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「上手くいったかしら?」
地面に付けていた手を離してから遺跡の方に目を向ける。
遺跡はあたしの異能によって草や木が生い茂っていて見通しが悪い。
これじゃあ上手くいったか分からないじゃないの。中に入って調べないといけないけど、魔族の生き残りがいたら大変だ。
頼りないけどナイフをぎゅっと握り、頭には鍋を被ってゆっくりとジャングルになってしまった遺跡の中に入ってく。
「枯らせられたら便利だったんだけどな」
植物を育てるだけの能力だから仕方ないといえば仕方ないんだけどね。
「でも、持ってて良かったわ」
生命力の強い植物の種を旅の間に集めて遺跡の中にバラ撒いて異能を使って急成長させて植物に魔族を狙わせたのだ。旅立つ時に持ったのは食べる用の種。
昔、役人が珍しい種だとか果物とか持って来てくれた時期があったのよ。美味しかった果物の種は取っておいていつか食べようと思ってたのよね。旅してる時に食べたり、これも売ると珍しい果物だからと割りと高値で買ってってくれることもあってあの時の役人本当いい人だったわ。
遺跡内は異能を使っている間は騒がしかったのに今はしんと静まり返っている。
静かだから多分成功したとは思うけど、どっかに隠れてる可能性もあるから油断は出来ない。
そろりそろりと足音を立てないように気をつけたかったけど、草をかき分けるのでどうしても音が鳴ってしまうので、隠れて移動するのは諦めて普通に歩く。
そうやってがさごそ音を立てながら進んで行くが、見通し悪いし、草が邪魔で全然進んでかない! あっちこっちで花が咲き乱れて綺麗だし、果物まで鈴なりだからお腹が空いても安心かもしれないけど、今あたしが知りたいのは無事魔族が倒せたかどうかであって、目の保養や空腹を満たしたいんじゃないんだ!
「ほんと邪魔ね」
昔、成長させ続けたら枯れるのかなって興味本意でやってみたことがあったけどどこまでも伸び続けて雲の中まで行っちゃったから怖くなって途中でやめちゃったのよね。
あれやめなかったらどうなってたかしら?
「うぎゃ!」
あのあと斬り倒してもらって、その冬の薪代かなり浮いたんだっけ? もうやんないけど、かなり村の人たちびっくりしてたなー。と懐かしいことを思い出しながら歩いていてふと手をついた木を何気なく見上げてびっくりした。
「な、」
木に埋もれ、いや、取り込まれてるというか同化してる? 辺りを見回せば木の幹から顔だけ出してるとかお腹の真ん中から木が生えて死んでる魔族がそこかしこに──
「ひっ!」
足元には魔族の手だけが落ちててもう少しで踏みそうに──
「あ、あたしがしたのよねこれ」
自分でやったことけど思ったよりグロテスクで気持ち悪い。
「ってびびってる場合じゃなかった」
浄化よ浄化! すっかり忘れて逃げ出しそうになったけど、あたしの目的は新しい力を試すことよ!!
「どうすればいいのかしら」
へっぴり腰になりながらもその場に立って何か変わったことはないか自分の体を調べてみるが、服に葉っぱと枯れ草が付いてるぐらいで何も変わってない。
「何か言うの? それとも動き?」
魔法少女みたいに恥ずかしい動きでもしたら浄化出来んの? あたしが恥ずかしいだけなんじゃないの? 言うの? 言っちゃっていいの? てか、あたし呪文とか知らないんだけどなんか言えばいいの? 誰か教えてくれる人とかいないの? 神官はどこにいるの?!
とりあえずいつもと同じように異能を使う感じで集中してみるが何か違うような。なんだろ?
上手くは言えないけど、これって練習が必要? え、この死体の中で?
「ちょっと嫌かも」
ちょっとっていうかかなり嫌だ。
いや、でも、もうちょっともうちょっとだけ……死体が見えない場所でやれば平気よね?
◇◇◇◇◇◇
「で、出来たわ……」
あたしやれば出来る子!!
