23骨董品店のオーナー視点 2
俺があの遺跡、ここから半日程歩いたところに入口がある。その入口から更に二日程掛けて坂を下って行くとようやくたどり着く場所に地下遺跡がある。そんな場所に行こうと思ったのは若気の至りだったと思う。
洞窟があったのは近隣の町の人間も滅多にはいらない深い森の奥。あんなところ迷子にでもならなきゃ到底行こうとも思わない。俺? 俺は小さい頃、家族と森に遊びに来て一人だけ散々迷ったあげくにたどり着いたんだ。
そん時は洞窟の入口までしか行かなかったけど、かなり迷ってめちゃくちゃ怒られたよ。まあ、その話は置いといて……えっと、どこまで話したっけ? 何で再びそこに行こうとしたって? そりゃあれだよ。実は俺こんな感じでぐうたらと趣味の骨董店をやってるんだけど、元はいいとこの家の坊っちゃんで親は中央で働いて俺にも跡を継げって言われて反発して家出したんだ。
あの森に行ったのは偶然だったけど、森を歩いてる内に小さい頃見つけた洞窟を思い出して行ってみたって訳。
それで、まあ、あそこでしばらく暮らしてみようかって思ってみたの。ちょうど夏で寒くないし、ちょっと行ったところに川とかあったからそこで魚捕まえたりして生活してたの。
洞窟の奥に行ったのはそこに住み始めて多分一ヶ月ぐらい経った頃? 何となく奥ってどうなってんだろ? って思ったの。ほら、今はいないかもだけど熊とかの冬眠する時の塒だったら怖いじゃん。もしもの時も考えて行動した方がいいやって思って中に入ったんだけど、深いのなんのって、途中からどんだけ深いのか気になって気になって頑張って潜ったらさ、丸二日程歩き通したね。途中で引き返そうかって思っても何故か奥に奥にって進んでんだからあの道にも不思議な力でもあるのかね。
そうしてようやくたどり着くって時に壁がいきなり出てきてびっくりしたんだよ。そう、壁だよ壁。
不思議な紋様が浮かんだ壁で真ん中に丸い窪みがあってどうやったら向こう側にたどり着けるのか分かんなくて帰ろうかとしたらさ、頭ん中に声がするんだ。びっくりしたね。
何て言ってたかって? そりゃ“ここを開けたくば証を見せろ”だってさ。証ったってそんなの知る訳ないじゃん。でも、何でか知んないけどここでも気になって仕方なくなって近くの町に行って調べてみたけど何も分からなくて大きな町にまで行って調べたんだ。
え? どうしてそこまでって? 分からん。だけど、その時はどうしても行きたくて仕方なかったんだよ。
んで、あそこの開け方を散々調べまくって何年掛かったかな? そうだな……多分、四年か五年ぐらい掛かってたような……我ながらかなりの執念だったな。今思えば何であそこまで執着してたのか……呼ばれてたのかねぇカナリアに。
それで、あそこの鍵を……え? どうしてカナリアが呼んでたかって? それは知らん。本人に聞いてもいいが多分覚えてないと思うぜ。何しろ小さかったし、俺たちと意志疎通出来るようになったのってあいつが7つかそこらん時だったし、それまで言葉とか分かってない様子だったな。
話し戻していいか? 俺があそこの封印を解いて中に入れば古代都市って感じの建物が沢山並んで建っていた。その奥の一番大きな建物の中で生まれたばかりのカナリアを見つけたんだ。
ああ、探したかったがそんな時間はなかった。
再び遺跡が閉じ始めたんだ。そりゃもう俺は慌てたね。カナリアの親を探さなきゃなんねえし、中だってもっと探検したかったのにあっという間に閉じ込められようとすんだもん。あんなところで閉じ込められたら助けてくれる人なんか絶対にいないだろうからこっちだって必死だったさ。
んで、再び遺跡が封印されてもう一回中に入ろうとしたのに鍵がどっか行っちゃって、え? どんな鍵だったかって? そうだな……青いこんくらいの小さな球で、やたらとキラキラした綺麗な球だったよ。あの鍵を壁の窪みに入れたらスッと中に入れたんだ。
手に入れた場所? これも内緒にしといてくれるとありがたいんだが……実はこの近くに綺麗な泉があったんだ。俺が今住んでる町もその泉から水を引っ張って来てたんだけど、その、何て言うか、そこにあったの。
……ああ、そうだよ! 俺が悪いんだよ!! 泉に手突っ込んだらあの球があって綺麗だなって泉から引き出したら、泉があっという間に枯れちまったんだよ!! いや、そりゃな慌てて戻そうとしたけど、そんなことじゃ枯れた泉が元に戻る訳がなかったし、町の連中があっという間に来るから出るに出られなくて逃げるしかなくなって、洞窟まで逃げてる内にこれあの壁の窪みにぴったりだと思って、泉に戻って説明したとしても俺がやったことには変わらないから下手したら袋叩きにされっておかしくはないだろ?
