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宿に戻ると既に誰も居なかった。
魔族たちの攻撃が始まったみたいであちこちから爆発音と悲鳴なんかが聞こえ火の手も上がっているのか煙が凄い。
宿の部屋に入って慌てて荷物を持って外に出るがあちこちが瓦礫の山になっていて危ない。
でも、このままここにいても魔族に殺されるか煙か火事で死んでしまう。
「うそっ」
意を決して外に出るとすぐ近くで爆発が起こって転びそうになって振り向いたら今までいた宿が半分くらいなくなっていた。
ヤバい。
このままじゃ殺されちゃう。何とかしなきゃ。
もしラノスの言うことを聞いて一緒に行動していたらこんな目に遭わなかったかも。
でも、こういうことに巻き込まれたくないって逃げ出したのはあたしだ。
だったら自分でなんとかしないと。
爆発音はすぐ近くでしたり遠くでしたりとひっきりなしに聞こえてくる。
あたしに出来ることは何だ。
豊穣と浄化だ。
そういえば前は魔族を殺してから浄化の力を使ってみたけど生きたままは出来る? 出来ない?
やったことはないけどここまま死ぬのなんて嫌過ぎる。
一か八かやってみよう。
飛んでる奴は届かないしその辺の木を成長させて近付くのは自殺行為でしかない。
地上をうろついている奴を狙おう。
爆発と飛んでる魔族に見つからないように姿勢を低くして移動するけどあたしは大事なことを忘れていた。
この街に来る時に温泉に入るからとカツラを外していたから紅茶色の髪がかなり目立つってことを。
姿勢をいくら低くしていたところで上空からだと目立つってことを気付かなかった。
「どこだろ……ん?」
何か暗い?
さっきまで明るかったのに日が陰った?
「っ!!」
空を見上げようとしていきなり視界いっぱいに赤くてかなり太い腕らしきものが映り咄嗟に異能を使って木を生やして距離を作るも筋肉なのか魔法なのか分からないけど木があっという間に砕けた。
「な、な……」
「ニンゲンだ。コロセ!」
「やっ!」
浄化だ異能だなんて言ってる場合じゃない。
本能的な恐怖に悲鳴を上げて逃げる。
「待て!」
魔族が追いかけてこようとするのをその辺の植物を異能を使って成長させて逃げる。
「っ! な、何でこんなことに……」
のんびりと観光するはずだったのに!
瓦礫を避けてまだ壊れていない誰かの家を走り抜け安全な場所を求めてさ迷うものの兵士の姿なんてその辺に転がってまるで戦場だ。
どこもかしこも危なくてこの街には安全なところなんてもう残ってないんじゃないかって思えてきた。
どこかで休憩したいけどこうも魔族が襲ってきたんじゃ休めない。
どうしたらいいの?
「た、助けてくれ……」
爆音の最中風に乗ってどこからか聞こえてきた男性の弱々しい声。
最初は聞こえなかった振りをして通り過ぎようとした。
だけど、何度も聞こえる悲鳴に段々と弱々しくなっていく声に無視するなんて出来るはずがなかった。
「……ああ、もうっ!」
気がつけば声に背を向けていたはずだったのに声のする方に向かって走っていた。
「これであたしが死んだら化けて出てやる!」




