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「そういえばカナリアの魔法とかって変わったとかあるのかしら?」
「え?」
そう呟いたのはいつだったか。
魔王の力の欠片がカナリアに入っちゃったって言うのならばパワーアップしていたっておかしくはないはずだけど、カナリアは多少ふらついているものの至って普通。
魔獣がいても勇者が率先して倒しちゃうからカナリアが魔法を使う姿は見えないので疑問に思っていたっていうのもある。
ほら、ゲームだとかだとアイテムゲットしてレベルアップとかしたりするし、魔王の力の欠片とかならかなり力がありそうじゃない。
そんなことをゲームうんぬんは言わずに伝えるとアマンダはカナリアのところに走って行った。
「あれは?」
「検証するんじゃないのか? ああ見えてあいつは国でもかなり優秀な魔法使いだからな」
「へぇ」
知らなかった。アマンダっていいところのお嬢様だとは思っていたけど、そういう面もあったのか。
だからあんなに偉そうなのか。
「じゃあ、騎士とモンスパルも偉いの?」
「騎士って……まあ、いいが。俺は一応城で働いていて聖女の嬢ちゃんの話は聞いていたぞ。やけに頑固な豊穣の異能の子で行く奴行く奴泣かされて帰ってくるって」
「あら、そうなの?」
あたし王都じゃかなり評判悪そうよね。まあ、十年以上拒否していたからそれもそうか。
「俺は王都で贅沢な暮らしをせずに金持ちの相手をせずに貧乏人や一般人の味方だって聞いてたけどこんなんだったからなぁ」
「こんなのってちょっと失礼じゃないの?!」
クロッチェの言い方にカチンときた。
「事実だろ」
「そうだな」
「リュリュ様はそのままで充分で」
「お前の意見は聞いてない」
何か勇者が話に入ってきて怖かったからそそくさと離れてアマンダとカナリアが魔法について何事か話し合っている。気になったけどあっちに行っても話分かんないし、多分まだ話し掛けたら駄目だろう。
またトールたちのところに行こうかと思ったけど、その時視界にモンスパルが入った。
「あ、そうだ」
浄化の力について聞いておきたかったのに色々あってうっかり忘れていた。
「モンスパル今いい?」
「聖女様構いませんよ」
「その聖女って言うのやめて欲しいけど、まあいいや。それよりもあたしあなたに聞きたいことがあったの」
「聞きたいことですか? 答えられる範囲なら答えますよ」
にこりと笑う姿に神官らしく穏やかそうな人だと思いながら浄化の力について尋ねた。
「浄化の力ってなんなの? あたしは浄化の力は昔からあったのに使えてなかったの? それとも魔王のせいで突然使えるようになったの?」
「ああ、それですか? この世界の神話はご存知ですか?」
「知らない」
村に居た頃は王都からきた連中から逃げ回ってたし、そんな話も聞かなかった。子供向けの絵本もあったりしたけど、神話とかは見てない。
そういった意味を込めて首を横に振った。
「では、そうですね──」
この世界は遥か昔ずっと神と魔族が戦い地上は疲弊しきっていたらしい。
神々と地上の人々は魔族に対抗するために新しい力を作ることにした。それはのちに聖女と勇者と呼ばれるようになる。
勇者は魔族を倒し聖女は魔族の血で穢れた地を浄化し綺麗に戻す力がある。
浄化し植物を育てる力は共存しているのかもしれないが、それはあたしたち人には分からないけれど豊穣の異能を持っている人は浄化の力が大なり小なり持っているために国が保護する必要があるとか。
何でそれあたしは知らないのかって聞いたらあたしが拒否したから録に説明も聞かずにいつも逃げ回っていたからとここでも耳に痛いことを言ってくる。
またその話になるのかとうんざりしそうになったけどモンスパルはそれ以上言わなかったのでホッとした。
「なので聖女様はうまれた時から異能と浄化の力を持たれていました」
「あたし以外の豊穣の異能持ちも浄化の力があるのならどうしてあたしが選ばれたの?」
「それは……」
「キャー!!!!!!!!!!!!」
「えっ何?!」
いきなりアマンダの悲鳴が聞こえてきてびっくりしてそっちを振り返るとカナリアが黒い炎を手にしていた。
「は?」
何あれ。
「カナリアそれを消すんだ!」
勇者が慌ててカナリアに向かっている。
「あ、あの、普通に炎の魔法を使っただけなんです……」
カナリアは慌てて炎を消しながら説明するがあれってもしかしなくても魔王の力の欠片のせいよね。
あたしたちにかなりの衝撃を与えたカナリアの黒い炎はあれ一回きりじゃなくその後も続いた。
そのためカナリアには魔法を使うのを禁止。アマンダは熱のせいでおかしくなってしまっただけだろうが、調べるのでしばらくはみたいなことを言っていてさっさと事実を伝えてあげた方がお互いのためになると思うんだけどそう思うのはあたしだけなんだろうか?
カナリアに浄化の力を使ったらどうなるんだろ? と疑問が頭をもたげたが、そんなことをしたらアマンダにしばかれるかもと自重した。
なんかカナリアのことばっかり考えていて森の調査全く進んでいないんじゃとあたしたちが気付いたのはだいぶ時間が過ぎてからだった。




