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皆さんこんにちは。船の上からご挨拶させていただきます。
あの後、かなりギリギリだったけれど何とか船に乗れました。ええ、本当にギリギリで出港直前だったわ。
船の綱を外していた船員さんに大声で呼び止めて乗る! と叫んで乗客や船員さん、それを見送っていた人たちに白い目をされながら何とか乗りました。その節は船員さん申し訳ありませんでした。
あたしが乗るところを見ていた乗客の皆さんにはギリギリちゃん(笑)とたまに呼ばれております。はい、恥ずかしいです。
それでええっと、あたしのこれからの話をしたいと思ってます。
これからあたしが行く大陸は空路朱という名前であたしがとりあえず目指すのは空路朱の光華国。勘の良い人なら名前で分かると思うけど、そうなんです! この国漢字があるんです。あの国っぽい国なんです!!
どの大陸に行こうかと悩んでた時、偶然耳にしたこの国の話を聞いてから絶対に行きたいって思ってた国なんですよ! もしかしたら日本っぽい国かもしんないって思ったらねぇ、絶対光華国に行くって決めた。
悲しきかな前世の記憶があるからか、時たま味噌汁飲みたいとか鰹節をタマゴがけご飯に乗っけて食べたいとか夢にまで出てくるのが地味にキツかった。
さすがに味噌も鰹節の作り方も全く知らなかったし、お米も見当たらなかったから泣く泣く諦めてたけど、それがもしかしたら食べられるかもしんないと思うとテンションマックスで即決でしょう!
もし日本っぽいだったらと涎が止まらない。まだ到着までに一ヶ月以上は掛かるらしいけど夢は広がるばかりで早く空路朱大陸に着かないかなとワクワクしっぱなしだ。
「わっ!」
「わりぃ!」
「いえ……」
これからのことを考えながら角を曲がろうとしていたら向こう側から来てた人にぶつかりそうになってびっくりした。
浅黒い肌に艶やかな黒髪、声からして男性なのだろうが、中性的な見た目のせいで男装の麗人に見えなくもない。
「あ、ちょうどいい。あんた暇? 暇だったら付き合ってくんねえ?」
「えっ、ちょっと!」
いきなり腕を引っ張られて歩き出されて更にびっくりした。
「俺、ノヴァっていうんだあたんたは?」
「リュリュよ。ノヴァさんどこに行くの?」
「ノヴァでいいよ。その代わり俺もリュリュって呼ぶから」
何だこの人強引過ぎないか? あたしの意見を言う間もなくあっという間に決めちゃって呆気にとられる。
「俺ってばこんな可愛い子に会えるなんてついてる」
「えっ」
可愛い子って言われてドキッとする。だって可愛いだなんて言われたのっていつぶり? 多分旅に出る前に行商のおじさんに言われたのが最後? じゃあ、一年以上誰にも可愛いって言われなかったってこと? それじゃあ、ドキドキとしても仕方ないわね。
「そ、それでどこに行くの?」
「お、着いたぞ。おーい! 今戻ったぞー!」
ってまた話し聞かないし。あたしの周りって話し聞かない人ばっかり?
いや、一部の人間だけだわ。こういった手合いと話しをするとどっと疲れてくるから嫌だ。いつぞやの勇者だとか。
つい、うっかり思い出したくもない人物を思い出してしまい顔をしかめているといつの間にか自分が一等客室にいることに気が付いた。
あたしが寝起きしている二等客室はベッドとタンスと申し訳程度のシャワールームがあるだけで、狭いのだけれど、一等客室は貴族も泊まることがあるからか広い。
リビングルームもあり、両サイドにはドアがあり、一つは寝室だろうと検討を付けたが、もう一つのドアは何だろうか? あれも寝室なのだろうか? それともお風呂場とかなんだろうか? 一等客室なんだからお風呂場もやっぱり広いんだろうな。羨ましい。
よく分からないドアに思いを馳せていると部屋の真ん中のソファに人が寝ていることに気付いた。
ノヴァが声を掛けているのに寝ていられるってかなり図太い神経をしているのねと思いながら寝ている人を見ればこの人も性別がよく分からない中性的な顔に格好もゆったりとした服を着ているから分かりづらい。
髪が白い。アルビノかな。瞳の色は赤なんだろうかと考えてるとノヴァがその眠っている人に近寄って行く。
「トール! 起きろってば!」
寝てる人はトールさん。トールさんをノヴァががくがくとゆさぶっているが中々起きそうにない。
あたしも起こすの手伝った方がいいの? でも、知らない人に起こされたらパニック起こしちゃわないかな? あたしだったらパニック起こす自信がある。
「ん?」
手伝うのべきかと迷ってると角の壁のところに黒髪の男性が壁に凭れ掛かって本を読んでいるのに気付いた。
えっと、あの人はあたしたちがこの部屋に入った時にはあそこで本を読んでいたのよね? 結構ノヴァがうるさくしてるけど我関せずにああやって本を読んでる姿に感心してしまう。
「ね、ねぇ、ノヴァ」
「ん? あ、リュリュごめん適当に座って」
「うん。そうなんだけど」
ノヴァに返事をしつつ黒髪の男性が本を読んでいる方を見ればノヴァもようやくそれに気付いたらしく「あーーー!」と叫んで本を読んでいる男性を指差した。
「シルシェ! いたんだったら教えろよ!!」
「……うるさい」
ページを捲りこちらを見ることもなくノヴァをしかる声にこの人は本当に男の人なんだとホッとする。というか、この二人が中性的なのが悪いんだ。
シルシェさんとやらは顔を上げずにしかめ面でノヴァをあしらってるけどかなり鬱陶しそうだ。
「あれ、ノヴァいつ戻って来てたの?」
ノヴァたちのやり取りを黙って見ていたら女性の声が聞こえて来た。トールさんが起きたのかと思ったけどトールさんはまだソファの上ですやすやと眠っている。
じゃあ、誰が? と視線をさ迷わせれば寝室のドアから上半身だけをこちらに出した女性がいたので声の主はこの人か。
この女性どこにでもいそうな平凡な顔をしているのだが、一つだけ特徴がある。胸だ。山のように聳え立つ胸に目が釘付けになってしまうのは仕方ない。
今まででこんなに胸の大きい人に出会ったことはない。というか、船にこんな目立つ胸があったのになんであたしは気付かなかったんだろうか。
「ノヴァこの女の子どうしたの?」
「無理やり連れて来たんじゃねえのか」
「なっ、ちげえし! ちゃんと説明したし! なっ」
「聞いてない。あたしなんでここに連れて来られたの?」
なって言われても聞いてないし、びっくりした顔しても知らないものは知らないんだもん。
「ほら」
「だめよ女の子には優しくしないと」
「えぇー」
ノヴァはあたしに裏切られたみたいな顔をしていたが、あたし悪くない。二人から責められ口をパクパクとさせて何も言えなくなってるところ悪いけど帰っていいかな? あたしこれからのこと考えるので忙しいんだから。
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