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「おぉー! 海だー!!」
カナリアさんの店のある町を出てからひたすら歩き続けてようやく港のある町にたどり着いた。
今世で初めて見る海はおっきくて青くて太陽に照らされた水面が光って綺麗だ。
今回も散々迷ったけど、無事に目的地にたどり着けたんだからいいや。あたしってもしかしなくてもかなりの方向音痴? いや、でも、村では迷ったことないから慣れないところで道が分かんなくなっちゃうことってあるし、仕方ないよね。うん。
今日の出港はもう終わったらしいから宿を取って町を観光することにした。
あたしが行きたい大陸の出港は来週になるらしく、それまでここを観光するしかない。
そういえば旅をしてたけどらあんまり周りの景色を楽しむとかはしてなかったから船に乗ったらしようかな。まあ、船の上ってすること少なそうだし。
この国っていうかこの大陸とはもうすぐおさらば出来るかと思うと感慨深い。
住んでた村でのんきに時たま来る役人をからかって遊んでたら、イケメンがやって来て村人たちを虜にして無理ゲーに着いてこいと言われて、逃げ出して熊に追われて……あれ、何だか無性にイライラしてきたわ。特にラノスが来た辺りから!
もう一回会ったらぶんなぐりた……いや、やっぱりいいや。もう二度と会うこともないと信じたいんだもの。
次会ったら今度は縄付けてでも連れてかれそうな気がするし、ああいう押しの強いのに関わるとロクなことにならない気がする。ほら、押しの強いセールスマンとか宗教の勧誘とかあんな感じの。絶対に関わりたくない感じの。
宿の人にこの町の見所も聞いて来たから観光でもして嫌なことは忘れよう。
さてどこから行こうかな。海の幸をふんだんに使った海鮮料理のお店にしようかな。ああ、でも他の大陸の珍しい物を扱っているお店でもいいかもしれない。
どっちから先に行こうか? 時計台を見るとお昼にはまだ時間があるけど、お昼時は絶対混むって言ってたから先にお昼にしましょ。
「ん? 何だあれ?」
鼻歌でも歌い出しそうな気分でるんたるんたとスキップしていると何やら見慣れない光景が。
見たところ大きめな下水道の入口で柵で入れないようにしてあるのは普通なんだけど、それの前に大きな看板があってそれにデカデカと文字が書いてある。
「えっと、何々『この地下道の奥深くに眠る至宝を手に入れた者にはどんな夢をも叶えられる』何これ宝探しゲーム?」
そうじゃなかったら勇者のイベントのようだと笑いながらその場を離れた。
勇者のイベントなら近付かないに限る。違うならちょっとだけ暇潰しにやりたいなと思いながら海鮮料理のお店に入るとそこそこ混んでいたのでもうちょっと早く出ればよかったと後悔した。
お店の人にオススメの料理を出してもらって快くまで料理に舌鼓を打っているとさっきの看板について話している人がいたのでこっそりと聞き耳をたてる。
「あの近くにあった看板って昔からあるのかい?」
「へ? ああ、あんた船に乗りに来たのかい?」
「ああ、だけど出港まで暇だったから町を観光してたら変な看板があってね」
「あれね、確かに昔からあるけど、使われなくなったところを塞いであるんだけど、もうあんなとこ子供の度胸試しでしか使われてないよな」
「そうなのかい?」
「ああ、小さい頃友達と何度か潜ったことあったけどなーんもなかったもん。ただまっすぐな道が港に続いてるだけ」
「そうそう。潜るだけ時間の無駄だよ」
「ふーん」
何もないのか。でも、そういう度胸試しならいつかは風化してなくなるもんじゃないの? あのおじさん五十代ぐらいにしか見えないし。
あの看板結構綺麗だったわよね? 字もしっかりはっきりと見えてたし。
「誰かが定期的に直してるってことでしょ」
何の為にと考えるとやっぱりイベントぐらいだよねー。
気にはなったけど勇者イベントならあたしはパスした方が無難かな。ラノスたちが今どこにいるのかも情報が入って来ないからうっかり出くわす可能性もなくはない。
でも、曲がりなりにも勇者なら近くにいるなら噂になってるはず。それなのに一切の情報が入って来ないってことは近くにいないってことだよね?
