25 勇者の仲間モンスパル視点
私たちは今神殿に居ます。ここで今までの報告と魔族の動向について調べる為と疲れている皆への休息も兼ねて半ば無理やりでしたが寄らせていただきました。
カナリアと呼ばれる少女を連れて行くかは仲間内で揉めに揉めましたが、彼女の魔法の腕を見れば連れて行かないという選択肢はありませんでした。
神託にはなかったことですが、戦力が増えるのはよいことです。
「お、やっと来たか」
「お待たせしました」
「いんや、時間ぴったしだから待っちゃいねえよ」
そうですかと答えてから手近な椅子に座ってから目の前の初老の男セルゲンにため息が洩れそうになるのを我慢して彼の話を聞く。
「それで、これが報告があった魔族の話だ」
「もうこんなにあるのですね」
オレガノが見せてくれた書類は数十枚もありました。聖女様が行方不明の今、我々には少々気が重い量ですね。
「こんなにも魔族の目撃情報があるのに、怪我した方は少ないのですね」
「ああ」
書類を捲って内容を確認していると気になり、オレガノに聞いてみましたが、曖昧な相槌しか打たないので何か言いたいことがあるのかとそちらに顔を向けると思ったより深刻そうな顔をしていました。
「どうかしましたか?」
「……いや、それと聖女様捜索の方なんだが、難航している。正直お前たちが一番聖女様に近いんじゃないのか」
「そうでしょうね」
そもそも聖女様が役目を投げ出して行方をくらますだなんて前代未聞ですし、勇者様が役目は果たすが、誰とも打ち解けようとしないのもかなり問題があり、常に頭が痛い状況に頭痛薬が手放せなくなってしまいました。
「お前たちが手に入れた聖女様の情報は?」
「国を出た後変装なされたようですが」
その後は骨董品店の店主から仕入れた情報しかありませんと伝えると既にその辺りに人を向かわせたとのこと。さすがオレガノ仕事が速い。
オレガノは私が神殿に入った頃の教育係でしたが、私の他にも何人も教えていたのに、通常の仕事も神殿に来る方たちの悩みまで聞いてあげていてあまりの仕事量に感心したのですが、人としてはあまり尊敬したくはないので、尊敬しているかと聞かれてしまうと困ってしまいます。
「それからあの遺跡やっぱりだったわ。あと、骨董品の店主から預かった巻物は現在調査中だ。お前たちが言っていた宝玉についても他に似たような物がないか調べさせる。結果が分かり次第お前たちにも知らせるから定期的に近くの神殿に寄れるようにしておくように伝えとけ」
「分かりました」
地下にあったあの遺跡に気になるところがあったので、何か分かりるかとオレガノに頼んで調査を依頼したのですが思った以上に行動してくれているよいうで物凄く助かります。
「にしても今代の聖女様は凄いな。誰が教えたって訳でもないのに浄化の力を使いこなし、その上穢れた地だった場所をいくら豊穣の異能があるからってだけで豊かにするだなんて普通の能力者だと両方あったとしても何年も掛かるはずなのに……俺がそいつを育ててみたかったわ。といいか、あんな国に任せてたから逃げられたんじゃねえのか」
魔族の体からは常に障気が出ている為、魔族がいた痕跡があったあの遺跡は障気が多かった為に封印されていたんだと思います。そこに聖女様の力の片鱗がそこかしこに残されていたので今代の聖女様の力はかなり強いと推測出来るのですが──
「オレガノ、誰が聞いてるか分からないので迂闊なことを言わないでくださいよ」
「へいへい。でもよ、神殿で能力の使い方だとか教えてからようやく浄化の力を使えるのに、今代の聖女様は教えなくても問題なく使えるんだから異能様様ってか」
かかっと笑うオレガノに頭が痛くなって来ました。これさえなければもっと上の地位に行けるのに……。
この人が神官長にでもなってくれたら今の古くさいしきたりなんかを一掃してあっという間に神殿内を改革してくれるんじゃないかと期待する者も多くいるのに本人は出世なんて目もくれないのですから残念で仕方ありません。
オレガノのことは仕方ないですが、聖女様のことは諦められません。
今代の聖女様は十年近く前に異能が分かった時に聖女としての能力も認められた為、なんとしても神殿で教育をといった声が大きく、神殿の者が何度か行ったものの人拐いだのなんだのと騒がれて断念したと聞いています。
最初にそれを聞いた時に面白い子がいるもんだと思いましたが、逃げ出されてしまった時には現地の者たちは何をやってるんだと怒りを通り超して呆れてしまいました。こんなことなら有無を言わさずにお小さい頃に神殿に連れて来るべきだったんですよ。
そうしていればこんな面倒なことにはならなかったはずなのに……。
「それと勇者様の方はどうだ?」
「相変わらず聖女様のことしか考えてませんよ」
「それは重畳」
「こちらとしてはもっと主張してくれないと」
主張し過ぎるのもどうかと思いますが、全く主張しないのも困ったものです。アマンダとセルジオはよくも悪くも貴族です。彼らが国から裏切れと命じられたらあっという間にあの面子では崇高なる使命が果たせなくなってしまいます。
特にアマンダは勇者様に対してかなり反感めいた感情を持っているみたいなので気をつけねばなりませんのに。ああ、また頭が痛くなってきました。今度は水なしで飲める頭痛薬を探しておかなければ。
「そうかもしんねえが、そうだお前戻ってくるつもりはあるか?」
「……それはどういう意味ですか?」
「聖女様は浄化の力を使える。俺たち神官が教えられることはない。お前があいつらと一緒にいる意味はない」
「ですが……」
確かに私の役目は聖女様に力の使い方を教え、聖女様が旅の間に不自由なく過ごし、旅が終わればその身を神殿に移してもらいその力を世界の為に奮ってもらえるようにすること。聖女様がいない今このまま勇者一行にいても意味はありません。
「まあ、そこはゆっくり考えといてくれ。こっちはお前がいつ戻ってもいいようにしておくから」
「考えておきます」
「失礼します! 大変です! 西の港が消えたそうです! 今すぐ確認のために勇者一行は現地に赴いてください!!」
バタバタと慌ただしい足音と共に入ってきた神官の話しにどういうことだとオレガノと顔を見合せてから今しがた駆け込んできたこの神官に詳しく話を聞くために席を立った。
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