あれからどれくらい時間が経ったのか分からないけどついに浄化の能力を使うことが出来た。
初めて使った異能はとても綺麗でいつまでも見ていたくなったけど、あっという間に消えてしまった。後には魔族の死体が綺麗さっぱりなくなっていたから成功したと分かった。
浄化の光は光の粒子が飛び交い、蛍の大群が飛んでるみたいで少し懐かしいような幻想的な光景だった。
だが、しかし、浄化をしたらかなり疲れてしまった。慣れの問題かしら? でも、豊穣の異能を初めて使った時は疲れなかったと思うけど、どうだったかしら? 小さい頃だったから覚えてないだけ?
「ちょっと休憩」
休憩が終わったらどうしよう。上はまだ吹雪いてるのかしら? 吹雪じゃなかったとしても寒いだろうからもうしばらくはここにいた方がいいかもしれないわね。
「探検でもしてみようかな」
最初に入った時はそのつもりだったんだしそれがいいわ。
「でも休憩は別のところでしましょ」
浄化したとはいえ魔族の死体が転がっていたところで休むのは落ち着かない。
この辺り以外雑草がそんなに蔓延ってないといいなと願いながら歩いて行くと比較的無事そうな部屋を発見したので中に入る。
中は雑草がなくてホッとしたがゆっくり休められそうな感じではなくガラクタらしきものがそこかしこに散乱していて足の踏み場もない。
仕方ないからこの部屋は諦めて他を探すがどこも似たり寄ったりで中々休める場所もなく、疲れた体をこれ以上引きずって歩くのがしんどくなってきた。
魔族にあんまり近付き過ぎるのもあれかなって建物の上からとかいろんな場所に種ばらまかなきゃよかった。
「あ、そうだ」
後悔していたところでふと一ヵ所だけ種を蒔かなかったところを思い出したのでそこに行ってみると思ってた通り雑草は生い茂ってなかった。
そこは細い路地の奥の奥、魔族の体格じゃ入れないような狭さの道を辿ってようやくたどり着けるような場所に小さな池を見つけた時は歓声を上げそうになった。
こんな場所にある水は古くなって腐ってるんじゃないかと恐々と覗いてみたが、どこかに繋がってるのか綺麗な水を湛えていたのでそこで休むことにした。
「う~」
飲めるかちょっと不安だったけど思いきって口に入れてみたら普通に飲めそうだったから飲んだ。
その後持ってた水筒に水を入れて足を浸ければ疲れた体に冷たい水が染み渡っていく。あんまりやると冷えちゃうけど、足痛いからちょっとぐらいいいよねって軽い気持ちでやってみたけど、やって正解だったわ。気持ちよすぎて動きたくなくなってく。
地上は吹雪だったけどここの水は心地よくていつまでも浸かっていたくなる。
「温水なのかしら?」
だとしたら近くに温泉があるかもしれない。探してみる?
ちょっと考えたけど止めた。あたしじゃまた迷子になる可能性がある。それなのに吹雪の中迷ったら凍死しちゃうじゃない。そんな終わり嫌過ぎる。あたしは80まで生きるつもりなんだから!
「ん?」
ぬるい水を堪能していると足に何か当たった。木の枝でも落ちているのかしら? と邪魔になるならと足でどけようとするがツルツルしている。あら、丸いみたい。
「石? にしてはツルツルしてるのが気になるわね」
これで足裏マッサージしたら気持ちいいかもしれない。持って行こうかと池に手を突っ込んで持ち上げれば手にちょうどいい大きさの球体。
「何これ綺麗」
全体的に薄い赤色をしてるけど一番変わっているのは球の中をキラキラとした光が舞ってること。
こんな感じの置物前世にあったようなと思って振ってみたが、光の動きは一定で振ると雪が降るあの置物とは違うみたいだ。
「でも綺麗ね。売ったら高く売れるかしら?」
こんなところでこんなお宝に出会えるだなんてとってもラッキーだわ。
他にも何かお宝が見つかるかもしれない。こうしちゃいられないと濡れた足を拭いてお宝を探しに行こうとしたが、ふと池を見れば濁ってる?
「あら? こんな色だったかしら?」
水筒に入れた水を確認してみたけれどこちらは綺麗なままだ。
「不思議なこともあるものね」
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