表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/431

22勇者の仲間 セルジオ視点

「おい」

「……」


 またか。返事をしない勇者にため息が洩れそうになるが我慢する。


 国境で聖女様らしき人を目撃したという人を見つけたとアマンダから情報がもたらされた時は確かに顔色が変わったのに、それ以降は黙りを決め込んでいる。


 その姿にアマンダがイライラした様子で睨み付けているし、アマンダに八つ当たりされたくないとクロッチェがどこかへと度々逃げ出している。唯一変わりがないのが神官のモンスパルだけだが彼は彼で何かしらの思惑があるようで自分からは仲間に関わろうとしない。


 まあ、モンスパルは元々神殿にいたから俺らとは違って当たり前なんだろうが、どうにも胡散臭くていけない。


 仲間たちがこんなにバラバラでやっていかなければならないなんて王命でもなかったらとっくの昔に抜けてたわ。


 こんなバラバラの奴らを纏めるはずの勇者は何も言わねえで聖女、聖女って狂ったように聖女様を求めてるけど、逃げ出した聖女様がそう簡単に見つかると思ってるのだろうか?


 勇者がこの面子を纏められないとなると身分的にはアマンダだが、アマンダはずっとイライラしっぱなしで不和の元凶でもある。到底この面子を纏められるとは思えないな。


 となると俺かモンスパルが纏めることになるが、モンスパルは関わるつもりがなさそうだし、俺? 俺は嫌だよ。何が悲しゅうてこんな奴らを纏めなくちゃなんねえんだよ。


 こんな奴らを纏めようと思ったら絶対胃に穴が開くに決まってる。


 全くなんでこんなことになっちまったんだかね。


 ため息が再び出そうになるのを押し殺し勇者を見てはこぼれそうになるため息を押し殺しを繰り返しということを気付けば毎日しているような気がする。


 なんだってこんなところにいなきゃなんねえんだ。騎士が必要って言うのなら他の騎士と変わってくれ。俺は今まで通り王都で警備の仕事させてくれりゃ文句は言わねえし、ついでに可愛い嫁さんまでくれりゃあ言うことなしってもんよ。


「お、誰かいるぞ」


 己の不幸を嘆いていたらクロッチェが目敏く気付く。


 クロッチェが指差す方を見れば確かに大小二つの人影があるがまだだいぶというか、点のような小さく見える距離なのによく気付いたもんだ。やっぱり狩人だけあって目がいいんだろうな。


「こっちに来るか?」

「わかんね。だけど、一人は女みたいだな」

「それは!」

「いや、違う。あれは黒髪だ。あの聖女とは違う」

「……」


 今まで黙っていた勇者がせっかく反応したのに違うのかよ! チクショウ期待させやがって!!


 ギリギリとクロッチェの後頭部を睨みつけるが睨まれているはずのクロッチェは「どうする?」とのんびりと聞いてくるのでもうちょっと空気読めと頭を叩きたくなった。


「何言ってますの。もちろんあの二人にも話を聞くに決まってますでしょ!」

「あー、はいはい。じゃあ、俺ちょっと呼び止めてくるわ」


 アマンダの不機嫌はすぐに分かるくせに何で俺たちの不機嫌は分からねえんだ? とそそくさと去って行くクロッチェの背中に呼び止めて小一時間ぐらい説教をしたくなったが、クロッチェはあっという間に小さくなってしまったので、俺たちも二人組のところへ歩いて行く。


「それにしても勇者が喋ったのっていつぶりですの?」

「僕が聞いた限りですと聖女様の村に立ち寄った時に喋ったのが最後ですがセルジオは?」

「俺もそんくらいかな? 国境で聖女様の手がかりらしきもの手に入れた時は喋んなかったのか?」

「いえ、何かしら言うかと思ったのですが……」


 悔しそうに言うアマンダに勇者がどうしたら反応するのか試してみたくなる。くすぐってみるか? それとも寝てる時に聖女様が来たと言ってみたら……いや、それは後が大変になりそうだな。


「この人たち近くの町の人らしいよ」


 のんびり歩いていたつもりだったのにいつの間にかクロッチェたちのところにたどり着いていた。


「この近くに町があるんですの?」


 近いのなら今すぐにでも休みに行きたいとアマンダが言えば二人組の大人の方がいいやと首を横に振った。


「近くって言ってもここからなら二、三日は掛かるけどな」

「あら、そうなんですの……」

「そんなに遠いのなら何で歩きで?」

「えっとね、ナーダさんと一緒にあっちの遺跡に行って来たの」

「あ、こら」

「遺跡?」


 ナーダさんと呼ばれた男が慌てて少女の口を閉ざすが聞こえて来た言葉にはて? と訝しんだ。


 国内にある遺跡は見つけ次第国に報告する決まりがある。だが、この辺りに遺跡があるなんて報告は聞いた覚えがない。それとも新たな遺跡が見つかったのだろうか?


