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クミンさんに光華国のおいしいお料理とかに色々聞こうと思ってたのにうっかり綺麗さっぱり忘れてしまって気付いた時にはそろそろのトール家に着くという時だった。
その頃には気まずい空気もなくなってトールとも敬語なしの呼び捨てに慣れた。あ、でも、トールっていいところのお坊ちゃまなら呼び捨てはまずいんじゃないの?
ちょっと気になって聞いてみたら大丈夫とのこと。
あたしは違う大陸でトールがお金持ちの家の人間であることを知らずに仲良くなり、こっちに来る時に説明して距離を取られかけたが、トールに今まで通りに仲良くして欲しいと懇願されたって設定で行くと。
でもね、それでもね、さすがにご家族の前で呼び捨てにするのはと固辞しようと思ったけれど、トールにかなりしつこく、そりゃもうしつこく大丈夫だからと言われてしまえば受け入れざるおえなかった。
こうなったらやけくそでやってやるしかねえと思ってた時期もありました。
「嘘でしょ…………」
「その気持ちは分からなくもないが、さっさと歩け」
「いやでも……これはさすがに……」
シルシェさんに背中を押されてもさすがにこんなご立派な門がある家に入れと言われて入れるほどあたしは図太くないです。門から家というか、お屋敷見えないし、お花いっぱい咲いてるし、門から伸びる壁なんてどこまで続いてんの? って聞きたくなるぐらいだし、あたし選択かなりミスったかもしんない。
「あの、家はこんなだけど、親は普通だし、親戚がうるさいかもしれないけどそこは割り切ってやって」
「そうですよ。こっちはお金払ってるんですし、リュリュさんには頑張ってもらわないと困るんですよ」
「うぐっ」
お金……。そうだ忘れるとこだった。それにここまでの旅費はトールたちに出してもらってる。ここで二の足を踏んでたら契約不履行で旅費返せとか言われたら足を踏み入れるしかなかった。
あたしが一人葛藤してる間にノヴァが門番の人に声を掛けて中に入れるようにしてくれていたみたいで余計なことしやがってとかは言わないよ。
「何で睨むの」
「何でだろうね」
中に一歩入れば色とりどりの沢山の花。見たことない花ばっかりだったので植生も違うみたいでかなり気を取られるが、今はトールたちに着いてかないと。こんなところに一人でいるなんて耐えられない!!
そうして黙々と歩いて連れて来られたのは離れの一室。あたし用にと与えられた部屋が広くてびっくりしたけどトールの客ならそうなのかなと着いてすぐにトールのご両親に会うのかと緊張していたけどご両親予定が立て込んでて会えるのは3日後らしいんですがお金持ちの家族って家族でもそんなに会わないものなの?
前世も今世もお金持ちの家に生まれてないから分からないのだけれどいくらなんでも寂し過ぎやしないか。そんなことをトールに聞いてみたら寂しそうに笑うので寂しいは寂しいらしい。
「そりゃ烏梅様も玲琴もお忙しい方だけどうるさい蠅が大人しくなったはずなのにまた騒ぎ出したから仕方ねえんでないの」
烏梅様っていうのがトールのお父さんで玲琴様ってのがお母さんだそう。どっちも美男美女だとかで今から緊張してる。うるさい蠅はトールの親戚や烏梅様の財力に群がる人たちのことらしい。
「そりゃそうかもしれないけど……」
「それに一旦は納得した蠅どもがトール様が帰って来てまた騒ぎ出したりしてるからまだ早い方だぜ」
なるほど色々と大変らしい。ノヴァにトールの両親に会うまで部屋からも出るなと言われて退屈だけどトールが遊びに来てくれるそうだからまあ、いいかなっと。
あと、ノヴァたちがトールに敬称を付けて敬語を使うようになって違和感が半端ないんだけど、いくら家族のように思われててもノヴァたちはただの使用人だからと言って本人たち的にはこっちの方が普通なんだとか。
というか、こっちで敬語を使ってないと使用人も御せないのかと蠅がうるさくなっちゃうからなんだとか。お金持ちって面倒くさいわね。
あたしが外に出ちゃだめなのも小うるさい連中がいるからだそうでそういった連中には全力で関わりたくない。ああ、でも、異能を使ったらそういった連中一瞬で黙りそうよね。使わないけど。
クミンさんはあたしに与えられた部屋に専属で付いててくれることになったラッキー。でも、ノヴァは用がある時だけトールさんと一緒にシルシェさんに至ってはこのお屋敷に着いてから一回も会ってない。
みんな忙しいのは分かってるけど、知らないところでじっとしてるのも息が詰まって仕方がない。籠ってる間にこの国のオススメのお店とか教えてもらおう。ついでにこの国にしか咲かない花の種が欲しいと言ったら不思議そうな顔をされたが記念に欲しいと言って無理やり納得してもらった。
「そしてあたしだけになった」
クミンさんは種をお願いしてるし、ノヴァとトールは用があるとかでさっさと出て行っていないし、シルシェさんも見てないので用意してもらった部屋にはあたし一人で暇。
部屋の中ぐるりと見回して一人でも出来ることってないかしら? と見たけれど、本とかチェスみたいなゲームなんて置いてないので暇を潰せそうな物がなかった。
「あ、そうだ!」
どうやって暇を潰そうか考えてそういえばローブに刺繍をしようと思ってたの忘れていたけど、暇になった今チャンスだわ。
針と糸を取り出してチクチクとやっていると庭の方が騒がしい。窓から覗いてもよかったけど目立つかもしれないから後でクミンさんに聞けばいいや。
そう考えて見に行かずにずっとチクチクとやってたからかもうちょっとで終わりそう。
というか、結構時間経ってるはずなのにクミンさん遅くない? 午前中に着いてお昼にトールが来て一緒にご飯を食べて、で種が欲しいってお願いしてもう夕方だ。種でそんなに時間が掛かるものなんだろうか?
久しぶりに戻って来たから親しい人と喋って時間を忘れてるだけよね? 戻って来るわよね? 戻って来なかったら晩ごはんテディベアに入れてる保存食になっちゃうのは仕方ないとしても明かりはどうしたものか。
日中は明るかったから気にしてなかったけど、夜の明かりはどうしたらいいの? 照明器具らしきものは見当たらないし、え、あたし夜明りなしで過ごすの? 辛いんですけど。
あの騒がしかった時に何かあったのかも。あの時ちゃんと外見ておけばよさった。クミンさんが早く帰って来ることを祈りつつどうしたものかと室内をうろうろする。
ちょっと顔を出すだけなら大丈夫だと思う。庭を見るのは禁止されてないし。あ、でも、外に誰もいなかったら結局は意味はないや。
ノヴァとトールは明日また来るって言ってから外出たって会えそうにないし、シルシェさんもどこに行ったか分かんないからどうしようもない。
近くに誰かいてくれたらいいんだけど、それが使用人じゃなくてトールの親戚の誰かだったら最悪だ。やっぱり部屋で大人しくしていよう。
「ん?」
大人しくしていようと決めて座り直してすぐにまた騒がしくなって来た。もしかしてクミンさんが戻って来たのだろうかと考えたが、それにしては騒がし過ぎる気もしなくもない。というか、声が複数人?
何か段々と近くなってるけどこれって大丈夫? どっかに隠れてた方がいい気がしてきた。どこに隠れようか。
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