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「今からですか?」
「うん。居心地がよかったんだけど、あたしも旅してるから」
「旦那様も奥様もいつまでも居ていいとおっしゃってましたのに」
「うん。ごめんね」
クミンさんにトールから報酬をとお願いして荷物をまとめる。
玲琴様からもらった服はやっぱり持って行きたい。
幸いあのクマの鞄があるから全部入る。入るけど全部入れるの大変だわ。
面倒臭くなってきちゃったから適当に投げ入れてるとバタバタと慌ただしい。
この間の烏梅様のお兄さんみたいな人でも現れたのだろうか? それにしては話し声みたいなのは聞こえないけど、一応隠れておこうかな。
クマの鞄の中には魔王の力の欠片が入ってるんだし、危ないことには近寄らない方が絶対にいい。
それにしても、勇者も魔王も避けてると思ってたのにしっかりがっつりと関わってたなんて。
「リュリュ!」
「きゃ!」
今度はベッドの下にでも隠れようかなと変な体勢の時にいきなりドアが開いてびっくりした。
「出てくって本当!?」
「え、ええ……結構長くいたし、そろそろ旅の続きをしようかと」
まさかトールに勇者と魔王から逃げてますなんて言えないから適当に誤魔化すしかないんだけど、変な体勢の時にいきなり来たからびっくりし過ぎてまだ体勢が……。
「もっと長くいてくれてもいいんだよ」
「ありがと。でも……」
この家の人たちは優しいからもし、あたしが本当のことを言って匿って欲しいと言っても匿ってくれるだろうけど、そのせいで世界中の人たちを敵に回させてまで守ってもらう訳にはいかない。
体勢が楽になるように居住まいを正し、にこやかに別れを告げよう。
「あたしはまだまだ沢山の国を見たいし、色んな国の美味しい物を沢山食べたいし、知りたいこともいっぱいあるの。ここのことを嫌いになった訳じゃないよ。烏梅様も玲琴様もこの屋敷の人たちも優しくしてくれるし」
「それなら……」
「でも、ここはあたしの居場所じゃないの。あたしにとってここは優しいだけの場所。どっちかって言うと優しい夢を見ているような感じかな?」
「いい夢ならずっと見ていたくならない?」
「んー。見てたいけど、無理でしょ」
ああ、本当ここの人たちは優しいな。勇者だとか魔王とかがなければこのままここに居たいぐらい。
トールはまだ何か言いたそうにしてるけど、あたしもこれ以上は譲れないと言う意思を込めてにっこりと笑う。
「今までありがとうございました」
ブクマ、評価、いいねありがとうございます(。・x・)ゞ♪