「い、いや、何でもないんだ」

「ですが、その子は遺跡と言いましたわよ」

「そうだな。俺も聞いた」

「ええっと、あ、町に行きたいって言ってましたよね。俺らも戻るところだったんで一緒に行きませんか?」

「ねえ、あなた今遺跡と言いましたわよね」


 あからさまに話題を反らそうとするが、アマンダが少女の方に尋ねてくれた。


「えっと、」


 少女は一緒にいる男の方をちらりと振り返り言ってもいいものかとナーダの反応を窺っているが、アマンダがにこやかに少女とナーダの間に入って邪魔をした。


「あなたも知っていると思いますが、新しい遺跡を見つけたのならば国に報告しなければいけませんの」

「えっ、でも……」

「カナリアちょっと黙って」


 少女の名前はカナリアというのか。黙るように言われたカナリアは俺たちとナーダを交互に見た後に黙った。


「確かに遺跡はありますが、ですが、それがどこにあるとかは言えません。カナリア行くぞ」

「お待ちください」


 遺跡には旧世代の遺物が盗賊に荒らされたりするぐらいならまだ可愛い物だが、魔族が従える凶悪な魔物の根城にでもなっていたら近隣の町や村に甚大な被害が出る。


 だから、国に報告するのはどこの国でも当たり前のはずなのに、新しい遺跡の場所を知っているはずの二人はどうして口を噤むんだ?


「あんたたちが遺跡を報告したいのは分かるけど、こっちにも事情があるんだ! もう行かせてくれ」

「待ってくれ、その事情を話してくれなければここを行かせられない」


 ナーダの腕を掴んで止めればもの凄く嫌そうな顔をする。


「そうそう。今あんたを掴んでるのは騎士サマだぜ。言うこと聞いておいた方が身のためだ」


 クロッチェ、俺はこの国の騎士ではないんだがと胡乱げな目を向ければ黙って見てろと睨まれた。


「それにあっちの暑苦しい格好をしてるのは勇者サマで、あそこのいかにも金持ってそうな女はうちの国でも屈指の攻撃力を誇る異能を持ってるんだぜ」

「ちょっとあたくしそんなに怖くないですわ! 言い方を考えてくださいまし!!」

「いや、でもなぁ……」


 その返しに笑いそうになるが、笑ったらアマンダが怖いので黙って聞いておこう。


「勇者?」

「そうだ。勇者、証拠に勇者の剣でも見せてやれよ」

「……いや、いい」

「?」


 どうやら観念してくれたようだ。ナーダはカナリアの頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。


「言うけど今から言うことは誰にも言わないでくれ。それからカナリアはあっちにいろ」

「何で?」

「なら、あたくしが一緒に居ますわ」


 後で説明をとだけ言ってアマンダはカナリアをあっという間に連れて行った。こういう時の女性は行動がはやくて助かる。


「今からする話は誰にもしないでもらえないか?」

「理由は?」

「あの子に関することでもあるからだ」


 ナーダの視線の先にはカナリア。 


「内容にもよるな」


 あの子と遺跡の場所と何の関係があるのかは分からないが、ナーダのすがるような目に確約は出来ないと伝えればあからさまにがっかりされた。


「そりゃそうだよな。だけど、あの子の生まれた場所でもあるんだ」

「は?」


 遺跡で生まれた?


「最近まで封印されてた場所なんだが、俺の店に来た客があの遺跡に入ったって聞いていてもたってもいられなくなってここまで来たんだ……」

「ちょ、ちょっと待て!」


 遺跡で生まれたのならあの子は生まれたばかりなのか? いや、でも、どう見てももっと上に見えるし、封印してあった場所ならば何か強大な魔物でもいた場所か? そこに入ったという旅人にも話を……というか、情報が多すぎてついてけん。


 まだ話足りなそうなナーダに待ったを掛けて一つ一つ聞いていく。


「遺跡で生まれたというが、彼女はどう見ても12、3歳ぐらいにしか見えないが?」

「あれでも15だ。15年前に俺があの遺跡に入った時見つけたんだ」

「詳しく頼む」

「ああ、つってもあんまり話すことはないけどな」


ブクマ、評価、いいねありがとうございます(。・x・)ゞ♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