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森を出ることが出来たらかなりはどこか安全な場所に匿った方がいいのでは? と誰かが言い出し、反対する者は居なかった。
モンスパルがそれに手を上げ、カナリアのことを気に入っていたアマンダも名乗りを上げた。
というか、勇者たちは全員が行くことになっていた。
あたし? あたしは行かない。またあんなことになったらあれなのでトールたちとお留守番になるんだそうだ。
それで肝心の魔王の力の欠片と森の方なんだけど散々森の中を迷っていたのにいきなりそれは現れた。
本当に偶然だったんだけど、あの時は誰が見つけたんだったかな? モンスパルだったかクロッチェだったかが声を上げた。
「あそこに何かあります!」
その言葉に皆で一斉に視線を向けると枯れ草の隙間から確かに淡い光が漏れている。
その時は別に何があるんだろ? って思ってた。
だってあんなところに落ちているとか思わないじゃん。光り苔とか異世界なんだから光るキノコとか光る花とかあるんじゃないかって思うじゃない!
そしたらそれが魔王の力の欠片だって思う訳ないじゃない。
見つけたそれがカナリアの中に戻る前にと勇者が手を伸ばして何故かあたしに押し付けてきた時は思わず「は?」って言っちゃった。
「浄化を」
「は?」
いや、何で? あたし持ってた時なんともなかったよ? と思わず拒否しかけたがカナリアの姿が目に入ったので慌てて浄化の力を使ってみる。
「キャー!」
「えっ」
いきなりカナリアが叫び出してびっくりして浄化するのをやめたらカナリアは荒い息を吐いて座り込んでしまった。
「だ、大丈夫ですの?」
「ハァハァ……は、はい」
どうすんのよこれ。とりあえずクマに入れてた時は動かなかったし、入れておけば平気よね?
青い顔して座り込んでいるカナリアを見ていたらもう一回って気になれなくてそそくさと仕舞い込んだ。
成り行き的にあたしが持つことになってしまったけどカナリアの中に入ってくよりはマシよね?
「ええっと、これで森から出られるのよね?」
「……そのはずですわよね。どうなんですの?」
「出られるよー」
「長老に会ってく?」
「いや、いい。行くべきところがあるから」
「そっかー」
残念がる妖精たちに森の出口を教えてもらった。守っていたはずの魔王の力の欠片が行方不明になってた間は無理だったが何でも妖精族は長年に渡り森に結界を張り続けていたお陰で通常ならば外との境界線は分かるらしい。
今まで散々迷わされていたのはと怒りのあまりミックーたちを握り潰したくなっていたらそんな説明をされてしまったのに握れなくなってしまった。
「森で迷ってた仲間たちもこれで戻れるよ。ありがと!」
一匹だけじゃなかったんだと思いながらバイバイしてるとアマンダが魔法陣を使うからと言い出した。
「あたくしたちはカナリアを連れて行きますのであなた方は近くの村で大人しくしていてくださいまし」
「あ、うん」
そうだ。カナリアのことで一回勇者たちと離れられるんだった。
妖精たちが可愛くてすっかり忘れるところだった。
テンション高く見送ってしまいそうだったから素っ気ない返事をしてトールたちにさっさと行こうと提案する。
「じゃあ、僕たちは宿に居るから」
「分かった。リュリュ様のことを頼んだ」
何であんたがあたしのことをトールに任せるんだと突っかかりそうになったけどここであたしが噛みついても勇者が居る時間が伸びるだけだしと大人しくすることにした。
「リュリュ様」
「な、何よ」
勇者がじっとあたしのことを見つめてきた。
忘れていたけど、そういえばこいつに告白されたんだった。
「俺たちが戻って来るまで俺のことを考えていてください」
「は」
何でって言う言葉はどっかに飛んで行った。
勇者があたしの短くなった髪を軽く摘まんだと思ったら段々と顔が近付いてきたので思いっきりひっぱたいた。
「っ?」
「触るな!」
キスなんかさせるか!
「アマンダさっさと勇者連れてって!」
目を白黒とさせて頬を抑えてる勇者から急いで逃げ出してアマンダに半ば命令するように叫んだ。
アマンダは呆れたような顔をしていたけど呆然としていた勇者を引きずって魔法陣を使って去って行った。
あたしは触られた髪を切るべきかと迷いつつトールやクミンさんに大丈夫だったかと心配されたのをいなすのに必死だった。
やっぱり勇者は嫌いだ。あたしがあいつを好きになることは絶対にない!