だから、ほんの出来心のつもりで壁の窪みに嵌めてみたらぴたりと嵌まって壁が消えたっていうか、うん、開いたっていうか、ね。
まあ、確かに罪滅ぼしのつもりもあったけどさ、カナリアを育てるのが一番の目的でもあったんだぜ、あの町に住むの。俺は実家に頼れないし。
やだよ。頼った瞬間カナリアと離ればなれにされて、実家に強制送還、んで、逃げられないように結婚までさせられるに決まってるから絶対に戻りたくないの!!
……失礼、ちょっと熱くなっちまった。
え? 案内? いや、行って来たばっかだけど、行っても意味ないと思うぜ。何でって言われてもすっごい草とか木とか生えてて入るの大へ……ってなんだよあんた! いきなり掴んでくんな!!
行きたきゃ勝手に行きゃいいだろ!! 大事なこと? いや、洞窟まで案内してやるからそれで……え? うちに来た旅人の顔? いや、俺は見てない。カナリアが見てるはずだが……。
何なのあの人? へぇ探してる人がいるんだ。そりゃ大変だな。でも、あの遺跡と何の関係があるんだ? へぇ、豊穣の………………えっ、それ聞いていいやつ? いや、待って俺ただの一般人だから! ちょっ、本当無理だって!
いや、確かに聞いたよ! 聞いたけどさ、まさかそんな国家規模というか、世界規模の話をこんな奴にするとは思わないじゃん! いや、確かに勇者とか言ってたのは聞いたけど……あの、これって俺誰かに言ったら消されたりします?
いや、だってねぇ……や、信じてなかった訳じゃないんですよ。ただ、えぇ、規模が大き過ぎて理解が追いつかねえっていうか、本当に平気?
……平気なんだな? じゃ、じゃあ、もう行っていいか? ほら、店ほっぽって来たからそろそろ店が心配に……へ? 遺跡? いや、ほら、でも、聖女様探しの方が遺跡なんかより大事なんじゃないの?
遺跡は義務ってあんたら思ってたよりお堅いね。えっ、あっちの人神官!? やべっ、そりゃ堅くて当然か……じゃあ、あんたはどっかの国の王子サマとか? あ、一般人!? 何だよ、心配して損したじゃねえか。それならそうと言っといてくれよな。
んで、何の話してたっけ? 遺跡に案内ね。入口までじゃダメ? えーっ、あそこ本当に遠いからこの年になると結構大変なんだよね。あんたらは若いから分かんないと思うけどこの年になると疲れって中々取れなくなるんだよ。
やだよ。俺この間行って来たし、ほら、入口までは案内するから、ね。
本当に疲れるんだって……あ、じゃあさ、カナリア! カナリアが一緒に行くってどう? それなら俺待ってるからさ。
あ、大丈夫! カナリアも連れてったばっかだから道分かるし、俺なんかよりかなり若いから筋肉痛とか平気だと思うよ!
ね、お願い! 俺、もうくたくたで帰って寝たいのよ! えっ、マジで?! いいの? やった! いやあ、お兄さん太っ腹だね。じゃ、カナリアに説明してくるわ!
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