27
あれからトールさんが起きて来たり、シルシェさんがノヴァを叩いたりと色々あって一緒に夕飯を食べている。何故?
「リュリュちゃんおいしい?」
「はい、おいしいです」
メニュー自体は船の食堂で食べてる物と同じなんだけど、一等客室で食べると気分が違うからかおいしく感じる。しかも、よく分からない人たちとはいえ、久しぶりに誰かと一緒にご飯を食べるから余計に。
あたしが最後に誰かと一緒にご飯食べたのって旅に出る前だっけ? だったら一年ちょいぶり? いや、商隊にいた時はどうだった?
「どうした? 便秘か?」
「お下品よ」
「いてっ何も殴んなくてもいいだろ」
思い出そうと唸ってたのが悪かった。それに気付いたノヴァが胸の大きな女性、クミンさんというそう。クミンさんからぽかりとやられていた。トールさんは男の子だそうだ。
トールさんはあたしと同い年で肩甲骨まである白い髪は男の子にしてはかなり長いけど願掛けの為に伸ばしているんだとか。瞳の色はやっぱり赤でした。
綺麗な色ねと言ったらかなりびっくりされて、色のことで周りから色々言われていたのだろうと察した。触れない方がよかった失敗した。
慌てて謝ったけど、絶対気分を害してるはずだと落ち込んでたらめちゃくちゃ慰めてくれた。めっちゃいい子。あと、おっとりしてて聞き上手で色んなことを話したけど、あたし余計なことまで言ってないわよね?
ノヴァがあたしをこの部屋に呼んだ理由はトールさんのことだ。
トールさんは見た目のことで色々あって小さい頃に親元を離れ別の大陸で暮らしていたそうなんだけど、ご両親が周りを説き伏せ、この度めでたくお国に戻れることになったそうだ。
それで、あたしが呼ばれた理由なんだけどトールさんの替え玉でもさせられるんじゃないかと疑ったけど違った。トールさんの友達役をやって欲しいそうだ。
何で? と思ったけどトールさんのご両親がトールさんのことをかなり心配していて友達は出来たかとことあるごとに手紙に書いていたそう。
だが、トールさんは病弱であんまり外に出ることがなかった為にこの三人以外とはあんまり関わることがなかったそうだ。シルシェさんは護衛、ノヴァは従者、クミンさんは侍女らしい。三人共小さい頃からトールさんと一緒にいたからトールさんは三人が親みたいだと後でこっそりと教えてくれた。
お金持ちそうだし、お金で同性の人を雇えばとも思わないでもなかったけど、行き先が光華国だったために詳しく話を聞くことにしたのだ。
まあ、この話を受けてもいいんじゃないかって思ってる。この面子結構面白いしトールさんは優しくていい子だし、お礼も結構もらえると言われて二つ返事で受けようとしたが、問題が一つある。
聖女だの勇者だの言ってくるヤバい連中から逃げ回っている身。大陸から離れた今は安全だけど、その平穏もいつまでもつかは分からない。
あと、どうして同性の人じゃなくてあたしだったのか知りたくて聞いてみたらノヴァが直感で決めたってさ。
一瞬断ろうと思ったけど、謝礼に払う金額を聞いて即効頷いた。
「やります!」
「これから俺らのことみっちり覚えてもらうからよろしくな」
「……お手柔らかにお願いするわ」
だってこのお金があれば一年ぐらいは余裕で暮らせそうなんだもん。断る理由なんてないでしょ。
ちゃんとトールさんのご両親にトールさんとのことを話せるようにしないといけないからと言われノヴァとトールさんの二人掛かりで色々教えてもらうことになった。もちろん息抜きと仲良くなるために船の中で遊んで共通の思い出を作ってもいいらしいので明日から早速船内の探検をしようと思う。
あたしのことも話さないといけないんだけど、秘密にしておかないといけないことが多すぎて何を言っていいのか分からない。トールさんとは最近友達になったって設定じゃダメなのかしら?
ダメだったら適当に考えた設定を話せばいいのだろうがうっかりボロが出ないとも限らない。嘘の中に真実を混ぜればかなり本当っぽくなるって聞いたことがあるけど、あたしの場合どこからどこまでに真実を混ぜるかよね。
異能と旅に出た理由は確実に伏せると何で旅に出たのか言えない。考えるのめんどくさくなって来ちゃったから勝手に設定作って欲しい。無理かな? 後で頼んでみようっと。
◇◇◇◇◇◇
「リュリュさんあっち!」
「トールさん、さん付けは友達なのに変ですよ」
「でもリュリュもさん付けに敬語まで使ってるから僕もつられて」
「あっ、うっかりしてたわ」
二人してあははうふふと笑っていると随分前からの友達みたい。
しばらくそうやって和やかに話しているとぐらりと体勢を崩した。
「え?」
「リュリュさん危ない!!」
何かにつまづいてしまったらしく空とトールさんの焦った声が聞こえて来る。ああ、これはどこかにぶつかるか滑って転ぶなと妙に冷静衝撃に備えてると唇の端にふにっとした柔らかい物が当たった。
「え?」
「あ、ごめんなさい!!」
何が当たったと思って振り返ればトールさんが真っ赤な顔して離れた。もしかして?
いや、うん事故チューみたいな感じだったけどさ、ギリギリ唇には当たってなかったと思う。うん。
多分トールさんは助けようとしてくれただけなんだきっと。
だからそんなに取り乱さないでと言いたいけどしばらくは何を言っても無駄そうだ。
「えっと……」
「えぅ、りゅの、ほぺ? 口に? あぁぁぁぁ」
トールさんはしばらく顔を赤くしたまま意味の分からないことを呟き続け、その後いくら話し掛けてもなかなか復活してくれず、戻って来ないと心配したシルシェさんに発見されるまでそのままだった。
シルシェさんにはどうしたんだと聞かれたが、これはあたしからは言いにくいとしか言えず、トールさんもあわあわしているからシルシェさんは何かあったみたいだとは分かったみたいだったか、何があったのかは当事者同士が口を噤んでいるので、何とも言えないような顔をしてトールさんを連れて行ってしまった。
というか、普通こういう状況になったら女の子の方が顔を真っ赤にして固まるんじゃないの? と思ったのは夜ベッドに入ってからで、あたしってば少女漫画向きじゃないのねとあくびを一つして寝た。
ブクマ、評価、いいねありがとうございます(。・x・)ゞ♪