じゃあ、あたしがあの地下道に入っても問題ないってことでちょっとだけ行ってみようかな。だって暇だし。
そうと決まればさっさと食べて行ってみましょっと。
「あ、何これおいしい! お兄さんお代わり! それとあのおじさんが食べてるエビのグラタンもお願いするわ!」
◇◇◇◇◇◇
「た、食べ過ぎた……」
あそこの料理思った以上においしくてつい追加注文を何度か繰り返していたらあっという間にいつも食べる量の二倍三倍と食が進んでしまい気付いた時にはお腹がパンパンに膨れるという失態を犯していた。
冬の間に痩せたはずなのにこんなんじゃあっという間に元の体型を通り越してデブになってしまう。
……運動しよう。うん。そうだよ。今から地下道歩いて運転すればある程度はカロリー消費出来るもん!! 頑張ろ。
食べ過ぎて苦しいけどさっき見かけた地下道への入口の前に立つ。
「ってあれ、この柵どうやって取るのよ」
鍵とか付いてないし、ましてや通り抜けられそうな隙間なんてもっとない。危険だから閉じられたとか? なら、一緒に看板も片付けられてると思うんだけど他にも入口があるとか?
しばらく考えてみたが全く分からない。考えてる間にちょっと時間が進んだからお腹もやっと苦しくなくなってきた。
「あれ?」
ここでうんうんと考えても分からないのでとりあえずと柵を引っ張って見るとかぽって音がしそうなぐらい簡単に取れた。
「えっ、何これいいの?」
しっかりはまってそうだと思ったのにこんなにあっさりと取れるだなんて予想外よ。
びっくりしつつ柵を脇に置いて中に入った。
中はひんやりしていたが、地底遺跡のように暗いっていう訳じゃなくて、地上の明かりも入って来ててわりかし明るい。これなら子供が度胸試しに使うっていうよりも秘密基地的な感じかな。
道はまっすぐに続いていて奥で二手に別れてる。これどっちに行くのが正解なんだろうか?
「どっちでもいっか」
どうせ来週までこの町にいるんだからそれまでには攻略出来ると思うし。
◇◇◇◇◇◇
「おっかしいなー」
全然攻略出来ない。
明日には出港だと言うのに今日も今日とて地下道の中で迷子になっています。
あたしが方向音痴だとしてもだ料理屋さんで聞いた話と全然違ってくる。全然まっすぐなんかじゃなくて曲がりくねってるし、地図作っても毎回道が違ってるみたいで長くいると出られなくなるんじゃないかって不安になるけど、次の日には攻略しなくちゃいけないような気がして気付いたらこうやって潜りに来てる。
頭の中では変だと分かってるのに体の方が攻略したくてうずうずしてて変な気分。
これは攻略出来たら解放されるのか心配になってくる。というか明日には出港なのに気付いたら明日もここに来てるんじゃないかって心配になってきた。
「でも、夜には出れるのよねー」
不思議なことに夕日が差し込む頃になると出口付近にいてさくっと出られるのだ。だからここで子供が行方不明になったと噂になって入口を潰されるったてことがないんだと思うけど。
子供と言えばもう一つ不思議なことがある。
一週間ずっとここに入り浸っているにも関わらず誰にも会わないのだ。
ここって子供の度胸試しの場所なんじゃないの? それなのに誰も入って来ないのはおかしい。
さすがに三日目には気になって自由に動ける夜はここの情報を集め出したんだけど、誰に聞いても最初に噂してたおじさん以上の認識は持ち合わせていなかった。
「聞けたとしてもここの中うろうろするしか出来ないんじゃ聞いた意味ないかもだけど」
でも、何かヒントぐらいと思ってたのに全く出てこないのもねえ。
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