも空いてるわよ?


 それとも忙し過ぎた? 色んな部署を走り回ってて話し掛けるチャンスがなかったとか?


 もう一回交渉して無理やりにでも休日をもぎ取ろうかしら?


 いや、お金の交渉で泣かせたし、それはやめておこう。


「ジルあたし薬草園に行ってくるね」

「お、じゃあ、昼寝が出来るな」

「あのねぇ」


 昼寝しに行く場所じゃないし。


 あんたもあたしと一緒に行動してるからあちこち走り回って疲れてるのは分かるけど、堂々とそういうこと言っちゃうのどうかと思うの。

 

 あんたがのんびりと寝てる間に魔族と戦って傷付いて運ばれてくる兵士はいるんだし、まだまだ危ない時だって言うのに。誰かに聞かれたら怒られちゃうわよ?


 ジルだけが怒られるのなら構わないけど、あたしまで怒られるのは嫌だから是非とも離れたところで見つかってね。


 薬草園は元々大事な場所らしくて結界が張ってあるんだそうで、あそこの中にいる間は安全らしい。


 だからあたしたちもこんな会話をしていられるんだけど。


 それにしたって呑気過ぎる。元々ここが観光地でスリや酔っぱらい相手にしかしてなかったとしてもジルは少々どころじゃなくかなりいい加減だ。


 まあ、そのお陰であたしが異能を使っていることはまだバレてない。


 若干増えてる? と不審に思っている人も居るには居るみたいだけど、忙しいし、減るんじゃなくて増えているので不審に思っているものの、今のところスルーされている。


 あんまりやり過ぎると今より不審がられると思うのでその内やめるか、もっと異能を使う間隔を開けていくかにした方がいいだろうけど。


 薬草園に入ると外の喧騒が一切聞こえてこない。


 これが結界の効果なのかと分かっていても毎回驚いてしまう。


 それにしても一月も魔族と戦っているのなら勇者が駆けつけて来そうなもののその姿は見えないし、噂も全く聴こえてこないのが不思議。


 本当にここ以外も襲われている可能性があるのか、まだこの大陸に戻って来てないかのどっちか?


 あたしとしては来ない方が嬉しいんだけど、街の状況とか考えるとどうして勇者たちは現れないのかとモヤモヤしてくる。


 会いたくないけど会ったら絶対に殴ってやる。

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