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あたしがショックで固まってる隙に玲琴様のお兄さんはあたしを洞窟から連れ出すと、元来た道を戻り始めていた。
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください! ここに奉納するのはダメでどうしてあたしが持つのはいいんですか?!」
「君は聖女だろ」
「えっ」
振り返ってこちらを見る玲琴様のお兄さんの目は呆れたと言いたげでどこでバレたんだろうと焦りが出る。
「ここは神域でもある。それを封じる為に幾重にも神聖な力をここに張り巡らせている。ここに力のない者が来たら発狂する。玲琴は力がないからこの家の外で育てられ、大きくなってから家の辺りぐらいまでは動けるようになったが、ここまで来れるのは神官としての能力が高いか、勇者か聖女ぐらいのものだ。君は神官ではなさそうだし、勇者のように剣を振るうには細過ぎる」
「……れ、玲琴様はいつあたしが聖女だと」
ここに来る時、烏梅様と流石だとか言っていた。
あれは絶対あたしのこと分かってた。勇者がどうのこうの言ってた時は探りを入れられてたんだと今になって気付く。
「それは知らん。妹から聞くといい」
玲琴様はあたしをどうしたいのだろ? あの勇者みたいに魔王封印に行かせようとしてるのだろうか。
それとも、聖女という肩書きに何か付加価値を見出だしたとか? もしかしたらあたしが異能を持っていることもバレてるんじゃないかと思うと玲琴様がとてつもなく恐ろしく感じる。
烏梅様は他の大陸とも取り引きするぐらいの大きな商家なんだもんあたしのことを知ってたっておかしくない。
玲琴様は恐ろしいが、トールたちといるのはとても楽しかったからもうちょっとだけ一緒にいたかったけど、このままここにいたらどうなるか分からない。
報酬と種だけもらったらお暇しよう。
◇◇◇◇◇◇
玲琴様のご実家から帰る道すがら玲琴様にどうしてあたしが聖女だって分かったのか聞こうとしたが、やめた。
知ったところであたしが聖女だってバレてしまったことに変わりはないんだし、玲琴様に当たってしまいそうで嫌だ。
息子が連れて来たどこの誰とも知れないあたしを物凄く可愛がってくれたこの優しい人にそんなことはしたくはない。
お屋敷に戻り次第報酬をもらって荷物をまとめてしまおう。
玲琴様が帰り道あれこれと話しかけてくれたけど、その内容は殆ど覚えてなかった。
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