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「ここだ」
「ここですか?」
玲琴様のお兄さんが示すのは山の中の突然現れた見上げる程に高い崖。その下にある洞窟の入り口。
入り口にはしめ縄みたいな縄が掛けられており、中に入れないのでは? と思って声を掛けたが、玲琴様のお兄さんの顔は至って真面目でどう反応したらいいのか分からない。
「何も感じないのか?」
「何を?」
あなたに困惑ならしてますが、それとは違うみたいですね。よく、分からないですし、帰っていいですか? あ、ダメですか。
「玲琴から聞いてたが、想像以上だな」
「はあ……」
玲琴様あたしのこと何て言ってたんだろ?
「中に入る。着いてこい」
「えっ」
入ってもいいの? びっくりして玲琴様のお兄さんを見たけど玲琴様のお兄さんはあたしに背を向けて縄を跨いで入ってしまった。
「えぇーっ」
本当に入っちゃったよあの人。この縄って入っちゃダメだからしてるんじゃないの? えっ、あたしも入るの?
玲琴様のお兄さんはとっとと中に入ってしまって戻って来る気配はない。
このまま待っていても玲琴様のお兄さんが戻って来てくれるか分からない。
「というか、あのタイプは戻って来ないわよね」
1人で待ってたって仕方ないし、行くしかないわよね。
「バチ当てないでくださいね」
縄を拝んでから意を決して跨いで中に入る。
中は暗いのかと思いきや等間隔に明かりがついていて中に入ってはいけない訳ではないらしくちょっとだけホッとする。
玲琴様のお兄さんの姿はすでに見えない。結構離されてしまったみたい。
「待っててくれたっていいじゃない」
ぐずぐずしてたのはあたしだったけど、それくらいの配慮はして欲しかった。
後ろに居ないと分かったらああいうタイプは怒って来るか、待ってましたと言わんばかりの態度で目的地で待って居たりする。
多分玲琴様のお兄さんは後者だと思うからゆっくり行っても問題はないでしょ。
それにしても玲琴様もだけど玲琴様のお兄さんも意味深に何かあるっぽいようなことを言ってるのは一体何なんだろう。
ここが魔王と関係のある場所だって言うのならまた聖女だとか何とか言われたりするのかしら?
もし、そうならさっさと逃げよう。あ、そういえばトールからまだ報酬もらってないや。
「お金は大事よねー」
この大陸で暮らすならカツラ買わないといけないし、浮かないように服も……服は玲琴様に買ってもらったのがいっぱいある。服はそれでもいいかもしれないけど、庶民の服よりは高そうなんだよね。
旅の服も何着か買ってクミンさんに頼んでた種ってどうなったかな? あ、あとそれから──
「遅かったな。道にでも迷ってたか」
「……いいえ」
「そうか」
洞窟の奥のぽっかりと広くなった空間に入ると玲琴様のお兄さんが待ってましたと言わんばかりの態度で待ってたからどう反応していいのか分からない。
玲琴様のお兄さんはあたしを気にした風もなく、台の上に乗った木箱を開けてみろと言う。
「あたしが開けていいんですか?」
「ああ」
古い木箱なので開けたら壊れるんじゃないかって心配なんだけど、壊れても弁償しろって言わないわよね?
無駄にドキドキしながら開けてみると──
「あれ? これって」
旅してる時に見つけた宝玉の違う色だ。
今度の宝玉は綺麗な紫色。
何でこれがこんなところに? と思っていると頭上から「見たことあるのか?」と声が降って来たので頷く。
「色違いのを3個持ってます。2回拾ってもう1個鞄を買う時に鞄の中に入っててお店に返しに行こうとしたんですが、ずっとお店閉まってて仕方ないから持って来ちゃいました」
今は烏梅様の屋敷の与えられた部屋に鞄に入れたままになっているが、それと同じ物がどうしてここに?
「それが魔王の力を封印したものだ」
「へぇあ!?!」
えっこれが? これ、色違いいくつも持ってるって言っちゃったんですけど。
冷や汗がダラダラと止まらない。
余計なこと言わなきゃよかった。
今からでも修正する方法ってないかな? 無理か。
「えっと、あたしが持ってるのってここに奉納した方がいいですかね」
「いや、その必要はない」
そう言って玲琴様のお兄さんはあたしに紫色の宝玉を渡してきた。
「えっ……」
「それは君が持ってるといい」
来なきゃよかった。
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